
負荷開閉器(LBS)の選定ガイド
負荷開閉器(LBS)は、通常時の電流開閉を担う受変電設備の重要機器です。選定時は以下の4点が鍵となります。 操作方式:コスト重視の手動か、遠隔操作用の自動か。 トリップ機能:地絡等の異常時にリレーと連動して遮断するか。 ストライカ機能:ヒューズ溶断時に全相を開放し、モーターの欠相焼損を防ぐか。 励磁突入電流抑制:高効率変圧器投入時の過大電流を抑え、遮断器の誤作動を防ぐか。 下流負荷の特性(電動機の有無や変圧器の効率)に合わせ、最適な機能を備えた機種を選ぶことが設備保護の肝要です。
安定した電力供給の要:負荷開閉器(LBS)の選定ガイド
――現場のニーズに合わせた最適な種類と機能の選び方――
受変電設備の設計や保守管理において、切っても切り離せない存在が負荷開閉器(LBS: Load Break Switch)です。遮断器(CB)とは異なり、短絡電流のような過大な事故電流を自力で遮断する能力はありませんが、通常時の負荷電流を安全に開閉する役割を担います。
しかし、一口に負荷開閉器と言っても、その機能は多岐にわたります。「とりあえず標準品を」と選んでしまうと、いざという時の保護動作が不十分だったり、逆に過剰なコストがかかったりすることもあります。
本コラムでは、負荷開閉器の主要な分類軸を整理し、それぞれの機能が「どのようなシーンで必要になるのか」を具体例を交えて徹底解説します。
1. 操作方式による分類:手動か自動か
手動操作式
専用の操作ハンドルを差し込み、人の力でバネを溜めて(蓄力)、その力で一気に接点を切り換える方式です。
必要なシーン:
コストを抑えたい小規模設備: 頻繁に開閉操作を行わず、点検時のみ開放するようなキュービクル(高圧受電設備)に最適です。
メンテナンスの簡素化: 電気的な制御回路が不要なため、故障リスクが低く、保守が容易です。
自動(電動)操作式
モーターや電磁コイル(ソレノイド)を使用して、遠隔地からの電気信号で開閉を行う方式です。
必要なシーン:
大規模工場やビル: 中央監視室から一括で受電系統を切り換えたい場合に必須です。
停電復旧の自動化: 停電発生時に予備線へ自動で切り換えるシステム(ALTSなど)を構築する場合に採用されます。
2. トリップ機能の有無:事故時に「逃がす」力
トリップ機能なし
単なる「スイッチ」としての機能のみを持ちます。
必要なシーン: 負荷の下流側に別途遮断器(VCB等)があり、LBS自体に保護機能を持たせる必要がない場合。
トリップ機能付き
外部の「過電流リレー(OCR)」や「地絡リレー(GR)」と連動し、異常を検知した際に瞬時に回路を遮断します。
必要なシーン:
受電設備盤(主開閉器): 波及事故を防止するため、地絡(漏電)が発生した際に自動で回路を切り離す必要があります。
変圧器の過負荷保護: 変圧器に過大な負荷がかかった際、熱ダメージから保護するために必要です。
3. ストライカ機能の有無:ヒューズとの連携
負荷開閉器の多くは「パワーヒューズ(PF)」と組み合わせて使用されます。このPFが溶断した際の挙動を決めるのが「ストライカ機能」です。
ストライカ機能なし
ヒューズが切れても、LBS本体は閉じたままです。切れた相だけが停電し、残りの相は活きたままになります。
ストライカ機能付き(連動トリップ)
ヒューズが溶断した際、ヒューズ内部からピン(ストライカ)が飛び出し、それがLBSのトリップ機構を叩くことで、3相すべてを一括で開放します。
必要なシーン:
モーター(電動機)回路: 1相だけヒューズが切れると、モーターに「欠相」が生じます。欠相状態での運転はモーターの焼損を招くため、1相でも切れたら即座に全相遮断する必要があります。
逆送電力の防止: 意図しない回り込み電流を防ぐため、確実な全相開放が求められる重要設備に採用されます。
4. 励磁突入電流抑制機能:変圧器投入時の「衝撃」を和らげる
近年、省エネ性能の高い「トップランナー変圧器」の普及に伴い、注目されているのがこの機能です。
励磁突入電流とは
変圧器に電源を投入した瞬間、定格の数倍から十数倍もの大きな電流(突入電流)が流れる現象です。これにより、上流の遮断器が誤作動して停電したり、電圧フリッカが発生したりすることがあります。
抑制機能付き(抵抗投入方式など)
メインの接点が閉じる直前に、一旦「抵抗器」を経由して通電させることで、突入電流を大幅に抑えます。
必要なシーン:
高効率変圧器を複数台運用する場合: 近年の変圧器は鉄心の特性上、突入電流が大きくなりやすいため、この機能がないと受電設備のメインブレーカーが耐えられないケースがあります。
精密機械を扱う工場: 投入時の電圧変動を嫌う電子デバイス製造ラインなど、電源品質の安定が求められる環境で重宝されます。
5. その他の特殊な機能・種類
現場の特殊な環境やニーズに応えるため、以下のようなバリエーションも存在します。
気中・真空・ガス(消弧媒体の違い)
気中負荷開閉器(AS): 空気を絶縁・消弧に利用。安価ですが、アークの飛散に注意が必要です。
真空負荷開閉器(VBS): 真空バルブ内で接点を開閉。コンパクトで長寿命、保守が容易ですが、少し高価です。
ガス負荷開閉器(GS): $SF_6$(六フッ化硫黄)ガスを充填。極めて高い絶縁性能を持ち、屋外の柱上用(PAS)などで広く使われます。
限流ヒューズの有無
LBSは自力で短絡電流を止められないため、通常は限流ヒューズとセットで使用されます。これを「PF付LBS」と呼びます。短絡事故が発生した際、LBSが壊れる前にヒューズが「限流作用」によって電流を遮断し、設備全体のダメージを最小限に抑えます。
6. まとめ:選定のチェックリスト
最適な負荷開閉器を選ぶための思考プロセスを整理しました。
検討項目 | 選択肢 | 選定の決め手 |
|---|---|---|
操作の利便性 | 手動 vs 自動 | 遠隔操作が必要か?コスト重視か? |
保護の自動化 | トリップ無 vs 有 | 地絡・過電流リレーと連動させる必要があるか? |
機器の保護 | ストライカ無 vs 有 | モーターの欠相焼損を防ぐ必要があるか? |
電源品質 | 抑制機能無 vs 有 | 変圧器投入時の停電トラブル(誤作動)を防ぎたいか? |
設置環境 | 屋内 vs 屋外 | 塵埃の多い場所や屋外ならガス式や真空式を検討。 |
最後に
負荷開閉器は、受変電設備という大きなパズルの一部に過ぎませんが、その1ピースが持つ機能が、システム全体の信頼性を左右します。特に最近のトレンドである省エネ変圧器への更新の際は、必ず「励磁突入電流」への対策をセットで考えることが、トラブル未然防止の鍵となります。
「今までと同じでいい」ではなく、下流に接続される負荷の特性を今一度見直し、最適な一台を選定することが、エンジニアとしての価値を高める第一歩となるでしょう。
前田 恭宏
1級電気工事施工管理技士
















