
はじめに:その非常用発電機、「いざという時」に本当に動きますか? 地震や大型台風による広域停電が発生した際、ビルのエレベーター停止、消火設備の不作動、データセンターのダウンは、単なる事業停止にとどまらず人命に関わる事故や、甚大な経営損失につながります。 「毎年、法令通りに点検を行っているから大丈夫」と考えていませんか? 実は、東日本大震災の際、設置されていた非常用発電機の約3割(30.4%)が「不作動」または「出力不足等の異常」を起こしていたというデータがあります。 本記事では、企業の設備管理・BCP担当者様向けに、非常用発電機における「法令リスク」「点検の注意点」「72時間稼働を見据えた最新のBCP水準」について詳しく解説します。
企業が非常用発電機を維持・管理する目的は、大きく分けて「法令遵守(消防法・建築基準法)」と「BCP(事業継続計画)」の2点です。
区分 | 主な目的・対象設備 | 不作動時の経営・実務リスク |
消防用設備 (法令義務) | 消火ポンプ、排煙機、非常用照明、誘導灯など(火災時の生命維持) | ・消防法違反による是正命令・ペナルティ ・火災発生時の被害拡大に伴う損害賠償・法的責任 |
防災・建築設備 (法令義務) | 非常用エレベーター、給排水ポンプ、保安照明(二次災害防止) | ・館内孤立、衛生環境悪化による施設利用者の安全欠如 ・企業ブランド・信頼の失墜 |
BCP・保安用 (事業継続) | サーバー・ITインフラ、精密機器ライン、冷却設備(事業機能維持) | ・データ破損・システムダウンによる直接的経済損失 ・取引先への供給停止による契約解除リスク |
非常用発電機は、設置するだけでなく厳格な点検が義務付けられています。なぜなら「停電してから動かないことが判明しても手遅れだから」です。
日常的な点検として行われる「無負荷運転(試運転)」だけでは、エンジン内部に未燃焼のカーボン(煤)が蓄積していきます。
この状態で実際の停電が発生し、100%の負荷がかかると、カーボンが原因で過負荷が起こり、エンジンが停止・破損してしまうケースが多発しています。
こうした教訓を受け、現在の消防法では年1回の総合点検において、定格出力の30%以上の負荷をかけて運転する「負荷試験」または「内部観察点検」が義務付けられています。
ディーゼルエンジン式: 燃費が良くパワフルですが、カーボンが溜まりやすいため定期的な負荷試験が必須です。
ガスタービンエンジン式: 高速回転でコンパクトですが、定期的な部品交換と精密メンテナンスが必要です。
近年、非常用発電機の役割は「消防法を守るための数十分間の稼働」から、「インフラ復旧までの72時間(3日間)を自力で耐えるための設備」へとシフトしています。
なぜ72時間なのか?
巨大地震の発災後、人命救助の最優先期間であり、かつ電力や燃料等の供給インフラが復旧し始めるまでに「最低3日間(72時間)」かかるとされているためです。
データセンターや重要施設の保安
ITインフラやデータセンターでは、一瞬の停電(瞬停)も許されないため、無停電電源装置(UPS)と非常用発電機を連携させ、72時間以上連続で電力を供給し続ける高度な管理システムが標準化されています。
自社の非常用発電機が「いざという時に確実に動く状態か」、以下の項目をチェックしてみてください。
[ ] 設置から15年以上が経過している(主要部品の製造中止・メーカー補修対応終了のリスク)
[ ] 直近1年以内に「負荷試験」または「内部観察点検」を実施していない(無負荷運転のみ)
[ ] 燃料(軽油・重油)の品質管理・交換を行っていない(長期保管による燃料劣化)
[ ] 始動用バッテリーの定期交換(2〜3年周期)を怠っている(不作動原因の第1位はバッテリー切れ)
[ ] 現行の燃料タンク容量で「72時間連続稼働」に対応できない
ひとつでも該当・不安がある場合は、点検体制の見直しや補修・リプレイスの検討をおすすめします。
非常用発電機は、平時には利益を生み出さない設備ですが、有事の際には「企業の資産・人命・事業継続」を一身に背負う最重要インフラです。
事故が起きてからでは遅いからこそ、定期的な法令点検(負荷試験)と適切な予防保全が欠かせません。
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