
非常用発電機の「動かない」を防ぐために
【非常用発電機の燃料劣化と点検の重要性】 災害時の命綱である非常用発電機、燃料を入れたまま放置していませんか? 実は燃料は経年劣化で酸化し、**「スラッジ(泥状の沈殿物)」**が発生します。これがフィルターを詰まらせ、緊急時に「始動しない」トラブルが多発しています。 確実に稼働させるには、定期的な消耗品交換や、実際に電気を流す負荷試験が不可欠です。「動くはず」という思い込みを捨て、プロによる適切なメンテナンスで万全の備えを整えましょう。 小川電機株式会社 担当:前田(1級電気施工管理技士) フリーダイヤル:0120-855-086(まずはお気軽にご連絡ください)
非常用発電機の「動かない」を防ぐために
~命綱を断ち切る「燃料劣化」と「不適切な点検」の真実~
はじめに:その発電機、本当に「今」動きますか?
近年、地震や大型台風による広域停電が頻発しています。病院、福祉施設、商業ビル、そして工場やオフィスビルにおいて、電力の遮断は単なる不便に留まらず、人命や事業存続に関わる重大なリスクとなります。
そのリスクを回避するために設置されているのが「非常用発電機」です。しかし、衝撃的なデータがあります。 過去の災害時、あるいは消防点検時において、「整備不良により非常用発電機が始動しなかった、あるいはすぐに停止した」事例が不具合全体の約2〜3割にのぼるという報告があるのです。
なぜ、設置しているはずの発電機が動かないのか。 その最大の原因は、**「燃料の経年劣化」と「形骸化したメンテナンス」**にあります。
本コラムでは、見落とされがちな発電機メンテナンスの落とし穴と、有事に確実に機能させるための正しい管理手法について、専門的な視点から徹底解説します。
第1章:見えない脅威「燃料劣化」のメカニズム
多くの非常用発電機は、燃料として「軽油」や「A重油」を使用しています。「燃料タンクに入っているのだから、減らなければずっと使えるだろう」というのは大きな誤解です。燃料は、タンクに入れた瞬間からゆっくりと、しかし確実に劣化(酸化)が始まっています。
1. 酸化とスラッジの発生
燃料は空気中の酸素と触れることで酸化し、重合反応を起こして**「スラッジ」**と呼ばれる泥状の沈殿物を生成します。また、軽油自体に含まれる成分が経年変化し、黒ずんだタール状の物質に変化することもあります。
2. 結露による水分の混入
日本の気候は寒暖差が激しく、多湿です。タンク内の空気が昼夜の温度差で膨張・収縮(呼吸)を繰り返すことで、タンク内壁に結露(水分)が発生します。この水分が燃料に混ざり込むと、タンクの底に溜まり、サビの発生やバクテリア(微生物)の繁殖を招きます。バクテリアの死骸はヘドロ状になり、これもスラッジの一種となります。
3. 致命的なフィルタートラブル
普段、発電機が停止している間、スラッジはタンクの底に沈んでいます。しかし、いざ非常時にエンジンが始動し、燃料ポンプが勢いよく燃料を吸い上げると、タンク底のスラッジが一気に巻き上げられます。 この汚れた燃料がエンジンへ送られると、燃料フィルター(ストレーナー)を瞬時に目詰まりさせます。 結果として、エンジンがかからない、あるいは始動しても数分でガス欠のような状態で停止してしまうのです。これが、災害時に発電機が止まる典型的なパターンです。
一般的に、燃料の推奨保存期間は1〜2年程度と言われていますが、非常用発電機の場合、数年間継ぎ足しだけで交換されていないケースも珍しくありません。これが最大のリスク要因です。
第2章:形骸化した点検と「ウェットスタッキング」の弊害
燃料の問題と並んで深刻なのが、「点検の方法」です。 「毎月試運転をしているから大丈夫」と思われている管理者様も多いですが、その試運転、**「無負荷(アイドリング)」**だけで終わらせていませんか?
1. 無負荷運転が寿命を縮める
エンジンを無負荷(電気を使わない状態)で低回転・低温度で運転し続けると、燃料が完全に燃焼しきれず、燃えカス(カーボン)が発生します。 このカーボンが、排気管やターボチャージャー、シリンダー内部に堆積し、ベタベタした黒い油状の液体となって垂れてくる現象を**「ウェットスタッキング」**と呼びます。
人間で例えるなら、全速力で走れるアスリートに、準備運動だけを延々とさせているようなものです。これでは逆にエンジンの調子を崩し、出力不足や火災の原因となります。
2. 消防法の改正と負荷試験の重要性
こうした背景から、平成30年(2018年)6月に消防法関連の告示が改正されました。 以前は一律に義務付けられていた「実負荷試験」の要件が見直され、現在は以下のいずれかの実施が求められています。
負荷運転: 擬似負荷装置などを使い、定格出力の30%以上の負荷をかけて運転し、カーボンを焼き切る試験。
内部観察等: 分解清掃や内視鏡を用いて、内部のカーボン堆積状況を確認する予防保全策。
つまり、法律上も**「ただエンジンをかけるだけ(無負荷運転)では不十分」**ということが明確化されているのです。定期的にしっかりとした負荷をかけ、エンジン本来の性能を発揮させてカーボンを焼き切る「負荷試験」こそが、発電機の健康を維持する唯一の方法です。
第3章:バッテリーと消耗品管理の落とし穴
燃料、負荷試験に加え、忘れてはならないのが消耗品の管理です。特に「バッテリー(蓄電池)」は、発電機始動トラブルのNo.1原因と言われています。
1. バッテリーの「突然死」
非常用発電機の始動用バッテリーは、鉛蓄電池が主流です。これらは化学反応を利用しているため、使っていなくても経年劣化します。 外観がきれいでも、内部の電極板が腐食していたり、電解液が減少していたりすることがあります。バッテリーには寿命(多くは2年〜5年程度)があり、寿命末期には前触れなく電圧が低下し、いざという時にセルモーターを回せなくなります。 テスターによる電圧測定だけでなく、内部抵抗値の測定など、プロによる診断が必要です。
2. 冷却水(LLC)とエンジンオイル
冷却水: エンジンを冷やすだけでなく、防錆効果も担っています。劣化するとエンジン内部が錆び、ラジエーターの穴あきやオーバーヒートを引き起こします。
エンジンオイル: 車と同様、使わなくても酸化します。潤滑性能が落ちたオイルでの運転は、エンジンの焼き付きリスクを高めます。
第4章:BCP対策としてのメンテナンス
非常用発電機は、単なる「法的義務で置いている設備」ではありません。 停電時に、エレベーターを動かして避難誘導を行う、スプリンクラーや消火栓ポンプを動かして火災を防ぐ、あるいはサーバーや通信機器を維持して事業を継続させるための**「事業継続計画(BCP)の要」**です。
コスト削減のためにメンテナンスを先送りにした結果、災害時に発電機が動かず、甚大な損害賠償問題に発展するリスクも想定されます。 「動かない発電機」は、巨大な金属の塊に過ぎません。
正しいメンテナンスサイクルの確立を
年1回の総合点検: 専門技術者による詳細なチェック。
定期的な負荷試験: スラッジやカーボンの除去、出力性能の確認。
消耗品の計画交換: 燃料、オイル、冷却水、バッテリーの適切な交換サイクル管理。
これらを確実に実施することが、施設利用者様の安全と、貴社の資産を守ることにつながります。
おわりに:電気のプロフェッショナルにご相談ください
非常用発電機のメンテナンスは、電気設備の知識だけでなく、ディーゼルエンジンや燃料化学、そして最新の消防法規に関する深い知識が求められる複合的な分野です。
「うちは大丈夫だろうか?」「長年、燃料を交換した記憶がない」「前回の負荷試験がいつだったかわからない」 少しでも不安を感じられた場合は、専門家の診断を受けることを強くお勧めします。
小川電機株式会社では、1級電気施工管理技士をはじめとする熟練のスタッフが、お客様の設備の状況に合わせた最適なメンテナンスプランをご提案いたします。無理な交換や過剰な工事をお勧めすることはありません。まずは現状を正しく把握することがスタートです。
災害は待ってくれません。平時の今だからこそできる備えを、私たちと一緒に確認しませんか?
【お問い合わせ先】
小川電機株式会社 担当:前田(1級電気施工管理技士)
発電機の事ならあらゆるご相談に対応いたします。 「コラムを読んだ」とお伝えいただければスムーズです。
フリーダイヤル:0120-855-086 (まずはお気軽にご連絡ください。全国対応・御見積無料)

前田 恭宏
前田です
