キュービクル・非常用発電機の保安管理

キュービクル・非常用発電機の保安管理

25/09/17 10:13

キュービクルと非常用発電機は、停電時に施設の電力を確保する重要設備です。日常・月次・年次の定期点検や記録の整備、燃料・バッテリー管理が不可欠で、非常時に確実に稼働させるためには法令遵守と予防保全が重要です。見えない安心を支える保安管理は、コストではなく事業継続への投資といえます。

【完全版】キュービクル・非常用発電機の保安管理

~ 災害・停電時も止めない施設運用のために ~

■ はじめに

企業や施設の電力インフラにおいて、キュービクル(高圧受電設備)と非常用発電機は、安定したエネルギー供給を支える要です。とくに、電力の停止が生命や経営に直結する病院・商業施設・データセンター・工場・物流拠点などでは、これらの設備の保安管理の質が事業継続性(BCP)の成否を左右します。

しかし、これらの設備は「普段は動いて当たり前」であるがゆえに、点検や保守の重要性が見過ごされがちです。
このコラムでは、法律・運用・技術の3つの視点から、キュービクルおよび非常用発電機の保安管理に必要な知識と実務ポイントを徹底解説します。

■ キュービクル(高圧受電設備)の保安管理

◯ 1. キュービクルとは?

キュービクルとは、高圧(6,600V)の電力を受電し、変圧器で低圧(100/200V)に変換して施設へ供給する設備。構内の配電・保護・計測装置も内蔵され、受電設備の中枢となります。


◯ 2. 保安管理の基本構成

区分

内容

主任技術者

電気主任技術者(外部委託可能)

点検周期

月次・年次(法令に基づく)

法的義務

電気事業法 第38条/保安規程の整備


◯ 3. 主な点検・保守作業

🔹 月次点検(1ヶ月に1回以上)

  • 外観目視(焼損・変色・漏油など)

  • 計器の値確認(電圧・電流・漏電)

  • 異音・異臭の有無(変圧器や遮断器)

  • 通気孔や換気ファンの状態確認

  • 接地抵抗の測定(年数回)

🔹 年次点検(1年に1回以上)

  • 高圧機器の絶縁抵抗測定(メガーテスト)

  • 遮断器(VCB/OCB)の動作試験

  • 継電器(OCR/GRなど)の動作確認

  • 保護装置のトリップテスト

  • 絶縁油の劣化分析(必要に応じて)


◯ 4. トラブル事例と予防対策

トラブル内容

原因

対策

漏電による停電

絶縁劣化・湿気侵入

定期測定・湿度管理

遮断器が動作しない

機械的劣化・スプリング故障

メーカー点検・定期交換

異臭発生(焼損臭など)

コネクタ緩み・過電流

熱画像診断・増し締め

動物侵入による短絡

鳥獣・ネズミの侵入

隙間封鎖・忌避剤の設置


◯ 5. 書類と記録の管理

  • 点検記録(法定3年間保管が望ましい)

  • 設備台帳(製造年、仕様、改修履歴)

  • 絶縁抵抗・接地抵抗の測定履歴

  • 外注業者による作業報告書・写真

■ 非常用発電機の保安管理

◯ 1. 役割と設置目的

非常用発電機は、停電発生時に建物内の重要負荷(照明、ポンプ、医療機器、通信設備など)へ電力を供給します。
特に消防設備(非常照明・排煙ファン等)と連動している場合は、消防法に基づく厳格な点検が必要です。


◯ 2. 主な構成要素

要素

内容例

発電機本体

ディーゼルエンジン/ガス式

燃料系統

軽油・重油・LPGなど

始動系統

バッテリー・スターター

制御盤

自動起動/負荷切替機能

排気系統

消音器・煙突


◯ 3. 点検とメンテナンス

🔹 日常点検(週1~月1目安)

  • 燃料・オイル・冷却水の量確認

  • バッテリーの電圧チェック

  • 自動起動・警報ランプ確認

🔹 月次~年次点検

  • 無負荷運転(アイドル)試験:10分~30分程度

  • 負荷運転試験(年1回以上)
     → 実負荷 or 模擬負荷で実際に稼働能力を検証

  • 燃料劣化・水分混入の有無確認

  • 始動性(1回でかかるか)のチェック

  • 排気の色(黒煙・白煙)による異常検知


◯ 4. 劣化・不具合事例

現象

原因

対策

始動不能

バッテリー上がり・スターター故障

定期交換(3~5年)、充電管理

黒煙が出る

燃料の燃焼不完全・ノズル詰まり

ノズル洗浄、燃焼制御装置の点検

振動・異音

エンジンマウントの緩み・摩耗

締め付け点検、部品交換

オイル漏れ

パッキン劣化・締結部の緩み

定期点検・消耗品交換


◯ 5. 燃料管理の盲点

  • 軽油は長期保存により酸化・水分混入・バクテリア繁殖が発生

  • 3年以上無交換の場合、発電不良や詰まりのリスク大

  • 燃料劣化防止には:

    • 定期撹拌(循環ポンプ)

    • 燃料添加剤の使用

    • 水抜き作業(定期的なドレン排出)

    • 燃料の定期交換(目安:2~3年)


◯ 6. 消防法における点検義務(重要)

  • 消防用設備等点検報告制度により、非常用発電機が連動している場合は、半年~1年ごとに所轄消防署へ点検報告義務あり

  • 非常電源専用受電設備」に該当する場合、より厳しい技術基準が適用される


◯ 7. 操作訓練とマニュアル整備

  • 停電時の復電操作マニュアルの作成・掲示

  • スタッフによる年1回の模擬操作訓練が望ましい

  • 機器ごとに担当者・点検責任者の明確化

■ まとめ:保安管理は“コスト”ではなく“投資”

キュービクル・非常用発電機の保安管理は、単なるメンテナンスコストではなく、企業価値・命・社会信頼を守るための投資です。

こんな兆候があったら危険!

  • 点検記録が半年以上未記入

  • 異音や異臭を「いつものこと」として放置

  • 担当者が誰かわからない/兼務で曖昧

  • 発電機を実際に起動したことがない

保安は「見えない安心」。
いざという時に確実に動作する設備を維持するには、日々の「見える点検」と「記録」が不可欠です。


🔧 参考情報

  • 電気事業法 第38条(保安監督)

  • 消防法 第17条の3の3(設備等の点検報告)

  • JIS規格「キュービクル式受電設備」関連

  • BCP(事業継続計画)ガイドライン(内閣府)


Admin
前田 恭宏
練習

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