
ノーヒューズブレーカーの基礎知識とメーカー別呼称の全貌
ノーヒューズブレーカー(配線用遮断器)の要約 ノーヒューズブレーカーは、過電流や短絡(ショート)から回路を保護する装置です。従来のヒューズと異なり、スイッチ操作で再投入できるのが特徴で、JIS規格上の正式名称は「配線用遮断器」です。 メーカー別の呼称と背景 機能は同じですが、メーカーにより呼び名が異なります。 三菱電機:日本初の国産化を行い「ノーヒューズ遮断器(NFB)」を広めました。 富士電機:「オートブレーカ」と呼び、型式「BW」が主流です。 パナソニック・テンパール工業:正式名称に近い「配線用遮断器」を用います。 選び方のポイント 選定時は、サイズ(AF)や遮断電流(AT)、極数、遮断容量を確認する必要があります。なお、人体を守る「漏電遮断器(ELB)」とは役割が異なるため注意が必要です。
電気の安全を守る番人:ノーヒューズブレーカーの基礎知識とメーカー別呼称の全貌
住宅の分電盤から工場の大型受電設備まで、私たちの生活の裏側で常に「電気の安全」を監視しているデバイスがあります。それが**ノーヒューズブレーカー(配線用遮断器)**です。
しかし、いざ電気工事の仕様書を見たり、交換用の部品を探したりすると、「MCCB」「オートブレーカ」「配線用遮断器」など、さまざまな呼び名が飛び交い、混乱してしまうことも少なくありません。
本記事では、ノーヒューズブレーカーの役割や仕組みといった基本から、なぜメーカーによって呼び名が異なるのか、その背景と各社の特徴を詳しく解説します。
1. そもそも「ノーヒューズブレーカー」とは何か?
役割と定義
ノーヒューズブレーカー(No-Fuse Breaker)は、その名の通り**「ヒューズを必要としない遮断器」**を指します。
かつての電気回路では、過電流が流れた際に中の金属(ヒューズ)が熱で溶断することで回路を遮断する「安全器」が主流でした。しかし、ヒューズ式には「一度切れると交換が必要」「交換ミスによる事故のリスク」といった欠点がありました。
これに対し、ノーヒューズブレーカーはスイッチひとつで復旧(再投入)が可能であり、現代の電気設備における標準となっています。正式名称は、日本産業規格(JIS)において**「配線用遮断器」**と定められています。
主な2つの保護機能
ノーヒューズブレーカーには、大きく分けて2つの「守るべきもの」があります。
過負荷保護(オーバーロード)
家電製品の使いすぎなど、許容範囲を少し超えた電流が長時間流れた際に、電線の過熱による火災を防ぐために遮断します。
短絡保護(ショート)
機器の故障などでプラスとマイナスが直接接触し、一瞬で莫大な電流が流れた際、爆発や機器破壊を防ぐために瞬時に遮断します。
2. 仕組み:どのようにして電気を止めるのか
ノーヒューズブレーカーが電流を遮断するメカニズムには、主に「熱動式」と「電磁式」の組み合わせが採用されています。
熱動式(バイメタル方式)
電流が流れると熱が発生する性質を利用します。2種類の膨張率が異なる金属を貼り合わせた「バイメタル」が、過電流による熱で湾曲し、トリップレバーを跳ね上げることで回路を遮断します。主に緩やかな過電流(過負荷)に対応します。
電磁式(電磁石方式)
電磁石(コイル)を使用します。短絡(ショート)のような急激な大電流が流れた際、強力な磁力で瞬時にプランジャ(可動鉄心)を引き寄せ、回路を切り離します。
3. メーカー別・呼称の違いとその背景
ここが本コラムの核心です。実は「ノーヒューズブレーカー(NFB)」という言葉自体、特定のメーカーが広めた呼称であり、業界全体で統一されているわけではありません。
主要メーカーごとの呼び方と、その特徴を整理しました。
① 三菱電機:『ノーヒューズ遮断器』『NFB』
日本国内シェアNo.1を誇る三菱電機は、1953年に日本で初めて配線用遮断器を国産化しました。
呼称: ノーヒューズ遮断器(商品名:ノーヒューズブレーカ)
略称: NFB (No-Fuse Breaker)
特徴:
三菱が「ノーヒューズ」という言葉を一般化させたため、ベテランの電気技術者の間では、どのメーカーの製品であっても総称として「NFB(エヌエフビー)」と呼ぶのが一般的になっています。同社の「WS-Vシリーズ」は、省スペース性と高い遮断性能を両立した業界のスタンダードです。
② 富士電機:『オートブレーカ』『BW』
三菱電機と並んで産業用機器に強い富士電機は、独自の呼称を持っています。
呼称: オートブレーカ
略称: MCCB (Molded Case Circuit Breaker)
特徴:
富士電機では「オートブレーカ」という呼称を長年使用しています。型式が「BW」から始まることが多いため、図面上で「BW」とあれば富士電機のブレーカーを指すことが多いです。特にG-TWINシリーズは、グローバル規格への対応が早く、海外輸出用装置によく採用されます。
③ パナソニック:『配線用遮断器』『コンパクトブレーカ』
住宅設備・ビル管理において圧倒的な強みを持つのがパナソニックです。
呼称: 配線用遮断器(または単にブレーカ)
特徴:
住宅用分電盤(コスモパネルなど)に組み込まれる「コンパクトブレーカ(SH型)」などが有名です。産業用の大型のものだけでなく、一般消費者に最も身近な「安全ブレーカ」や、スマートHEMSに対応した計測機能付きブレーカなど、IT・住宅連携に強みがあります。
④ テンパール工業:『配線用遮断器』『Bシリーズ』
広島に本社を置くブレーカー専業メーカーの先駆けです。
呼称: 配線用遮断器
特徴:
テンパール工業は、日本で初めて「漏電遮断器」を開発したメーカーとして知られています。配線用遮断器においても、パールテクト(分電盤ブランド)などで高い信頼性を誇ります。専業メーカーならではの、現場のニーズに応えた特殊仕様品への対応力に定評があります。
各社の呼称まとめ表
メーカー名 | 主な呼称 | 一般的な略称 | 型式の始まり(例) |
三菱電機 | ノーヒューズ遮断器 | NFB | NF... |
富士電機 | オートブレーカ | MCCB | BW... |
パナソニック | 配線用遮断器 | MCCB | BCW... / BSH... |
テンパール工業 | 配線用遮断器 | MCCB | B... |
(国際標準) | Molded Case Circuit Breaker | MCCB | - |
4. 混同しやすい「漏電遮断器(ELB)」との違い
ノーヒューズブレーカーと見た目がそっくりな機器に**「漏電遮断器」**があります。これらは役割が全く異なります。
ノーヒューズブレーカー(NFB/MCCB):
「電線」や「機器」を守るためのもの。ショートや使いすぎを防ぐ。
漏電遮断器(NV/ELB):
「人間」を守るためのもの。電気が外に漏れ出た(漏電)際に、感電事故を防ぐために遮断する。
見分け方は簡単です。本体に**「テストボタン(黄色やグレーの小さなボタン)」**がついているのが漏電遮断器です。ノーヒューズブレーカーには通常、このボタンはありません。
5. ノーヒューズブレーカーの選び方:4つの重要スペック
実際にブレーカーを選定・交換する際には、呼称以上に重要なスペックが4つあります。
① 定格電流(Ampere Frame / Ampere Trip)
AF(アンペアフレーム): 容器(外箱)のサイズを表す大きさ。
AT(アンペアトリップ): 実際に何アンペア流れたら切れるかという性能。
例:NF63-CV 3P 40A の場合、63AF(サイズ)の40AT(定格)となります。
② 極数(P:Pole)
2P(2極): 単相2線式(100Vなど)に使用。
3P(3極): 三相3線式(200V動力など)に使用。
③ 定格遮断容量(kA)
短絡(ショート)した際、どの程度の電流まで壊れずに安全に遮断できるかという能力です。トランスに近い場所ほど大きな数値が求められます。
④ 動作特性
モーターの始動時など、一時的に大きな電流が流れても落ちないようにする「低速形」や、精密機器を守るための「高速形」などがあります。
6. まとめ:呼び名は違えど、目的はひとつ
「ノーヒューズブレーカー」「オートブレーカ」「NFB」「MCCB」。
呼び名はメーカーの歴史やブランド戦略によって異なりますが、すべてJIS規格に基づく**「配線用遮断器」**という同じ目的を持った装置です。
三菱電機系の現場なら「NFB」
富士電機系の現場なら「オートブレーカ」
国際案件や公共工事なら「MCCB」や「配線用遮断器」
このように、相手の文化に合わせて言葉を使い分けることができれば、現場でのコミュニケーションはよりスムーズになるでしょう。
電気は目に見えませんが、これらのブレーカーが物理的な接点を切り離すことで、私たちの安全な生活が保たれています。もし、ご自宅や職場の分電盤を見る機会があれば、どのメーカーの、どんな呼び名のブレーカーがついているか、一度チェックしてみてはいかがでしょうか。
本コラムが、電気設備の理解を深める一助となれば幸いです。
注意: ブレーカーの交換作業には「電気工事士」の資格が必要です。無資格での工事は法律で禁じられているだけでなく、火災や感電の恐れがあり非常に危険ですので、必ず専門業者に依頼してください。
前田 恭宏
前田です
