
気中開閉器(PAS)は、管轄する電力会社によって選定基準や認定制度が大きく異なります。例えば東京電力管内では、波及事故防止のため「全関推奨品」や「優良機材推奨認定規格」の取得品が実質必須です。一方、冬季雷の多い北陸電力管内では、爆発事故を防ぐためにVT(変圧器)やLA(避雷器)の内蔵型が原則認められず、外付け仕様が標準となっています。他地域から電気工事に参入する際は、「電気は全国共通」という固定観念を捨て、事前に管轄電力会社の配電規定を確認し、地域指定で機材を発注することがトラブル回避に不可欠です。
高圧受電設備(キュービクル)の新設や更新工事において、責任分界点に設置される「気中開閉器(PAS:Pole Mounted Air Break Switch)」は、電気主任技術者や電気工事業者にとって馴染み深い機器です。しかし、電力会社(一般送配電事業者)の管内ごとに、要求される仕様や認定制度が全く異なるという、非常に重要な点があります。
普段は関西や中部で施工している業者が、関東(東京電力管内)や北陸(北陸電力管内)の案件を受注した際、いつも通りのPASが「電力会社の検査に通らない」「接続を拒否される」といった致命的なトラブルに発展するケースがあとを絶ちません。
本記事では、東京電力管内特有の「全関推奨」「優良機材」の仕組み、北陸電力管内の「VT・LA内蔵NG」の背景、各地域特有の仕様差まで詳細解説します。他地域から工事に入る業者が押さえるべき実戦的な注意ポイントとして、お役立てください。
日本の電気事業は、各地域の電力会社が独自に系統を構築・運用してきた歴史があります。一見、JISやJEC等で標準化されていますが、独自の「配電規定」や「推奨規格」がある主な理由は以下のとおりです。
気候・地理的環境の違い: 塩害地域、多雪地域、雷多発地域など、自然環境条件が異なるため
系統運用の歴史と思想: 地絡保護(非接地系統or抵抗接地系統)や過去の波及事故経験から、独自の保安基準が形成
認定制度の有無: 「推奨品」しか受電を認めないエリアも
これを理解せずに標準仕様で図面を引き、機器を発注すると直前で手戻りが発生、多大な損失となる恐れがあります。
「全関(一般社団法人 全関東電気工事協会)」は、東電管内の高圧PASやSOG制御装置で「全関推奨品」使用を事実上義務化しています。
目的: 波及事故防止のため高い信頼性の製品を推奨
特徴: 推奨品PASには認定ステッカーが貼付、竣工検査でチェックされます
全関推奨と連動し、「優良機材推奨認定規格」が存在。JISより厳しい技術基準、耐久性、SOG誤動作防止性能等を満たす製品のみ認定されます。
他地域業者への注意点: 例えばJISだけに適合するPASを東電管内に搬入した場合、東電の検査で受電不可となるため、必ず「全関推奨品」であることをメーカーに確認して発注してください。
北陸電力(富山・石川・福井)管内では、PASの内部構造に厳格なルールがあり、VT(計器用変圧器)やLA(避雷器)内蔵タイプは原則不可です。
一般的な内蔵型PAS: 関東や中部、関西では、VTやLAをPASに内蔵することで省スペース・工事簡素化型が主流
北陸でNGの理由: 世界有数の「冬季雷」多発地帯で、雷エネルギーが非常に大きく、内蔵型は爆発・波及事故のリスク増大
基本仕様: PAS本体はスイッチ+ZCT等の最基本構成、VTやLAは別置きで外付けします
他地域業者への注意点: オールインワンのVT・LA内蔵型を誤って手配しないようにご注意ください。その場合、北陸電力の接続が拒否され、設計・見積もり・機材調達を再考しなければなりません。
関西電力管内: 地絡保護の考え方で「方向性(D-SOG)」か「無方向性(SOG)」を厳密選定、「関電対応」仕様も必要
中部電力管内: 塩害対策でステンレス製タンク指定や制御箱の鍵仕様など独自ルール
東北・北海道: 寒冷地対策仕様(積雪・凍結防止)必須
九州: 雷・塩害が強いため、LA容量や耐塩用ガイシが標準
ステップ | 実施すべきアクション | 確認のポイント |
|---|---|---|
鉄則 1 | 管轄電力会社の「配電規定」確認 | 最新配電規定をダウンロードし、PASの項目を熟読 |
鉄則 2 | 事前協議(内線打合せ)で直接確認 | 設計や見積段階で、型番まで確認する |
鉄則 3 | メーカー・電材商社への「管内指定」での発注 | 地域名を明記し「全関推奨品」や「外付けVT・LA仕様」で見積依頼 |
鉄則 4 | SOG制御装置の特性確認 | 動作時間・タイマー設定や出荷時調整が地域仕様か確認 |
鉄則 5 | 地元の組合や専任技術者と連携 | 不明点は現地の専門家・保安協会等へ相談 |
PASは高圧設備の「最初の砦」であり、「最後の砦」でもあります。誤った仕様選定は波及事故リスクを高め、損害賠償や信用失墜につながります。
地域ごとの仕様差は、先人たちの経験と科学的根拠に基づくもの。
「電気の基本は全国共通」という先入観を捨て、地域固有のルールを事前確認したうえでの機材選定・施工計画を徹底してください。
確実なステップを踏むことが、現場引き渡しの円滑化と貴社の信頼向上につながります。
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