
災害時・停電時の命綱「非常用発電機」と燃料の安全管理
災害時の停電対策やBCPに欠かせない非常用発電機は、燃料の安全な管理が不可欠です。主流の軽油やA重油は消防法上の危険物に当たり、設置や運用のハードルを下げるため「少量危険物」の枠組みで保管されるケースが多く見られます。少量危険物として届出・運用する場合、保管容量に上限(軽油1,000L未満、A重油2,000L未満)があり、条例に応じた防油堤や通気管等の設備要件を満たす必要があります。法令順守と確実な作動には適切な管理が不可欠です。 相談は小川電機(株)の電気設備ドットコムチームにお任せください。 【ご質問・お問合せ先】 電気設備.com フリーダイヤル: ☎ 0120-855-086
災害時・停電時の命綱「非常用発電機」と燃料の安全管理
少量危険物の規制・保管制限から管理上の注意点まで徹底解説
災害時の停電対策やBCP(事業継続計画)の策定に伴い、ビルや工場、病院、商業施設などにおいて「非常用発電機」の設置が進んでいます。
非常用発電機は、落雷や台風、地震などの自然災害によって商業電源(電力会社からの供給)が遮断された際、速やかに電力を供給して照明、エレベーター、スプリンクラー、医療機器などの重要設備を稼働させ続けるための極めて重要な設備です。
しかし、非常用発電機を正常に動かすためには「燃料の確保と適切な保管」が絶対に欠かせません。燃料の多くは消防法上の「危険物」に該当するため、法令に基づいた管理が厳しく義務付けられています。特に、安全面と手続きの手軽さのバランスをとって採用されることが多いのが「少量危険物(しょうりょうきけんぶつ)」と呼ばれる区分での保管です。
本記事では、非常用発電機の基礎知識から燃料の種類ごとの特徴、そして「少量危険物」として保管する際の法規制や管理上の制限(軽油1,000L、A重油2,000Lなどの容量限界)について解説します。

1. 非常用発電機とは?役割と種類
非常用発電機とは、電力会社からの送電が途絶えた際、自動または手動で起動し、施設に必要な電力を自家発電して供給する設備です。
(1)非常用発電機の主な役割
非常用発電機の役割は、目的によって大きく2つに分けられます。
防災用非常用発電機
消防法に基づき設置が義務付けられる発電機です。火災発生時に送電が止まっても、スプリンクラー、屋内消火栓、排煙設備、非常用照明などを一定時間稼働させるために動作します。BCP用(事業継続用)非常用発電機
建築基準法や独自の事業継続計画(BCP)に基づいて設置される発電機です。地震や台風による長時間の停電時でも、サーバー、製造ライン、冷暖房、医療設備などの業務・生命維持に必要な設備へ電力を供給し続けることを目的としています。
(2)非常用発電機の構造と仕組み
非常用発電機は、主に「エンジン(原動機)」と「発電機本体」、そして「燃料タンク」「制御盤」で構成されています。
商業電源の停電を検知すると、制御盤が信号を出し、バッテリー(セルモーター)を用いてエンジンを始動させます。エンジンが回転することで発電機が駆動し、作られた電力が建物内の受変電設備を経由して各設備に送られる仕組みです。
どんなに高性能な非常用発電機であっても、エンジンを動かすための「燃料」がなければ一秒たりとも稼働することはできません。そのため、非常用発電機の導入・運用において「燃料をどのように確保・保管するか」は極めて重要なテーマとなります。
2. 非常用発電機の燃料の種類とそれぞれの特徴
非常用発電機で使用される燃料には、液体燃料と気体燃料があり、それぞれエネルギー密度、保管期間、入手性などに違いがあります。代表的な4つの燃料について解説します。
燃料の種類 | 状態 | 消防法上の分類 | 主な特徴・メリット | 課題・注意点 |
|---|---|---|---|---|
軽油 | 液体 | 第4類 第2石油類 | 手に入りやすくエネルギー密度が高い。非常用発電機の主流。 | 消防法による保管制限(1,000L未満で少量危険物)。長期間の放置で劣化する。 |
A重油 | 液体 | 第4類 第3石油類 | 軽油より安価で指定数量が大きく(2,000L)、大規模施設向け。 | 低温時にセロファン状のパラフィンが固まりやすく、寒冷地では対策が必要。 |
LPガス | 気体 | 高圧ガス保安法 | 劣化しにくく長期保管が可能。災害時の復旧も早い。 | 液化ガス容器の設置スペースが必要。ガス漏れ対策が厳重。 |
都市ガス | 気体 | ガス事業法 | タンク不要で無制限供給が可能(配管がつながっている限り)。 | 地震等で地下配管が損傷すると供給がストップするリスクがある。 |
(1)軽油(けいゆ)
メリット: ディーゼルエンジンの汎用性が高く、燃料としてのエネルギー密度が高いため効率的。ガソリンに比べて引火点が高く(50℃以上)、安全性が比較的高い。
留意点: 消防法上の「第4類 第2石油類」に分類され、保管量に応じた規制を受ける。長期間放置すると酸化劣化や水分混入によるカビ・スレッジ(汚泥)の発生が起こるため、定期的な燃料交換やろ過が必要。
(2)A重油(えーじゅうゆ)
メリット: 軽油に比べて単価が安く、大量保管に向いている。消防法上は「第4類 第3石油類」となり、軽油よりも指定数量の基準が大きいため、より多くの量を比較的ゆるい規制で保管できる。
留意点: 低温環境下で燃料中のパラフィン成分が結晶化しやすく、冬場にフィルター詰まりを起こすリスクがある。また、排ガス中の硫黄酸化物(SOx)対策が必要になる場合がある。
(3)LPガス(プロパンガス)
メリット: 燃料が経年劣化を起こしにくく、数年間放置していてもそのまま始動可能。災害時にインフラが遮断されてもバルクハイド(個別容器)から供給できるため、災害に強いエネルギーとして注目されている。
留意点: 保管は消防法ではなく「高圧ガス保安法」の管轄。ガスボンベの設置場所や転倒防止処置など、独自の安全基準を守る必要がある。
(4)都市ガス
メリット: 敷地内に巨大な燃料タンクを置く必要がなく、配管から供給され続ける限り、数日〜数週間にわたる超長期の連続運転が可能。燃料の補充作業も不要。
留意点: 大地震などで地下のガス本管が破損した場合、供給が完全に途絶えるリスクあり。「防災用」としては独立した燃料タンクを持つ軽油・A重油やLPガスが推奨されるケースが多い。
3. 「少量危険物」とは?消防法における危険物の基礎知識
非常用発電機で主流となる「軽油」や「A重油」などの液体燃料を扱うにあたり、避けて通れないのが消防法に基づく危険物規制です。
(1)指定数量(していすうりょう)とは?
消防法では、火災発生の危険性が高い物質を「危険物」と定め、その危険性に応じて保管・取り扱いの基準となる全国一律の数値を定めています。この基準となる数量を「指定数量」と呼びます。
保管する危険物の量が「指定数量」以上になると、法律上の「危険物貯蔵所(危険物屋外タンク貯蔵所など)」として設置許可を取得しなければならず、防油堤の設置、耐火構造の建物、点検資格者の配置、定期点検義務など、非常に厳密でコストのかかる設備投資・管理が求められます。
(2)少量危険物(しょうりょうきけんぶつ)の定義
「指定数量以上の危険物を保管するのはハードルが高すぎる。しかし、災害用に一定量の燃料は備蓄したい」――
この現実的な課題に対応するため設けられているのが「少量危険物」という区分です。
少量危険物とは、「指定数量の5分の1以上、指定数量未満」の範囲の危険物を指します。
指定数量以上: 消防法による厳しい規制(危険物施設としての許可が必要)
指定数量の1/5以上〜指定数量未満: 少量危険物(市町村の火災予防条例に基づく届出が必要)
指定数量の1/5未満: 届出不要(ただし、一般的な安全配慮は必要)
少量危険物の範囲内で保管する場合、都道府県や市町村が定める「火災予防条例」に従い、地元の消防署へ「少量危険物貯蔵・取扱届出書」を提出するだけで設置・運用が可能になります。これにより、安全性を確保しつつ行政手続きや設備施工のハードルを大きく下げることができます。
4. 少量危険物における燃料の管理制限と容量の限界
非常用発電機の燃料タンク(油庫・サービスタンク)を「少量危険物」として運用する場合、保管できる燃料の容量には明確な制限(限界値)が存在します。
(1)軽油とA重油の指定数量と少量危険物の範囲
危険物の種類によって「指定数量」が異なるため、少量危険物として保管できる容量の上限・下限も異なります。
燃料の種類 | 消防法上の分類 | 指定数量 | 少量危険物の範囲(1/5以上〜未満) | 少量危険物としての最大保管容量 |
|---|---|---|---|---|
軽油 | 第4類 第2石油類(非水溶性) | 1,000 L | 200 L 以上 〜 1,000 L 未満 | 1,000 L 未満(実質 990L〜999L程度) |
A重油 | 第4類 第3石油類(非水溶性) | 2,000 L | 400 L 以上 〜 2,000 L 未満 | 2,000 L 未満(実質 1,990L〜1,999L程度) |
軽油の制限制限
軽油の指定数量は「1,000L」です。そのため、軽油を少量危険物として保管する場合の上限は「1,000L未満」となります。1,000Lを超えて保管(あるいはピッタリ1,000Lを保管)した瞬間から「指定数量以上」の扱いになり、完全な危険物貯蔵所としての施設基準が適用されてしまいます。A重油の制限制限
A重油の指定数量は「2,000L」です。したがって、A重油を少量危険物として保管する場合の上限は「2,000L未満」となります。軽油に比べて約2倍の容量を少量危険物の枠内で保管できるため、長時間の連続運転が必要な施設ではA重油仕様の発電機が選ばれる理由の一つとなっています。
(2)「倍数計算」に注意!複数危険物を置く場合
ここで注意しなければならないのが、複数の危険物を同じ敷地内や同じ保管場所で扱う場合の「倍数の通算(倍数計算)」です。
例えば、「軽油500L」と「A重油1,000L」を同時に保管する場合、単純なリットル数の合計(1,500L)だけでは判定できません。それぞれの指定数量に対する割合(倍数)を合算して計算します。
倍数の合計 = (軽油保管量 500L / 軽油指定数量 1,000L) + (A重油保管量 1,000L / A重油指定数量 2,000L) = 0.5 + 0.5 = 1.0この合計倍数が「1.0(1倍)」以上になると、全体として指定数量以上の危険物を貯蔵している扱いになり、少量危険物の枠を超えてしまいます。少量危険物として管理するためには、「すべての危険物の倍数の合計が 0.2以上 1.0未満」におさまっていなければなりません。
5. 少量危険物タンク(油庫)の構造・設備基準と管理ポイント
少量危険物として届出を出すだけで済むとはいっても、火災予防条例に基づく厳格な安全基準・設備要件を満たす必要があります。非常用発電機の油庫や燃料タンクを管理する上で知っておくべき主なポイントは以下の通りです。
(1)タンクおよび周辺設備の基本要件
不燃材料の採用
燃料タンク本体および架台は、十分な強度を持つ鋼板などの不燃材料で製造されている必要があります。防油堤(ぼうゆてい)の設置
万が一、タンクから燃料が漏洩した際に外部へ流出するのを防ぐため、タンク容量以上の液体を受け止められる防油堤(または漏洩防止枠)を周囲に設ける必要があります。通気管(ベントパイプ)の設置
燃料の給油時や使用時にタンク内の圧力が大きく変化するのを防ぐため、先端に網(火花混入防止用)を付けた通気管を設置しなければなりません。油量計(ゲージ)の設置
残量が外から一目でわかる直読式の油量計やフロート式ゲージを設け、給油時のあふれ出しを防止します。標識および掲示板の設置
保管場所には「少量危険物貯蔵・取扱所」である旨を表示した標識と、「火気厳禁」などの注意事項を記載した掲示板を見やすい位置に掲示する必要があります。
(2)運用時の管理・点検事項
少量危険物タンクを安全に運用し続けるためには、日常的なメンテナンスが不可欠です。
燃料の経年劣化対策
非常用発電機は普段動かないため、タンク内の燃料が長期間滞留します。結露による「水の混入」や、空気中の酸素による「酸化劣化」が進行すると、いざという時にエンジンが始動しない原因になります。少なくとも年に1回程度の燃料品質確認や、定期的な抜き替え・ろ過作業が推奨されます。定期的な試運転(点検)
消防法に基づき、非常用発電機は定期的な機器点検・総合点検(無負荷・実負荷運転など)が義務付けられています。試運転を行うことで、燃料配管内のエア噛みやフィルター詰まり、ポンプの不具合を早期に発見できます。漏洩・配管腐食のチェック
タンク底面や地下配管、接続バルブからの油漏れがないかを定期的に目視点検します。特に防油堤内部に雨水が溜まっていると腐食の原因になるため、定期的な水抜き作業(油水分離構造のドレン弁操作)が必要です。
6. まとめ:非常用発電機の燃料管理で失敗しないために
地震や台風などの巨大災害が頻発する現代において、非常用発電機は「施設の安全」と「事業の継続」を支える最重要インフラです。
しかし、燃料の保管容量制限(軽油1,000L未満・A重油2,000L未満の少量危険物規制)や、火災予防条例に基づいた設備管理、定期的な点検業務を正しく理解し運用できなければ、法令違反になるだけでなく、災害時に発電機が動かないという致命的なトラブルを引き起こしかねません。
自社の非常用発電機の燃料タンクは、少量危険物の基準を満たしているか?
BCP対策として、現状の燃料容量で何時間の連続運転が可能なのか?
燃料の劣化対策やタンクの入れ替え、消防署への届出手続きはどうすればいいのか?
このようなお悩みやご不明点をお持ちの方は、専門の電気設備プロフェッショナルへ相談することをお勧めします。

相談は小川電機(株)の電気設備ドットコムチームにお任せください。
【ご質問・お問合せ先】
電気設備.com フリーダイヤル: ☎ 0120-855-086
受付時間: 平日 9:00 〜 17:00
よくある質問
この商品について質問がありますか?コミュニティや専門家に質問してください。
























