
“漏電火災警報器(LGR)の役割とHGRとの決定的な違い”
LGR(漏電火災警報器)は、主にキュービクルの低圧回路を監視し、絶縁劣化による火災を未然に防ぐ装置です。漏電検知時に遮断せず「警報」を出すことで、停電による二次被害を避けつつ点検の猶予を与えます。 対して**HGR(高圧絶縁監視装置)**は、高圧回路の地絡を監視し、波及事故防止のため回路を遮断するのが主目的です。火災防止のLGRと、大規模事故を防ぐHGRを併用することで、受変電設備の安全性は保たれます。正確な動作にはZCT(零相変流器)の適切な設置と定期点検が不可欠です。
漏電火災警報器(LGR)の役割とHGRとの決定的な違い
ビルや工場の受変電設備である「キュービクル」の内部で、ひっそりと、しかし極めて重要な任務をこなしている装置があります。それが漏電火災警報器(LGR)です。
電気は現代社会の生命線ですが、ひとたび管理を誤れば、火災や感電といった甚大な被害をもたらす諸刃の剣となります。特に高圧受電設備においては、わずかな絶縁不良が大きな事故につながりかねません。本コラムでは、キュービクルにおけるLGRの機能、そして混同されやすいHGR(高圧絶縁監視装置)との違いについて、技術的・実務的な視点から徹底的に解説します。
1. 漏電火災警報器(LGR)とは何か?
LGRは「Leakage Ground Relay」の略称(一般的に漏電火災警報器を指す呼称)であり、電路の絶縁劣化によって生じる「漏れ電流(地絡電流)」を検出し、火災を未然に防ぐための装置です。
消防法および日本電気技術指針(JEAG)に基づき、一定規模以上の建築物や、ラスモルタル壁を貫通する配線がある場合などに設置が義務付けられています。
キュービクル内での主な機能
キュービクルにおいて、LGRは主に低圧回路(二次側回路)の監視を担います。
漏電の検知: 零相変流器(ZCT)を介して、回路を流れる電流のベクトル和を監視します。正常時は往復の電流が打ち消し合いゼロになりますが、漏電が発生するとバランスが崩れ、零相電流が検出されます。
警報の発報: 検出した漏電電流があらかじめ設定した値(感度電流:一般的には200mA〜400mA程度)を超え、かつ設定時間を経過した場合に、ブザーや表示灯で異常を知らせます。
外部出力: 監視盤や警備会社へ信号を飛ばし、遠隔地での異常把握を可能にします。
2. なぜキュービクルにLGRが必要なのか
キュービクルは高圧(6600V)を低圧(100V/200V)に変圧する場所です。ここでLGRが重要な理由は、「火災の芽を早期に摘む」ことに特化しているからです。
多くの人が「漏電ブレーカー(ELB)があれば十分ではないか」と考えがちですが、工場や商業施設では、漏電ですぐに遮断(停電)してしまうと、生産ラインの停止やエレベーターの閉じ込めなど、二次被害が大きくなるケースがあります。
LGRは「即座に遮断する」のではなく「まずは警報で知らせる」という役割を担うことで、管理者が現場を確認し、計画的に停電・改修を行うための猶予を与えてくれるのです。
3. LGRとHGR:似て非なる二つの監視装置
実務の現場で最も混同されやすいのが、LGR(漏電火災警報器)とHGR(高圧絶縁監視装置)の違いです。これらは監視する対象も目的も大きく異なります。
① HGR(High-voltage Ground Relay / 高圧絶縁監視)
HGRは、その名の通り高圧側(一次側)の絶縁状態を監視します。
監視対象: 6600Vなどの高圧電路。
役割: 高圧ケーブルやトランスの内部絶縁が破壊され、大地に電気が流れる「地絡(じらく)」を検知します。
動作: 軽微な漏電であれば警報を出しますが、大きな地絡事故が発生した場合は、波及事故を防ぐために上位の遮断器(VCB等)をトリップさせ、系統を切り離します。
② LGR(Leakage Ground Relay / 漏電火災警報器)
LGRは、主に変圧器から先の低圧側(二次側)を監視します。
監視対象: 100V/200Vの一般負荷回路。
役割: 負荷機器や末端配線の絶縁劣化による火災防止。
動作: 原則として「警報」のみであり、回路を遮断することはありません(遮断機能付きのタイプも存在しますが、主目的は警報です)。
LGRとHGRの比較表
比較項目 | 漏電火災警報器 (LGR) | 高圧絶縁監視装置 (HGR) |
|---|---|---|
主な監視電圧 | 低圧(100V / 200V) | 高圧(6600V) |
設置場所 | 変圧器二次側の分岐回路など | キュービクル受電部・高圧回路 |
主な目的 | 漏電による火災防止 | 地絡による感電・波及事故防止 |
検出部品 | 分岐用ZCT | 高圧ZCT(MCT)やZPD |
動作後の対応 | 管理者への警報・点検促し | 警報または遮断器のトリップ |
4. 現場で役立つLGRの技術的ポイント
LGRを正しく運用するためには、単なる設置だけでなく、その特性を理解しておく必要があります。
零相変流器(ZCT)の貫通方法
LGRの心臓部であるZCTには、監視したい回路の配線を「全数(接地線を除く)」通す必要があります。
単相2線式なら2本。
三相3線式なら3本。
これを間違えると、負荷をかけた瞬間にLGRが作動してしまう「誤作動」の原因となります。
「I0(アイゼロ)」と「Ior(アイオーアール)」
近年、LGRの進化系として注目されているのがIor方式です。
従来のLGRは、対地静電容量(コンデンサ成分)による漏れ電流も含めて検知してしまうため、PCやLED照明が多い環境では、絶縁が悪くないのに警報が出てしまうことがありました。
I0(零相電流): 実際の漏電(抵抗分)+ 静電容量分の合計。
Ior(抵抗成分漏れ電流): 絶縁不良による純粋な漏電分のみ。
最新の監視装置では、このIorを計測することで、より精度の高い絶縁監視が可能になっています。
5. メンテナンスと法規制の遵守
LGRは「付いているだけ」では意味がありません。消防法では、定期的な点検が義務付けられています。
作動試験: 試験ボタンを押し、実際に受信機や外部へ警報が飛ぶかを確認します。
感度電流の確認: 経年劣化により、設定値通りに反応しなくなることがあります。
ZCTの外観チェック: 割れや湿気による腐食がないかを確認します。
キュービクルの法定点検(月次・年次)において、電気主任技術者はLGRの動作履歴を必ずチェックします。もし頻繁に警報が出ているようであれば、それは大きな火災事故が起こる前の「悲鳴」かもしれません。
6. まとめ:安全な電気利用のために
漏電火災警報器(LGR)は、キュービクルという電気の心臓部において、末端の血管(低圧回路)の異常を察知するセンサーです。
高圧側をガードするHGRが「システム全体の崩壊」を防ぐ盾であるならば、LGRは「身近な火災」を防ぐための番犬と言えるでしょう。両者の役割を正しく理解し、適切な感度設定とメンテナンスを行うことが、施設の安全管理における鉄則です。
「たかが漏電」と侮ることなかれ。LGRが発する警報は、施設を守るための重要なサインです。その仕組みとHGRとの違いを理解しておくことは、電気設備に関わる全ての技術者・管理者にとって必須の知識と言えるでしょう。
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