キュービクルと第三次トップランナー基準

キュービクルと第三次トップランナー基準

25/09/12 09:58

キュービクル式高圧受変電設備に用いられる変圧器は、2026年4月から「第三次トップランナー基準」への適合が義務付けられ、省エネ性能のさらなる向上が求められます。これにより、変圧器の寸法・重量増加やコスト上昇、キュービクルの設計変更が必要となる可能性があります。導入・更新時には、寸法確認、基礎補強、納期管理などへの対応が重要です。長期的には電力損失削減や環境負荷低減に寄与するため、早期の計画と情報収集が不可欠です。

「キュービクルと第三次トップランナー基準の最新動向と実務対応」

はじめに

まず、キュービクルとは何か、そしてトップランナー制度とは何か、基本を押さえた上で、第三次判断基準が変圧器にどう影響し、キュービクル設備にどのような対応が求められるかを述べます。

キュービクルとは何か(基礎知識)

「キュービクル(cubicle)」とは、正式には キュービクル式高圧受変電設備 と呼ばれ、高圧で受電した電力を施設で使える低圧(100V, 200Vなど)に変圧する機器類(変圧器・開閉器・保護装置・受電盤など)を金属の箱体などで収めた設備を指します

主に対象になるのは:

  • 契約電力が50 kWを超えることにより「高圧受電契約」が求められる施設。

  • 商業施設、工場、大型ビル、学校、マンション等、電力使用が一定規模あるところ。

キュービクルの主な役割・構成は以下の通りです:

機能/要素

内容

受電

電力会社から高圧(代表的に6,600 Vなど)で供給される電気を受け入れる。

変電(変圧)

変圧器(トランス)で高圧から低圧に電圧を下げ、施設内で使用できるようにする。

配電/制御/保護

低圧配電盤、高圧受電盤、遮断器や保護装置(過電流・短絡・地絡防止など)を備える。

また、設置基準・安全規制・法令(電気事業法・JIS規格等・消防法など)があります。設置場所スペース・温度条件・避雷・結露対策等も規定がある。

トップランナー制度とは何か(変圧器を含む省エネ制度の枠組み)

トップランナー制度は、日本の省エネルギー政策の一つで、「特定の機器類」について最も省エネ性能が高いもの(トップランナー)を基準として、それを目標/基準とし、それ以下の性能の機器を改良・入れ替えていくことを促す制度です。

変圧器(配電用変圧器)はこの制度の対象機器のひとつです。変圧器の“エネルギー消費効率”(損失の少ないこと、待機損失や鉄損・銅損等が小さいこと)が制度上評価・基準化されてきました。

これまでにも、トップランナー変圧器には複数の判断基準があり、第1次・第2次判断基準(2014基準等)が適用されていました。

第三次トップランナー変圧器判断基準(2026年度からの改定内容)

ここからは、2026年4月から適用される「第三次判断基準」が、何をどれだけ改めるものか、その重要ポイントを整理します。

項目

内容

適用開始時期

2026年4月より、変圧器メーカーに対して新基準適合が義務付けられる。従来のトップランナー変圧器2014基準の出荷はこの期日以降できなくなる。

対象範囲

油入変圧器、モールド変圧器、現行制度の対象と同じ種類。能力区分(容量・相数・周波数・仕様区分)による分類。

エネルギー消費性能(効率)の改善率

平均で**約14.2%**のエネルギー消費効率向上が求められている。

基準区分・算定方式

容量毎、仕様(標準仕様・準標準仕様等)、相数・周波数など複数の区分に応じて、区分毎に「基準エネルギー消費効率」が定められ、それを「出荷台数で加重平均」して、各年度目標を上回らないようにする方式。

負荷率の基準

変圧器の損失低減の実用的な有効性を確保するため、負荷率を考慮した基準がある。例えば 500 kVA 以下では 40%、500 kVA 超では 50%などの基準負荷率が設定されており、この点は第二次基準から継続されています。

キュービクルと第三次判断基準の関係・影響

では、この新基準はキュービクル設備(特に変圧器を含む受変電設備)に具体的にどう影響するか、どのような対応が必要になるかを見ていきます。

  1. 変圧器の更新・選定における制約の変化

    • 新基準に適合しない旧変圧器(トップランナー2014基準のもの)は、2026年4月以降、メーカーからの出荷ができなくなる。つまり、キュービクルに既存の変圧器を取り付けようとしても、そのモデルが入手できない可能性がある。

    • 新基準対応の変圧器は、効率を上げるために鉄心・巻線等の材料をより高性能なものにする必要があり、その結果、「寸法・質量」が大きくなる傾向がある。

    • また待機電力(鉄損など)の低減が重視されており、これも新材・構造を採用した変圧器で対応される(例:アモルファス合金鉄心を使った製品など)。

  2. 設置スペース・構造・搬入・基礎などの影響

    • 変圧器が大きくなると、キュービクル自体の内部寸法・強度・基礎構造などを再検討する必要が出てくる。既存キュービクルの収まり(変圧器が箱体内に“入る”か)が問題となるケースもある。

    • 搬入作業での重量・サイズの制限や、キュービクル扉・壁の開口部・設置場所までのアクセス等を見直す必要がある。場合によってはキュービクル全体の拡大・改造が必要になることも。

    • 基礎(コンクリートなど)の強度や設置床面の支持力なども、新しい変圧器の重量や振動・熱などに対応できるように検討が必要。特に屋外設置・屋上などでは荷重条件が厳しくなる。

  3. コスト・価格への影響

    • 高効率化により材料コストが上がることが見込まれており、製品自体の単価が上昇する。

    • 加えて、キュービクル側での改造(内部寸法拡大、基礎補強、搬入経路の確保等)や工事コスト・施工期間も増加するケースがある。

    • さらに、設計変更・審査・図面確認等の期間が長くなる可能性もあり、納期(発注から納入までの期間)が影響を受ける。

  4. 制度・補助金等への影響

    • 補助金交付制度や公共工事などで「省エネ基準を満たす機器・設備」を求める案件が多く、変圧器が第三次基準に適合していることが要件となることが増えてくる見込み。

    • キュービクル設置を計画している事業者は、変圧器メーカーがいつ現行モデルの受注を停止するかを確認する必要がある。メーカーによっては2025年9月以降、現基準製品の受注停止予定を公表している。

  5. 運用・維持管理の観点

    • 新基準で効率が上がる変圧器は、待機損・鉄損・銅損などの損失が低いため、電力ロスが減り、長期的には電気料金削減やCO₂排出低減に寄与する。キュービクルを長く使う施設では、この点が非常に重要。

    • 古い変圧器では効率が悪く、損失が大きいものもあり、更新を検討すべき時期が近づいている。日立産機システムの調査では、国内稼働中の変圧器のうち設置後20年を超えるものが多く、最新モデルと比べて損失が大きいものが多いという指摘がある。

キュービクル設置・更新時の具体的な注意点

現場で新基準を踏まえてキュービクルを設計・更新・維持する際に、以下の点を押さえておくとよいでしょう。

  1. 変圧器仕様の事前確認

    • 新基準対応の変圧器の外形寸法・重量・接続口位置などを詳細に確認し、既設キュービクル内に収まるかどうかを確認する。図面やメーカー仕様表を取り寄せること。

    • 搬入経路(ドア・扉の大きさ、クレーンや人力の扱い・通路)を確認。現場実際の設置場所まで運べるかを事前に検討する。

  2. キュービクルの構造・基礎の見直し

    • 床荷重・地震対策・耐熱・換気等が新仕様変圧器対応できるかをチェック。特に油入変圧器等で発熱や油漏れリスクがあるものは、周囲のクリアランス・換気が重要。

    • 基礎の強化が必要な場合、設計段階で余裕を持たせておく。コンクリートの厚さ・アンカー等の取付方法も確認。

  3. 予算の見積もり

    • 製品コストだけでなく、工事費・設置準備費(基礎・搬入・改造)・保守・メンテナンスコストなどを含めたトータルコストを見積もる。

    • 将来の電力使用量増加を見込んで容量に余裕をもたせると、後で追加や再更新をする際のコストを抑えられる。

  4. スケジュール管理

    • メーカーの受注停止・切り替え時期を把握する。たとえば、現行基準製品の受注停止が予定されているメーカーもあるため、発注タイミングを逃すと納期が大きく遅れる可能性がある。

    • 設計承認・許認可等の手続き期間も含めた余裕を持ったスケジュールを作成する。

  5. 補助金・制度への対応

    • 補助金申請や公共工事の仕様で、新基準対応が要件となるものがあるか確認する。要件を満たさない機器では補助が受けられない、あるいは契約落ちすることもある。

    • また、既存のキュービクルで変圧器だけ更新可能か、あるいはキュービクル本体も含めて更新・増築が必要かを検討する。

まとめ

第三次トップランナー変圧器判断基準は、変圧器の省エネルギー性能をさらに引き上げることを目的とした政府の制度改定であり、キュービクル設備にとっては無視できない大きな転換点です。特に以下の点が重要です:

  • 新基準により旧変圧器が出荷できなくなること

  • 新基準対応変圧器の寸法・重量増加によりキュービクルの構造・設置場所・搬入などの影響あり

  • コスト増・設置工期の延長の可能性

  • しかしその一方で、電力損失低減・電気料金・CO₂排出削減など長期的なメリットも大きい

キュービクルを導入・更新しようとする事業者・設計者・施工者は、この基準変更を念頭に、仕様選定・設計・見積もり・納期の段取りを早めに行うことが肝心です。

もしよければ、「具体的な変圧器の性能比較」「キュービクル設計のモデル例」「コスト試算」などもお送りできますが、ご希望されますか?キュービクル導入価格、内訳費用はどのくらい?節約法や設置完了までの期間も解説。 | Resprom|オフィス・事務所・店舗のリフォームに役立つ情報を発信するメディアです

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前田 恭宏
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