
高圧遮断器の種類と違い
ビルや工場、発電所などの電気設備に欠かせない「高圧遮断器(サーキットブレーカー)」。 電気回路に落雷やショートなどのトラブル(事故電流)が発生した際、危険を察知して素早く電気を遮断し、設備や建物を火災などの危険から守る重要な役割を果たしています。 しかし、「VCB」や「GCB」といった英字の略称が多く、どの遮断器がどのような仕組みで動いているのか分からないという方も多いのではないでしょうか。 この記事では、高圧遮断器の基本的な役割から、代表的な5種類の遮断器(VCB・OCB・MBB・ABB・GCB)の特徴やメリット・デメリットまで、電気の初心者向けにご紹介します。
そもそも高圧遮断器とは?役割と「アーク放電」の基本
遮断器の具体的な種類を見る前に、まずは「なぜ遮断器が必要なのか」という基本を押さえておきましょう。
遮断器と開閉器(スイッチ)の違い
家庭にあるブレーカーと同じように、施設向けの高圧電気にもスイッチが存在します。
開閉器(スイッチ): 通常時に電気を流したり止めたりするもの。
遮断器(サーキットブレーカー): トラブル時の巨大な電流(事故電流)を安全に断ち切るもの。
遮断の壁となる「アーク放電」とは?
大きな電流が流れている回路を無理やり切り離そうとすると、空気中に電気の火花(プラズマ)が飛び散ります。これを「アーク放電」と呼びます。
アーク放電は数千度以上の超高温になるため、そのまま放っておくと機器が溶けたり、火災の原因になったりします。
そのため、高圧遮断器は「いかに素早くアーク放電を消すか(消弧:しょうこ)」という仕組みごとに分類されています。
高圧遮断器の主要5種類とその特徴
アーク放電を消すための素材(消弧媒体)の違いによって、高圧遮断器は主に以下の5つに分けられます。
1. 真空遮断器(VCB:Vacuum Circuit Breaker)
消弧媒体: 高真空
現在、ビルや工場の高圧受電設備(キュービクルなど)で最も広く使われている主流の遮断器です。
【仕組みと特徴】
空気をほとんど含まない「真空」の中では、アーク放電の元となる物質(電子やイオン)が拡散しやすく、火花がすぐに消えるという性質を利用しています。
メリット: 小型で軽量、寿命が長くメンテナンスが楽。火災のリスクがない。
デメリット: 電流を急激に遮断しすぎるため、開閉時に発生する「サージ電圧」によって機器を痛めることがある(対策として避雷器などを設置する)。
2. ガス遮断器(GCB:Gas Circuit Breaker)
消弧媒体: SF₆(六フッ化硫黄)ガス
特別高圧(特高)と呼ばれる、電力会社の変電所や巨大工場などの非常に高い電圧を扱う場所での主流です。
【仕組みと特徴】
空気よりも圧倒的に絶縁性能(電気を通さない能力)が高い「SF₆ガス」をアーク放電に吹き付けて瞬時に消し止めます。
メリット: 非常に高い電圧や大電流を確実に遮断できる。コンパクトに設計できる。
デメリット: SF₆ガスは温室効果が高いため、点検時や廃棄時にガスを漏らさず回収する厳重な管理が必要。
3. 油遮断器(OCB:Oil Circuit Breaker)
消弧媒体: 絶縁油
かつて高圧遮断器の主役として活躍していた、歴史の古いタイプです。
【仕組みと特徴】
油の中でアーク放電を発生させ、その熱で油が分解されたときに発生する「水素ガス」の冷却効果を利用して消弧します。
メリット: 構造がシンプルで、昔は広く普及していた。
デメリット: 油を使用するため火災のリスクがある。油の定期的な交換や清掃など、メンテナンスが大変。現在は新規で採用されることはほぼありません。
4. 磁気遮断器(MBB:Magnetic Blow-out Circuit Breaker)
消弧媒体: 空気 + 磁石(電磁力)
特殊な構造でアーク放電を誘導して消す遮断器です。
【仕組みと特徴】
電流が流れると発生する「磁力」を利用してアーク放電を引き伸ばし、グリッド(消弧板)と呼ばれる板の間に押し込んで冷却・消滅させます。
メリット: 油を使わないため火災の心配がない。
デメリット: 機器自体が大型で重く、遮断能力にも限界があるため、VCBの普及とともに姿を消していきました。
5. 空気遮断器(ABB:Air Blast Circuit Breaker)
消弧媒体: 圧縮空気
高電圧の変電所などで昔使われていた大型の遮断器です。
【仕組みと特徴】
タンクに溜めた強力な「圧縮空気」をアーク放電に向かって一気に吹き吹き飛ばすことで消弧します。
メリット: 油を使わずに大容量の遮断が可能。
デメリット: 動作時に「パンッ!」という凄まじい爆音が響く。空気を圧縮するためのコンプレッサー設備が必要で大掛かりになるため、現在はGCBへ移行しました。
一目でわかる!5つの高圧遮断器 比較表
遮断器の種類 | 略称 | 消弧媒体 | 主な使用場所 | 現在の状況 |
真空遮断器 | VCB | 真空 | ビル・工場の高圧設備 | 【主流】 高圧分野の標準 |
ガス遮断器 | GCB | SF₆ガス | 変電所・特別高圧設備 | 【主流】 特高分野の標準 |
油遮断器 | OCB | 絶縁油 | (昔の高圧~特高) | 旧式(火災リスクあり) |
磁気遮断器 | MBB | 空気+磁力 | (昔のビル・工場) | 旧式(大型で重量あり) |
空気遮断器 | ABB | 圧縮空気 | (昔の変電所) | 旧式(動作音が非常に大きい) |
今覚えておくべきは「VCB」と「GCB」の2つ!
さまざまな種類がある高圧遮断器ですが、現代の電気設備で新規設置・運用されているのは基本的に「VCB」と「GCB」の2種類です。
ビルや工場の電気設備(高圧:6,600Vなど)なら ➡ VCB
電力会社の変電所や大規模施設(特別高圧:22,000V以上)なら ➡ GCB
電気の管理や現場の点検業務に携わる方は、まずこの2つの違いと役割を押さえておけば間違いありません。
まとめ:時代とともに進化した高圧遮断器
高圧遮断器は、かつて火災リスクのある「油(OCB)」や
大がかりな「圧縮空気(ABB)」を使っていましたが、技術の進歩によってより安全・小型・高性能な「真空(VCB)」や「ガス(GCB)」へと進化を遂げてきました。
安全に電気を使い続けるために、遮断器は陰で建物を守り続けています。電気設備の点検や更新を検討する際は、設備の電圧や用途に合わせた適切な遮断器を選定しましょう。
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