
高圧リアクトル(SR)とは何か?
高圧リアクトル(SR)は、高調波抑制や電源品質安定化を目的とした高圧受電設備用機器である。従来は必須設備ではなかったが、インバータ負荷の増加により、高調波対策として近年は義務化・推奨されるケースが増え、新設設備では標準的に採用されつつある。一方で、容量増加に伴い函体寸法や設置スペースが課題となるため、条件によっては低圧側にLCユニットを設置する方式も検討される。系統条件や設置環境を踏まえ、最適な高調波対策を選定することが重要である。
現在では必要となる高圧リアクトル(SR)とは何か
― 近年重要性が高まる電源品質対策機器 ―
高圧リアクトル(SR:Series Reactor)は、高圧受電設備において主にインバータ負荷やコンバータ負荷が接続される回路に直列に挿入されるリアクタンス機器である。主な役割は、高調波電流の抑制、突入電流の低減、短絡電流の抑制、電圧歪みの改善など、電源品質の安定化にある。
従来は高圧モータの直入起動や簡易的な負荷構成が主流であったため、SRは「特定用途向けの付加設備」という位置付けであり、必須機器ではなかった。しかし近年では、インバータ駆動の大型モータや高効率化を目的とした電力変換装置の増加に伴い、高圧系統に流入する高調波電流が問題視されるようになっている。この流れの中で、高圧リアクトルは単なるオプション機器ではなく、設備の信頼性を左右する重要機器として再評価されている。
昔は不要だった設備が、なぜ今求められるのか
かつての工場設備やビル設備では、負荷の多くが誘導電動機や抵抗負荷で構成されており、系統に与える高調波の影響は限定的であった。そのため、高圧受電設備では変圧器・遮断器・保護継電器があれば十分とされ、リアクトルは特定用途を除き設置されないケースが大半であった。
しかし現在では、省エネルギー化・制御性向上を目的としてインバータの導入が急速に進み、高圧側においてもPWMインバータや大容量コンバータが一般化している。これにより、
高調波電流による変圧器の過熱
電圧歪みの増大
保護機器の誤動作
他設備への悪影響
といった問題が顕在化してきた。
このような背景から、電力会社の系統連系要件や各種ガイドラインにおいて、高調波抑制対策が義務化または強く推奨されるケースが増えている。特に新設設備では、計画段階からSRの設置を前提とした設計が求められることが多く、「後付け対応」では済まされない状況になりつつある。
新設設備における高圧リアクトルの位置付け
近年の新設受電設備では、高圧リアクトルは以下のような目的で組み込まれる。
高調波抑制対策(IEEE519、JIS、電力会社指針への対応)
突入電流・短絡電流の抑制
インバータ・変圧器の長寿命化
系統安定化によるトラブル低減
これにより、SRは「トラブルが起きてから導入する対症療法」ではなく、初期投資としての予防保全設備という位置付けへと変化している。
一方で、設備設計者や施主にとって新たな課題となるのが「設置スペース」である。
設置スペースと函体寸法の問題
高圧リアクトルは、鉄心・巻線・絶縁構造を備えるため、容量が大きくなるほど函体寸法も大きくなる。例えば、以下は一例である。
6.6kV系、300kVAクラス
函体寸法:幅800mm × 奥行900mm × 高さ1,800mm 程度6.6kV系、600kVAクラス
函体寸法:幅1,200mm × 奥行1,200mm × 高さ2,000mm 程度
このように容量が増加すると、受電室内のレイアウトに大きな影響を及ぼす。特に既存建屋の制約が厳しい場合や、キュービクル内に収納するケースでは、SRの設置自体が困難になることも少なくない。
また、重量も数百kgから1トンを超える場合があり、床耐荷重や搬入経路の検討も必要となる。
容量・条件によっては低圧LCユニットへの置き換えも検討
こうしたスペースやコストの制約を背景に、すべての案件で高圧リアクトルを選択することが最適解とは限らないという点も重要である。
特に以下のような条件では、低圧側にLCユニット(低圧リアクトル+コンデンサ)を設置する方式が検討対象となる。
高圧側での設置スペースが確保できない
容量が比較的小さく、低圧側での対策が可能
既存設備の改修で高圧機器の追加が困難
例えば、500kWクラスのインバータ負荷に対して、高圧SRを設置すると大規模な函体が必要となるが、低圧側でLCフィルタを構成すれば、分割設置や盤組み込みが可能となり、設置自由度が大きく向上する。
ただし、低圧LCユニットでは高圧側への高調波逆流を完全に抑制できない場合もあり、電力会社との協議やシミュレーション検討が不可欠である。あくまで「容量・系統条件・設置環境」を総合的に判断した上での選択が求められる。
まとめ:高圧リアクトルは“当たり前”の時代へ
高圧リアクトル(SR)は、かつては限定用途向けの設備であったが、現在では高調波対策・電源品質確保の観点から、新設設備を中心に標準的に検討される機器となっている。
一方で、設置スペースや函体寸法、コストといった現実的な制約も存在し、容量や用途によっては低圧LCユニットへの置き換えという選択肢も有効である。
重要なのは、「SRを付ける・付けない」という二択ではなく、
系統条件
負荷特性
設置環境
将来の増設計画
を踏まえた上で、最適な高調波対策を選定することである。
高圧リアクトルは、今後ますます“あると安心”ではなく、“あって当然”の設備として、その重要性を増していくと考えられる。

前田 恭宏
前田です
