
認定品キュービクルと推奨品キュービクルの違い
認定品キュービクルは、消防庁告示7号・8号に適合した非常電源専用設備で、「非常電源用ブレーカ」と隔壁の設置が必須です。消防法で非常電源が求められる建物では必ず認定品が必要となります。推奨品キュービクルは日本電気協会が品質を審査したもので、一般建築物向けです。いずれも太陽光発電設備との接続が可能で、用途や法規制に応じて使い分けることが重要です。
認定品キュービクルと推奨品キュービクルの違い——選定時に押さえておくべき要点
近年、再生可能エネルギー設備の普及や建築物の高度化に伴い、電力供給設備であるキュービクル(高圧受電設備)の重要性はますます高まっています。特に、建物用途によっては消防法や各種技術基準に基づく厳格な設備要件が求められるケースがあり、キュービクルの選定において「認定品」と「推奨品」の違いを理解することは欠かせません。
本コラムでは、両者の違いを明確にし、それぞれがどのような場面で必要になるのか、また実務上どのように選定すべきかをわかりやすく解説します。
1. キュービクルとは何か——その役割と必要性
キュービクルとは、一般に「高圧受電設備収納箱」と呼ばれ、高圧で電力会社から受電した電気を建物内で使用できる低圧に変換し、安全に配電するための設備一式を収めた金属製のボックスです。
その内部には、遮断器、変圧器、保護リレー、計測装置、避雷器など多種多様な電気機器が収納され、安定した電力供給と安全確保に大きな役割を果たしています。
建物規模が大きくなるほど、そして消防・医療など公共性の高い施設になるほど、キュービクルの信頼性は重要度を増し、法令や基準を満たした仕様が求められます。その際に登場するのが「認定品」と「推奨品」です。
2. 認定品キュービクルとは——消防法に基づく厳格な基準を満たす設備
認定品キュービクルは、消防庁告示7号および8号に適合した「非常電源専用受電キュービクル」のことを指します。
2-1. 非常電源設備とは
消防法では、建築物の用途に応じて以下のような負荷設備に対して「非常電源」の設置が義務付けられています:
自動火災報知設備
排煙設備
非常用エレベーター
スプリンクラー設備
非常照明 など
これらは火災時に確実に動作する必要があるため、通常の電源とは別に、消防法に準拠した供給系統が必要となります。
2-2. 認定品に「非常電源用ブレーカ」と「隔壁」が必須な理由
認定品には、消防負荷専用の「非常電源用ブレーカ」の設置が義務付けられており、これにより非常電源系統が一般負荷と明確に区分されます。また、キュービクル内部には「隔壁」が設けられ、火災時でも非常電源系統が可能な限り保持されるよう設計されています。
したがって、非常電源(隔壁)なしのキュービクルは認定品として認められない点が最大の特徴です。
2-3. 設備容量・適用範囲
あるメーカーでは、設備容量2,000kVAまでの14機種について認定品を取得しており、ビル・病院・大型商業施設など幅広い用途に対応可能です。
さらに、取得型式の全機種は太陽光発電設備との連携も可能であり、再エネ活用を進める施設にとっても有利です。
3. 推奨品キュービクルとは——日本電気協会による技術評価をクリア
一方、推奨品キュービクルは、日本電気協会が品質・安全性・施工性・技術適合性といった観点から総合審査し、「推奨」した製品のことを指します。
3-1. 推奨品の位置づけ
推奨品は消防法とは直接的な関係はなく、あくまで電気設備としての品質保証を目的としたものです。したがって、以下のような用途に適しています:
一般オフィスビル
工場
商業施設(非常電源が外付けの場合)
倉庫 等
さらに、あるメーカーでは設備容量500kVAまでの6機種を取得しており、比較的小規模な受電設備に適合します。
3-2. 太陽光発電設備との接続にも対応
推奨品であっても、取得形式すべてが太陽光発電との接続に対応しており、再エネ導入が進む現代において柔軟な運用が可能です。
4. 認定品と推奨品の決定的な違い
ここまでの内容を踏まえると、両者の最大の違いは次の一点に集約されます。
4-1. 最大の違い=非常電源(隔壁)の有無
認定品は必ず「非常電源用ブレーカ」と隔壁が必要
推奨品にはこの要件がない
つまり、消防法で「非常電源」を求められる建築物の場合、推奨品では法的要件を満たせず、認定品を選定することが不可欠です。
5. 建物用途に応じたキュービクル選定のポイント
キュービクルの選定では、建物用途と法規制を明確にしなければ適切な判断ができません。以下に、代表的なケースを示します。
5-1. 認定品が必要となるケース
病院
高層ビル
福祉施設、避難所指定建築物
大規模複合施設
特定防火対象物
これらの建物では消防法で非常電源が義務付けられているため、認定品を選ばなければなりません。
5-2. 推奨品で対応可能なケース
一般オフィス
一部の工場・倉庫
非常電源を別途設ける商業施設
小規模店舗
推奨品はコスト面で有利な場合も多く、必要な性能を満たしながら合理的な設計ができます。
6. 再生可能エネルギーとの接続——認定品も推奨品も対応可能
近年増加している太陽光発電(自家消費型PV)との連携において、認定品・推奨品のいずれも対応可能である点は重要です。
特に、認定品は従来「特殊な仕様が必要」と誤解されがちでしたが、現在はメーカー側で標準化が進み、太陽光連携型の設計が用意されています。このため、再エネ導入への障壁はほぼありません。
7. まとめ——用途と法規制を理解して最適なキュービクルを選ぶ
認定品と推奨品の違いを整理すると次のようになります。
項目 | 認定品キュービクル | 推奨品キュービクル |
基準 | 消防庁告示7号・8号 | 日本電気協会の推奨制度 |
非常電源用ブレーカ | 必須 | 不要 |
隔壁 | 必須 | 不要 |
主な用途 | 非常電源が必要な建築物 | 一般建築物・小中規模施設 |
太陽光発電との接続 | 可能 | 可能 |
結論として、建物が消防法により非常電源設置を義務付けられているかどうかが選定の最大の判断基準となります。もしその必要がある場合は、推奨品では代替できず、必ず認定品を選ぶ必要があります。
反対に、一般的な施設であれば推奨品でも十分な品質が確保され、コスト最適化にもつながります。
キュービクルは建物の電力供給を支える重要インフラであり、長期的な視点で適切な種類を選定することが建物の安全性・信頼性を左右します。用途・規模・法令要件を正しく理解し、最適なキュービクル選定に役立てていただければ幸いです。

前田 恭宏
前田です
