
古い施設に多い「放水型(水冷式)非常用発電機」は、断水時の脆弱性や維持管理の複雑さから、現在は外部水源が不要な「ラジエーター方式(空冷式)」への移行が進んでいます。既存の放水型はすでに製造終了から長年が経過しており、メーカーの部品供給ストップによる「修理不能リスク」が深刻化しています。また、受注生産のため急な故障から更新完了までには数ヶ月以上の時間を要します。手遅れになる前に、管理を委託している電気主任技術者様と早期に現状を確認し、計画的な更新計画を立てることが重要です。
ビルや工場、商業施設、病院などにおいて、万が一の停電時に機能する「非常用発電機」は、生命と財産を守るための最後の砦です。スプリンクラーや消火設備、避難誘導灯、あるいは重要な製造ラインやサーバーへ電力を供給する極めて重要な役割を担っています。
しかし現在、古い施設を中心に設置されている「放水型(水冷式)非常用発電機」が、深刻な運用危機に直面しているのをご存知でしょうか。
時代の変化に伴い、非常用発電機の主流は「ラジエーター方式(空冷式)」へと完全に移行しています。それに伴い、古い放水型を維持するリスクは年々高まっており、「壊れたら二度と直せない」という臨界点に達している施設も少なくありません。
本コラムでは、放水型を現在も運用されている需要家様に向けて、今起きている危機的な現状と、今すぐ起こすべき対策について解説いたします。
放水型(水冷式)は、発電機を駆動させる大型エンジンを冷却するために、外部の水源(水道水、受水槽、冷却塔など)から常に冷水を供給し、温まった水を外部へ排水・循環させるシステムです。かつては、大型エンジンを効率的に冷やす方式として広く採用されていました。
現在、新築される施設や更新される発電機のほぼ100%が「ラジエーター方式(空冷式)」を採用しています。これは自動車と同じように、本体のファンと冷却水を使って、密閉された回路内で熱を空気中に放出するシステムです。
放水型からラジエーター方式への移行が進んだ背景には、過去の大規模災害から得られた以下の教訓があります。
災害時の断水リスクへの脆弱性
放水型は「外部からの水供給」を前提としています。しかし、大地震の際は電気よりも先に断水することが多く、受水槽が破損することもあります。「停電したから発電機を動かしたいのに、断水のせいでエンジンを冷却できず、数分でオーバーヒートして停止してしまう」という致命的な弱点があるのです。
メンテナンスの複雑さ
放水型は、配管、バルブ、ストレーナー(ろ過器)、給水ポンプなど、多くの附帯設備を必要とします。これらは水垢や錆、冬場の凍結といったトラブルが起きやすく、維持管理に多大なコストと手間がかかります。
外部の水源が遮断されても、燃料とバッテリーさえあれば単体で確実に動き続ける「ラジエーター方式」が、現代の防災基準において必須の存在となったのです。
「今のところ元気に動いているから大丈夫」と考えている需要家様こそ、最も警戒が必要です。現在、放水型を維持している現場では、設備自体の性能以前に市場の構造変化による重大なリスクが顕在化しています。
リスク①:部品供給のストップ(修理不能の現実)
多くの主要メーカーにおいて、古い放水型非常用発電機はすでに製造終了から20年〜30年以上が経過しています。工業製品の補修用部品の保有期間(一般的に10〜15年程度)はとっくに過ぎており、メーカーにおいて専用部品の供給(サポート)が次々とストップしています。
パッキンやホースなどの消耗品すら手に入らない
制御基板や燃料噴射ポンプのメーカー在庫がない
代替部品がないため、修理の受付自体を断られる
日常点検で小さな不具合が見つかっても、部品がないために直せず、その瞬間から「法令違反」や「実質的な無保護状態」になってしまうケースが後を絶ちません。
リスク②:急な故障や更新にかかる「膨大な時間」
「壊れてから買い替えればいい」という考え方は通用しません。非常用発電機は受注生産品であり、家電のように在庫があるものではないからです。万が一、既存の放水型が完全に故障し、更新を余儀なくされた場合、以下の理由から途方もない時間がかかります。
完全受注生産による納期
非常用発電機は、施設の規模に合わせて一台ずつ設計・製造されます。世界的な半導体不足や原材料高騰の影響もあり、発注から製品が出荷されるまでに「6ヶ月から、長いときには1年以上」の納期がかかるケースが常態化しています。
設計・施工の難易度
放水型からラジエーター方式へ変更する場合、機械の入れ替えだけでは済みません。不要になった冷却水配管の撤去、大量の熱風を外部に逃がすための「排風ダクト」の新設、重量や重心の変化に伴うコンクリート基礎の改修など、大がかりな工事が必要です。
もし台風シーズンや冬の大雪の前に発電機が故障してしまったら、次の発電機が稼働するまでの長い期間、施設は「一瞬の停電で機能停止する危険な状態」のまま営業や操業を続けなければならなくなります。
この危機的な状況を回避するために、需要家様が今すぐに行うべきアクションは、手遅れになる前の早期の計画立案です。ここで鍵を握るのが、日頃から施設の電気設備を保安・管理している「電気主任技術者」様の存在です。
電気主任技術者様へのヒアリングと相談
まずは、次回の巡回点検時や打ち合わせの際に、電気主任技術者様や委託しているメンテナンス業者様に対して、以下の点を相談してみてください。
「我が施設の非常用発電機は放水型ですが、もし今壊れたら部品は手に入りますか?」
「メーカーのサポート対応期間は終了していませんか?」
「今の状態から判断して、あと何年くらい耐えられそうですか?」
電気主任技術者様は、现场の設備の劣化具合を最もよく知るプロフェッショナルです。需要家様の側からこのように切り出すことで、現状の正確なリスク洗い出しが一気に進みます。
中長期的な「計画的更新」の予算化
現状のリスクが把握できたら、次は「いつ、どのように予算を確保してラジエーター方式へ更新するか」というスケジュール引きを行います。
突発的な交換(壊れてからの交換):業務停止リスクの発生、特急対応による工事費の高騰、工期の長期化など、デメリットしかありません。
計画的な更新(壊れる前の交換):施設の休館日や工場の稼働が低い時期を狙って工事日を設定でき、コストを抑える交渉も可能です。何より、業務を一切止めることなく、安全に新システムへと移行できます。
電気主任技術者様と密に連携しながら、数年スパンのロードマップを今から立てておくことが、最も賢明な危機管理と言えます。
大規模な停電は「いつ起きてもおかしくない」身近な脅威となっています。そんな中、いざという時に稼働しない非常用発電機を抱え続けることは、施設全体の資産価値を下げ、社会的信用を失うリスクを放置していることと同義です。
部品供給がストップしつつある放水型非常用発電機から、安全・確実に動き、メンテナンス性にも優れたラジエーター方式への更新は、単なる機械の買い替えではありません。企業の事業継続(BCP)を守るための未来への必須の投資です。
「まだ動くから」と先送りにせず、ぜひこの機会に、信頼できる電気主任技術者様とともに、一歩先を見据えた確実な更新計画への一歩を踏み出してください。
電気のスペシャリストが一貫して対応いたします。
小川電機株式会社 担当:前田(1級電気施工管理技士)
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非常用発電機の詳細や選び方に関する情報は、下記特設サイトでもご紹介しています。あわせてご覧ください。
https://www.reformhiyo.com/emergency-generator/
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