非常用発電機と常用発電機の違い

非常用発電機は停電や災害時に限定して使用され、短時間の電力供給を目的とします。一方、常用発電機は日常的な使用や長時間運転に対応し、工場や建設現場などで活用されます。目的や稼働時間、法的要件に応じて選定が必要です。非常用はヤンマー、東京電機、ニシハツ、常用はデンヨー、東芝、三菱重工など、用途に特化した信頼性の高いメーカー製品を選ぶことで、安定した電力確保とBCP対策に繋がります。
非常用発電機と常用発電機の違い
~導入前に知っておきたい基本知識とメーカーの特徴~
電力は現代社会の生命線です。工場、ビル、病院、住宅、インフラ——あらゆる場所で安定した電力供給が求められています。しかし、台風や地震といった自然災害や電力供給システムのトラブルにより、電力が途絶えるリスクは常に存在します。そうした「いざ」という時に活躍するのが発電機です。
発電機には大きく分けて「非常用発電機」と「常用発電機」があります。この2つは名前こそ似ていますが、使用目的や性能、設置環境に応じて大きな違いがあります。本コラムでは、両者の違いをわかりやすく解説するとともに、それぞれの代表的なメーカーについてもご紹介します。
非常用発電機とは
役割と目的
非常用発電機は、主に停電や災害時に限定して使用されるバックアップ電源です。通常は稼働せず待機しており、非常時に自動で起動して、建物内の最低限必要な電力(照明、通信設備、医療機器、非常用エレベーターなど)を確保します。電力供給が途絶えた際でも、人命を守り、混乱を防ぐことが主な役割です。
主な用途
病院やクリニックの医療機器用電源
商業施設・ビルの非常階段照明や非常放送設備
工場の安全停止制御装置
マンションのエレベーターや給水設備
公共施設(避難所など)の照明・暖房設備
特徴と技術的側面
自動起動制御:停電を検知すると自動で始動し、数秒で電力供給を開始。
短時間稼働前提:連続稼働はせいぜい24時間以内。長時間使用には不向き。
定期点検必須:ほとんどの時間は待機状態にあるため、月1回以上の定期的な試運転が推奨されています。
法的義務がある場合も:消防法・建築基準法により、一定規模以上の建築物には非常用発電機の設置が義務づけられています。
常用発電機とは
役割と目的
常用発電機は、非常時に限らず日常的に電力を供給することを目的とした発電機です。建設現場やイベント会場、無電化地域など、電力インフラが不安定または存在しない環境で活躍します。また、工場などで電力コスト削減やBCP(事業継続計画)対策の一環として導入されるケースも増えています。
主な用途
建設現場・仮設事務所
電力インフラが未整備な地域のライフライン確保
工場・データセンターの常時運転用
再生可能エネルギーと組み合わせたハイブリッド運用
電力需給調整やピークカット運用
特徴と技術的側面
長時間連続運転が可能:数百時間〜数千時間の運転にも耐えられる構造。
耐久性重視の設計:大型の冷却システムや高耐熱部品を採用。
燃費・排ガス性能が重視される:長時間運転に伴う燃料消費や環境負荷への配慮。
大型・高出力化が進む:高電力需要にも対応可能なモデルが多数。
両者の比較表
項目 | 非常用発電機 | 常用発電機 |
使用目的 | 停電・災害時のバックアップ | 通常時の電源供給・主電源としての利用 |
稼働頻度 | ごくまれ(テスト運転を除く) | 頻繁または常時稼働 |
運転時間 | 数分〜24時間程度 | 数百〜数千時間以上 |
耐久性 | 中(緊急時用) | 高(長時間運転に対応) |
法的義務 | 一部施設に設置義務あり | 任意導入(施設のニーズに応じて) |
燃料効率 | あまり重視されない | 高効率設計が主流 |
設置環境 | 屋内・屋外いずれも可(設置基準あり) | 多くは屋外(防音・耐候設計が必須) |
初期コスト | 比較的安価 | 高価(性能・容量により異なる) |
非常用発電機の代表的メーカー
ヤンマー(YANMAR)
創業100年を超える老舗のエンジンメーカーで、ディーゼル発電機において国内外で高い信頼を誇ります。ヤンマーの非常用発電機は、耐久性と始動性に優れており、病院やオフィスビル、公共施設で広く使用されています。点検やメンテナンスのしやすさにも定評があり、全国にサービス拠点を展開しているのも安心材料です。
東京電機(TDK)
非常用電源装置の専門メーカーとして、主に都市部のビルやマンション向けに製品を提供。小型・省スペース設計や、低騒音仕様の製品が多く、特に住宅密集地での導入実績が豊富です。また、防災設備に特化した製品ラインナップもあり、建物の安全性を高めるパートナーとして選ばれています。
ニシハツ(西日本発電機)
九州を拠点に、地域密着型の発電機メーカーとして実績を積んでいる企業です。災害時には迅速な対応とメンテナンスサービスを提供しており、自治体や中小規模施設の非常用電源として導入が進んでいます。近年では全国展開を強化しており、導入後の保守体制が整っている点が評価されています。
常用発電機の代表的メーカー
デンヨー(Denyo)
常用発電機の代名詞とも言える存在。特に建設現場での可搬型発電機に強く、防音・耐久性能に優れた製品を多数ラインナップしています。高出力モデルから小型軽量タイプまでバリエーションが豊富で、現場の用途やニーズに応じて柔軟に対応可能です。国内はもちろん、アジア諸国や中東・アフリカなど海外への輸出実績も多く、信頼性は世界レベルといえます。
東芝エネルギーシステムズ(Toshiba)
東芝は、特に高出力で信頼性の高い常用発電設備を中心に、社会インフラ・プラント向けの大型発電システムを展開しています。ガスタービン、ディーゼル、再生可能エネルギー連携型のシステムなど、多様なソリューションを持ち、BCP・省エネ・分散型電源のニーズに対応しています。
三菱重工業(MHI)
重工業大手の三菱重工は、世界的にも高性能な発電システムを提供。特に大型常用ディーゼル発電機・ガスエンジン発電設備に強みを持ち、プラント・ビル・自治体などでの採用が進んでいます。耐久性・燃費性能・環境性能を兼ね備えた次世代型の常用発電機を数多くラインナップ。
選び方のポイント
発電機を導入する際は、「何のために使うのか?」を明確にすることが最も重要です。以下のポイントを参考に、自社や施設に最適な選択を行いましょう。
1. 使用目的を明確にする
非常時の安全確保 → 非常用発電機
常時の電力供給やピーク電力対策 → 常用発電機
2. 稼働時間と出力の想定
非常用:数時間〜1日程度、必要最低限の電力でOK
最近は72時間稼働での企業・施設のBCP対策にも活用される。
常用:長時間連続稼働が前提、高出力モデルを検討
3. 設置環境とスペース
屋内設置か屋外設置か、防音対策の必要性、燃料保管場所など
4. 法令・規制の確認
消防法・建築基準法などで設置が義務化されているかの確認が必要
5. メンテナンス体制
導入後の保守契約、点検体制、部品供給の安定性も導入先選定の重要ポイントです
まとめ
非常用発電機と常用発電機は、それぞれ異なる目的と性能を持つ発電設備です。「一度設置すれば安心」ではなく、それぞれの運用環境や用途に応じた適切な選定・設計・メンテナンスが重要です。
非常用発電機には、ヤンマー・東京電機・ニシハツなどの信頼できるメーカーが存在し、常用発電機には高性能で世界的にも評価の高いデンヨーがあります。導入の際には、各社の特長を比較しながら、最も適した製品を選ぶことが成功への鍵となります。
電力の「もしも」に備えて、確実な選択を——それが、あなたの事業や生活を守る第一歩です。

前田 恭宏
練習