
空調は「省エネ・脱炭素の戦略装置」へ
業務施設では空調がエネルギー消費の大きな割合を占め、法改正や補助制度を背景に高効率化・脱炭素化が重要課題となっています。その中核技術が、少ない電力で大きな熱を生み、直接CO₂を排出しないヒートポンプです。本コラムでは、負荷算定や配管・ダクト計画、既設設備との併用といった設計段階の要点から、施工品質、運用設定、保守管理までを整理。さらに排熱回収や部分負荷運転を活かした効率化、日本キヤリアの高効率空調ソリューションを通じ、空調を経営戦略として捉える重要性を解説しています。
空調は「省エネ・脱炭素の戦略装置」へ
― 最新の潮流とヒートポンプ活用の要点(設計・施工・運用の全体像)
■ はじめに:空調が担う戦略的役割の変化
建物におけるエネルギー消費の中で、空調設備は極めて大きな割合を占めています。国土交通省の調査では、事務所では約63%、学校では約52%、ホテルや商業施設では60%以上※と、空調が総消費エネルギーの中心を担うケースが多くあります。こうした背景から、省エネ性の高い空調設備の導入は脱炭素経営の重要な柱となっています。
さらに、2025年4月から施行された建築物省エネ法の改正により、新築建物への省エネ基準適合が義務化され、2050年カーボンニュートラルが国の長期目標として掲げられています。あわせて国や自治体による補助金制度も整備され、省エネ空調の導入・更新に対する後押しが強まっています。
空調改革は単なる光熱費削減にとどまらず、従業員の快適性向上、企業価値の向上、資産評価の改善にも寄与します。脱炭素社会の実現に向け、空調はもはや戦略的設備の中心であり、企業の環境戦略の鍵を握る存在になっています。
ヒートポンプ:省エネ・脱炭素の主役技術
ヒートポンプは、空気や水の熱を活用して消費電力以上の熱エネルギーを取り出せる技術です。例えば最新のヒートポンプでは、投入した1の電力で3~7の熱エネルギーを得られる仕組みになっており、電気ヒーターなどの単純な加熱機器と比較して省エネ効果が大きいことが特徴です。
また、ヒートポンプは運転中に燃焼を伴わないため、直接的なCO₂排出がありません。これはすなわち、脱炭素への直結した設備であり、冷暖房や給湯、産業プロセスなど、幅広い用途で活用できる技術です。
空調運用で特に省エネ効果の高い場面として、季節の変わり目となる春・秋の「中間期」があります。この時期は建物内で同時に暖房と冷房が必要になるゾーンが混在することがよくあります。ヒートポンプによる排熱回収機能を活かすと、暖房ゾーンの熱需要に冷房側の排熱を再利用でき、高効率な運用が可能です。
設計段階:負荷計算とシステム設計の要点
設計段階では、単に機器の性能を大きくするだけではなく、建物全体の「エネルギーパターン」を丁寧に把握し、最適な負荷算定・配管設計・システム選定を行う必要があります。
● 正確な空調負荷計算
部屋の用途、面積、断熱性能、日射や換気条件等を精密に分析し、必要な冷暖房能力を算定します。過大な能力設定はランニングコスト増加や快適性の低下につながり、過小な設定は性能不足の原因になります。
● 配管・ダクト計画の最適化
冷媒配管やダクトルートが長く複雑になれば、圧力損失や熱損失による効率低下が避けられません。そのため、ルートの単純化と断面サイズの最適化は省エネ達成の基本です。
● 既存設備とのハイブリッド運用検討
既設ボイラーなどがある場合、すべてをヒートポンプに置き換えるか、日常熱需要はヒートポンプでまかない必要時にボイラーを補完する「ハイブリッド運用」を検討することも有効です。ヒートポンプは効率・脱炭素性に優れる一方、大量熱需要時の即応性では従来の燃焼系熱源が有利な場合もあるためです。
施工・運用フェーズでの品質と効率最大化
設計どおりの性能を現実の運用で発揮するには、施工品質と運転管理が極めて重要です。
● 真空引きと断熱処理
施工時には配管内部の水分・異物を除去する真空引きを適切に行い、断熱材の継ぎ目まで密閉性を確保することが必要です。ここが不十分だと熱損失や結露の原因となり、省エネ性が損なわれます。
● 運用設定の最適化
季節や使用状態に応じて風量や設定温度を適切に変更することにより、過剰な消費電力を抑制できます。センサー連動制御や部分負荷運転を活用することで、より細やかな制御が可能になります。
● 定期メンテナンスの徹底
フィルター清掃、熱交換器の洗浄、ドレン配管の点検、冷媒漏れチェック等は、長期にわたる省エネ性能維持に不可欠です。専門性の高い施工・保守業者の活用も検討するとよいでしょう。
日本キヤリアのソリューション:製品とサービス
日本キヤリアは、高効率空調と脱炭素化を実現する多様な製品と、それを支えるトータルサポートを提供しています。
● ビル用マルチ空調システム「スーパーマルチu」
可変冷媒流量(VRF)方式を採用し、各室内機を個別制御することで不要運転を抑制し、省エネ性能を最大化します。
● 遠隔監視サービス
運用中のデータを解析し、ポテンシャルの最大化や故障予兆を検出することで、効率改善と計画的な保全を支援します。
● 空冷ヒートポンプ式熱源機「USX FIT」
コンパクト設計で施工性と省エネ性を両立した熱源機として、新設・更新の両面で柔軟に対応します。
おわりに:空調設計は経営戦略
空調設備は単なる快適装置ではなく、省エネ・脱炭素経営の要となる重要なインフラです。企画・設計、施工、運用・保守までを一貫して見渡し、ヒートポンプを核とした高効率空調システムを導入することで、企業価値向上につながる戦略的投資になります。日本キヤリアはこうした取り組みを強力に支援します。
前田 恭宏
前田です
