
UAS・UGS、PAS・PGSの違いとは?
高圧機器のUAS・UGS・PAS・PGSは、電力設備の制御や保護に不可欠な装置です。UASは屋内向けの気中負荷開閉器、UGSは屋外対応でガス絶縁型。PASは柱上での過電流保護と開閉が可能な簡易型装置で、PGSは高耐久・遠隔操作に対応した高度な装置です。設置環境や必要な機能に応じて適切な機器を選定することが、安定供給と設備の長寿命化に繋がります。今後はスマートグリッド対応機器への移行も進むと予想されます。
高圧機器におけるUAS・UGS、PAS・PGSの違いとは?
~制御・保護機能を支える重要機器の役割と特徴~
電力設備や工場プラントにおいて、電気の安定供給や設備保護を支える高圧機器は欠かせない存在です。中でも、UAS(Unit Auxiliary Switch)、UGS(Unit Gas Switch)、PAS(Pole Auto Switch)、**PGS(Pole Gas Switch)**は、配電・制御の分野でよく用いられる装置です。
しかし、これらの名称は略称であるうえに、機能や用途が似ていることから、初学者や経験の浅い技術者には違いが分かりづらいものでもあります。本コラムでは、それぞれの装置の特徴や違い、役割について、分かりやすく解説します。
1. 高圧機器の基本的な役割
高圧機器とは、一般的に**高圧(7,000Vを超える電圧)**の電気を扱うための遮断器、開閉器、保護装置などを指します。電力会社の配電線や工場の高圧受電設備などに用いられ、主な目的は以下の通りです。
通電・遮断(スイッチング機能)
異常時の自動遮断(保護機能)
定期的な保守・点検のための開放機能
操作の自動化(リモート制御)
これらを踏まえて、次に具体的な機器の違いを見ていきましょう。
2. UAS(Unit Auxiliary Switch)とUGS(Unit Gas Switch)の違い
■ UASとは
UAS(ユニット・オーグジリアリ・スイッチ)は、「高圧気中負荷開閉器」の一種です。一般的には気中遮断方式(Air Insulated)で構成されており、負荷電流の開閉を行うことができます。
特徴:
負荷開閉が可能(開閉器)
使用電圧:6.6kV系統で多く使用
遮断媒体は「空気」(気中開閉)
小型・比較的安価
屋内キュービクルや変電所などに設置される
UASは、保護機能そのものは持ちませんが、上位保護機器(高圧限流ヒューズなど)と組み合わせることで、簡易的な遮断システムとして機能します。
■ UGSとは
UGS(ユニット・ガス・スイッチ)は、UASと同様に高圧開閉器ですが、遮断媒体として絶縁性の高い「SF₆ガス(六フッ化硫黄)」を用いるのが最大の特徴です。
特徴:
SF₆ガス絶縁方式(ガス遮断)
高い絶縁性能と安全性
コンパクトな構造で屋外設置にも適する
屋外用開閉器として一般的(ポール設置)
UGSは、UASに比べて耐環境性に優れ、屋外での使用が前提となることが多いです。負荷開閉器としてだけでなく、過電流保護ヒューズとの組み合わせによる保護装置としても活用されます。
■ UASとUGSの比較表
項目 | UAS | UGS |
絶縁方式 | 空気(気中) | SF₆ガス |
使用場所 | 屋内向き | 屋外向き |
保護機能 | 単独ではなし(ヒューズ併用) | 単独ではなし(ヒューズ併用) |
サイズ・価格 | 小型で安価 | やや高価・高耐久 |
主な用途 | 受変電設備、キュービクル | 配電用柱上機器(ポール設置) |
3. PAS(Pole Auto Switch)とPGS(Pole Gas Switch)の違い
次に、配電用柱上機器として頻繁に用いられるPASとPGSの違いを見ていきます。
■ PASとは
PAS(ポール・オート・スイッチ)は、柱上に設置される自動開閉器で、負荷開閉と過電流保護の両方の機能を備えています。UASにヒューズを内蔵したような構造で、主に6.6kV配電線の開閉・保護に用いられます。
特徴:
過電流検出で自動遮断(限流ヒューズ内蔵)
遠方操作(無線制御・自動復帰)可能な機種もあり
安価で信頼性が高い
機械的構造がシンプル
特に日本では、高圧需要家への引き込み線において、保護装置としてPASが主流になっています。雷や地絡事故時の保護機能として重要です。
■ PGSとは
PGS(ポール・ガス・スイッチ)は、PASと同様に柱上に設置される開閉器ですが、SF₆ガスを使用した高性能な開閉器です。ヒューズは別体であり、単体では保護機能を持ちません。
特徴:
SF₆ガス使用で耐久性・絶縁性が高い
開閉能力がPASより優れる
ヒューズは外付け(SOG制御と組み合わせ)
機械的寿命が長い(PASに比べ開閉回数が多い)
PGSは、繰り返し操作や遠隔操作が多い環境、保守性が求められる場所に適しており、近年はスマートグリッド構築や配電自動化の一環として導入が進んでいます。
■ PASとPGSの比較表
項目 | PAS | PGS |
絶縁方式 | 空気(気中遮断) | SF₆ガス(ガス遮断) |
保護機能 | 内蔵ヒューズによる保護あり | 単体ではなし(SOGとの組合せ) |
主な使用場所 | 高圧需要家の引込柱など | 幹線の分岐点、重要施設の幹線 |
耐環境性 | 比較的低い | 高い(耐雷・耐湿・長寿命) |
遠隔制御 | 機種により対応 | 対応(通信機能内蔵が主流) |
4. まとめ:装置の選定は「場所」と「機能」で決まる
ここまでの内容を簡潔にまとめると、以下のようになります。
UASとUGSは、負荷開閉機能に特化した高圧スイッチであり、使用環境(屋内か屋外か)や絶縁方式の違いが大きなポイント。
PASとPGSは、柱上で使われる保護・開閉装置で、PGSはより高度な性能と耐環境性を持つ上位互換的存在。
選定のポイント:
利用シーン | 推奨装置 | 理由 |
屋内受電設備の開閉操作 | UAS | 安価・簡易構造 |
屋外の配電用スイッチ | UGS | 高耐久・屋外対応 |
高圧需要家の引込柱に設置 | PAS | 負荷開閉と過電流保護が一体で簡易 |
幹線分岐点やスマート配電制御 | PGS | 高耐久・遠隔操作対応・高頻度開閉向き |
5. 補足:SOG制御とは?
PGSに関する理解を深めるために、関連する用語「SOG制御(Synchronous Overcurrent Ground fault control)」についても簡単に触れておきます。
SOG制御とは、地絡や過電流の発生時に外付けの保護装置(電流センサ・リレーなど)によって事故を検出し、PGSと連動して自動的に開閉を行うシステムです。つまり、PGS単体では保護機能を持ちませんが、SOGとの組み合わせで事故時の遮断が可能になります。
このように、PGSはPASのように“ヒューズ一体型”ではない分、柔軟かつ高度な制御が可能になるという利点があります。
6. 今後の動向:スマート配電と高圧機器の進化
電力インフラのデジタル化や再生可能エネルギーの導入に伴い、配電網の自動化・効率化が加速しています。この流れの中で、従来のPASからPGSへの置き換えや、UGSを通信制御可能なスマートデバイス化する動きが進んでいます。
具体的には以下のような技術進化が期待されています。
IoT通信機能を備えたスマートPGS
自己診断機能付きUGS(ガス漏れ監視など)
電力需給に応じた遠隔制御対応PAS/PGSの普及
再エネ対応の保護・開閉ロジックの高度化
つまり、これからの高圧機器は「開閉」や「遮断」だけでなく、「状態監視」や「遠隔制御」といったスマートグリッド対応機能が求められる時代になってきています。
7. 終わりに:目的に応じた最適機器の選定を
高圧機器におけるUAS、UGS、PAS、PGSはいずれも、電力の安全かつ安定的な供給を実現するための重要な装置です。それぞれの特徴や違いを理解し、使用環境や目的に応じて適切な装置を選定することが、設備の長寿命化やトラブル防止につながります。
屋内外の設置環境、開閉回数、保護機能の有無、遠隔操作の要否などを整理したうえで、最適な装置を選ぶことが、エンジニアや設備管理者に求められる重要な判断となります。
日々進化する電力技術とともに、これらの機器もまた高性能・高機能化が進んでいます。基本を押さえつつ、最新動向にも注目していくことで、より安全でスマートな電力設備の構築が可能となるでしょう。

前田 恭宏
練習