
高圧負荷開閉器におけるPASとUGSの使い分け
高圧負荷開閉器には、空気絶縁で構造が簡単なPASと、ガス絶縁の密閉構造を持つUGSがある。PASは屋外でスペースに余裕があり、コストや目視確認を重視する設備に適している。一方UGSは省スペースで安全性が高く、都市部のビルや地下設備など環境条件が厳しい場所に用いられる。両者は性能の優劣ではなく、設置環境や保守性、コストを考慮した適材適所の関係にあり、現在も用途に応じて使い分けられている。
高圧負荷開閉器におけるPASとUGSの使い分け ― なぜ両者は存在するのか、その理由と背景
高圧負荷開閉器におけるPASとUGSの使い分け
― なぜ二つの方式は存在し続けるのか、その技術的・歴史的背景を読み解く ―
高圧受電設備において、電力系統の区分や負荷の開閉を行う「高圧負荷開閉器」は、遮断器や変圧器と並んで重要な役割を担う機器である。その代表的な形式として広く知られているのが、PAS(Pole-mounted Air Switch)とUGS(Underground Gas Switch)である。両者はいずれも6.6kV系を中心に普及しているが、構造・設置形態・絶縁方式・保守性などに明確な違いがあり、用途に応じて使い分けられている。
本稿では、PASとUGSの基本的な違いにとどまらず、なぜ両者が併存し続けているのか、その背景にある技術的進化、設備設計の思想、さらには法規制や社会的要請まで含めて解説する。
1.高圧負荷開閉器の役割と位置づけ
高圧負荷開閉器は、その名の通り「負荷電流が流れている状態で回路を開閉できる」ことを主目的とした機器である。遮断器(CB)が短絡事故時の大電流遮断を担うのに対し、負荷開閉器は通常運転時の回路切替、点検時の区分、事故時の影響範囲の限定などを担う。
特に需要家受電設備においては、
・変圧器の一次側区分
・複数回線受電時の切替
・保守点検時の安全確保
といった場面で不可欠な存在である。PASとUGSはいずれもこの役割を果たすが、そのアプローチが異なる。
2.PASの構造と特徴
PASは、空気を絶縁媒体とした開放型の高圧負荷開閉器である。可動刃と固定刃による機械的な開閉構造を持ち、開閉状態を目視で確認できる点が最大の特徴である。設置形態としては、
・柱上設置
・屋外キュービクルへの組み込み
・受電鉄構への設置
などが一般的である。
PASのメリットとしては以下が挙げられる。
構造が単純で信頼性が高い
動作状態が視覚的に確認できる
導入コストが比較的低い
保守・点検が容易
一方で、開放型であるがゆえに、
・雨水や湿気
・粉じん
・塩害
・動物の侵入
といった外的要因の影響を受けやすいという弱点も併せ持つ。
3.UGSの構造と特徴
UGSは、SF₆ガスなどの高性能絶縁ガスを封入した密閉構造の高圧負荷開閉器である。金属製の容器内に開閉部を収め、外部環境から完全に遮断する設計となっている。
UGSの主な特徴は次の通りである。
高い絶縁性能と消弧性能
外部環境の影響を受けにくい
コンパクトで省スペース
感電・火災リスクが低い
これらの特性から、UGSは地下変電室、ビル受電設備、共同溝、工場建屋内など、設置環境に制約がある場所で多用されている。
4.絶縁方式の違いがもたらす設計思想の差
PASとUGSの根本的な違いは「絶縁方式」にある。PASは空気絶縁を前提としており、十分な離隔距離を確保することで安全性を担保する。一方、UGSはガス絶縁により、極めて短い距離でも高い絶縁性能を確保できる。
この違いは、設備全体の設計思想にも影響を与える。PASを用いる設備では、
・機器間隔
・点検スペース
・操作空間
が比較的広く必要となる。一方、UGSを採用すれば、受電設備全体を大幅にコンパクト化することが可能となる。
5.設置環境による明確な使い分け
実務上、PASとUGSの選定は設置環境によってほぼ決まると言っても過言ではない。
PASが選ばれるケース
・屋外設置で十分なスペースがある
・コストを抑えたい
・目視確認を重視したい
・地方や郊外の工場・施設
UGSが選ばれるケース
・都市部のビル受電設備
・地下変電室や共同溝
・第三者が近接する場所
・高い安全性が求められる施設
特に都市部では、感電事故やアーク放電による災害リスクを極力低減する必要があり、UGSの採用が事実上の標準となりつつある。
6.保守・点検・ライフサイクルコストの視点
PASは点検しやすい反面、定期的な清掃や部品交換が不可欠である。経年劣化が目に見える形で進行するため、予防保全は比較的行いやすい。
UGSは密閉構造のため、日常点検項目は少ないが、内部異常の兆候を把握しにくいという側面がある。また、故障時には部分修理が困難で、ユニット交換となるケースも多い。
このため、初期コストではUGSが高価である一方、長期的な安定運用や環境耐性を重視する場合には、結果としてライフサイクルコストが抑えられる場合もある。
7.法規・規格との関係
PAS・UGSはいずれも、JIS規格やJEC規格、電気設備技術基準に基づいて設計・運用されている。特に需要家設備では、
・保安規程
・主任技術者の管理体制
・点検頻度
といった運用面との整合が重要となる。
UGSは密閉型であるため、法規上の安全対策を比較的容易に満たせる点も、都市部で普及が進んだ一因である。
8.なぜPASとUGSは統一されないのか
技術的に見れば、UGSはPASの多くの弱点を克服した存在と言える。しかし、電気設備は「万能な一解」によって成り立つものではない。
・設置条件
・コスト制約
・保守体制
・運用実績
これらを総合的に考慮した結果として、PASは今なお合理的な選択肢であり続けている。
つまり、PASとUGSは「新旧」や「優劣」ではなく、「用途分担」という関係にある。
9.今後の動向と展望
近年では、環境負荷低減の観点からSF₆ガスに代わる新たな絶縁技術の研究も進められている。将来的にはUGSの構造や使用ガスが変化する可能性もあるが、それでも「開放型」と「密閉型」という考え方自体は残り続けるだろう。
10.まとめ
高圧負荷開閉器におけるPASとUGSの使い分けは、設備設計の合理性そのものである。PASは経済性と視認性に優れ、UGSは安全性と環境耐性に優れる。それぞれの特性を理解し、適切に選定することが、安定した電力供給と設備保安の要となる。

前田 恭宏
前田です
