
消防予第100号廃止と「第159号」へ――非常用発電機の出力算定が厳格化!
消防庁から「消防予第159号」が発令され、従来の100号通知が廃止されました。これにより「NEGA C201」等に基づく自家発電設備の出力算定が厳格化され、従来の接続負荷容量が変わらない場合でも、更新時に必要な発電機本体の容量が大きくなるケースが増加しています。 本体の大型化に伴い、従来の設置スペースに入らない問題や搬入搬出経路の確保、吸排気設備の増強など、ビルオーナー様の悩みの種となっています。非常用発電機の更新や計算に関するご相談は、小川電機(株)電気設備ドットコムチーム(☎0120-855-086/平日9:00〜17:00)までお気軽にお問い合わせください。
消防予第100号廃止と「第159号」へ――非常用発電機の出力算定が厳格化!ビルオーナーが今知っておくべき設置・更新リスクと対策
ビルや施設を管理するオーナー様や設備管理者様にとって、建物内の「消防用設備」およびそのバックアップを担う「非常用自家発電設備」の維持管理は、法令遵守(コンプライアンス)ならびに防災の観点から極めて重要な責務です。
そうした中、消防庁予防課長より全国の地方消防本部等に向けて、非常用自家発電設備の出力算定に関する新しい通知「消防予第159号」が発令されました。これにより、長年にわたり運用されてきた従来の基準である「昭和63年消防予第100号」は正式に廃止されることとなりました。
今回の改正では、一般社団法人日本内燃力発電設備協会(以下、内発協)が定める技術基準『NEGA C201 自家発電設備の出力算定法』などをベースとした、より厳格かつ現実の挙動に即した出力算定が求められるようになっています。
ここで大きな課題となるのが、「負荷容量(建物側の電気設備機器の容量)は変わっていないのに、更新時には従来よりも大きな容量の発電機を選定しなければならなくなる」というケースが急増する点です。
「単に機器を新品に載せ替えれば済む」と考えていたビルオーナー様にとって、本体容量のアップに伴う室内設置スペースの不足、搬入・搬出経路の確保、さらには吸排気・換気設備の増強など、頭を悩ませる深刻な問題が浮き彫りになってきます。
本記事では、消防予第100号から第159号への改正ポイント、NEGA C201に基づく厳格化の仕組み、更新時に直面する具体的なリスクと対策について、詳しく分かりやすく解説します。

1. 消防予第100号廃止と「消防予第159号」発令の背景
昭和から令和へ:長年使われた「100号通知」の終焉
これまで消防用設備等の非常電源として用いる自家発電設備の容量を計算する際、標準的な指針として用いられてきたのが、昭和63年(1988年)8月1日付の「消防予第100号」(以下、100号通知)でした。
しかし、100号通知の制定から約40年近くが経過し、建築物に設置される電気設備や防災機器の性能、電動機(モーター)の始動方式、発電機・エンジン(原動機)の技術構造は大きく変化しました。過小評価や計算の乖離を防ぎ、大規模災害時にも確実に防災機器(消火ポンプや排煙機等)を動作させるため、時代の技術水準に合わせた見直しが不可欠となったのです。
そこで発令されたのが、令和8年4月16日付の「消防予第159号」(以下、159号通知)です。159号通知の施行に伴い、従来の100号通知は完全に廃止となりました。
2. 消防予第159号・NEGA C201で何が変わったのか?(算定基準の厳格化)
新通知(159号)では、自家発電設備の出力算定において、「発電機(オルタネータ)の出力」と「原動機(エンジン)の出力」をそれぞれ独立して厳密に計算し、両者のバランスを図る「整合率(MR)」による確認が明確に義務付けられました。
具体的には、国土交通省の「建築設備設計基準」や、一般社団法人日本内燃力発電設備協会の『NEGA C201 自家発電設備の出力算定法』等に準拠した詳細計算を行うよう示されています。
算定式の基本構造
発電機出力の算出

G:発電機出力(kVA)
RG:発電機出力係数(kVA/kW)
K:負荷出力合計(kW)原動機出力の算出

E:原動機出力(kW)
RE:原動機出力係数(kW/kW)
K:負荷出力合計(kW)発電機出力と原動機出力の整合率(MR)の確認
算定された発電機出力(G)と原動機出力(E)が、技術的に適切な組み合わせになっているかを次式で評価します。

MR:整合率
cosθ:発電機の定格力率(0.8)
ηg:発電機効率
この整合率(MR)について、159号通知では以下のように定められています。
MR≥1.0 であること(必須条件)
MR<1.0 の場合は、原動機出力を割り増して再計算し、必ず1.0以上にする必要があります。
MR<1.5 であること(推奨条件)
原動機に対して発電機が過大または過小にならないよう、適切な組み合わせ範囲に収めることが望ましいとされています。
何が「厳格化」されたのか?
瞬時電圧降下・瞬時周波数降下の抑制
非常時に消火ポンプなどの大きなモーターが始動する際、一時的に大きな電流(始動電流)が流れます。この瞬間の電圧低下や周波数低下によって他の防災機器が停止しないよう、発電機およびエンジンの余裕度が厳しくチェックされます。高効率モーター・インバータ負荷への対応
近年普及している高効率モーター(IE3等)や、パワー半導体を用いたインバータ機器は、従来の標準モーターとは異なる始動特性や高調波・力率特性を持っています。NEGA C201ではこれらの特性を反映した出力係数(RG, RE)を適用するため、安全側の評価がなされます。整合率チェックによる過小エンジンの排除
発電機(電気側)の容量を満たしていても、エンジン(機械側)の出力が追いつかないような組み合わせ(MR<1.0)が排除される仕組みになりました。
結果として、「つなぐ設備(負荷機器)の合計出力は以前と全く同じなのに、新基準で再計算するとワンランクまたはツーランク上の発電機型式が必要になる」という状況が発生するのです。
3. オーナー様を悩ませる「本体容量アップ」が引き起こす4つの壁
「計算上、非常用発電機の本体容量(kVA/kW)がアップする」――この事態は、単に機器の購入コストが上がるだけにとどまりません。特に既存建物の改修・更新工事において、建物の環境や設備仕様に深刻な影響を及ぼします。
特に室内(地下電気室、屋上発電機機室、中間階の設備スペースなど)に発電機を設置している場合、以下のような実務上の問題が重くのしかかってきます。
【既存設備の更新時に直面する連鎖的課題】
[容量アップ] ➔ ① 機器の寸法・重量が増大
➔ ② 設置スペースの不足(室内設置の約50%以上で設置不能リスク)
➔ ③ 搬入・搬出ルートの閉鎖・高コスト化
➔ ④ 吸排気ダクト・換気ファン等の増強が必要
① 室内設置の場合、50%以上のケースで既存部屋に入らないリスク
既存の発電機室(電気室)は、新築当時の発電機寸法に合わせたギリギリのスペースで設計されていることが少なくありません。
もし今回の厳格化によって発電機の本体サイズが一回り大きくなった場合、室内設置物件の半数以上(50%以上)で「従来の設置スペースに物理的に入らない」または「消防法・建築基準法で定められた離隔距離(メンテナンススペースや保安距離)が確保できない」という事態が懸念されます。
「部屋に入らない」となると、隣接する部屋を潰して壁を撤去する、あるいは屋外の駐車場や空きスペースに増設用キュービクルパッケージとして移設するといった、大規模な建築改修工事が必要になります。
② 搬入・搬出経路(シュートルート)の確保と工事コストの跳ね上がり
既存の非常用発電機を撤去し、新しい発電機を搬入するためには、建物の搬入経路(エレベーター、搬入口、廊下、開口部など)を通過させる必要があります。
発電機本体の容量がアップすると、当然ながら重量と外形寸法が大きくなります。
既存の搬入用エレベーターの耐荷重や寸法を超えてしまう。
廊下や階段の曲がり角を通しきれない。
外壁の搬入口(ガラリや開口部)から入れられない。
最悪の場合、道路を全面通行止めにして大型クレーン車を手配し、建物の壁や屋根の一部を解体して搬入・搬出を行うといった、膨大な仮設工事費用と期間が発生してしまいます。
③ 吸排気設備(ダクト・ガラリ・換気ファン)の増強工事
非常用発電機(ディーゼルエンジンやガスタービンエンジン)は、運転時に膨大な空気(燃焼用空気および冷却用空気)を消費し、大量の熱風と排気ガスを外部に放出します。
エンジンの容量(原動機出力 E)が大きくなると、必要な給気量・排気量も増大します。
吸排気ダクトのサイズアップ:既存のダクト径では容量不足となり、異常過熱(オーバーヒート)を引き起こして発電機が緊急停止する恐れがあります。
外壁ガラリ(開口部)の拡大:十分な空調・風量を確保するため、外壁の開口面積を広げる工事が必要になる場合があります。
換気ファンの容量増強:発電機室の温度上昇を防ぐため、室内の強制換気ファンも大容量のものへ変更しなければなりません。
これらの連鎖的な設備増強工事により、当初想定していた予算を大幅にオーバーしてしまうケースが後を絶ちません。
④ 燃料設備(サービスタンク・地下タンク)の容量見直し
エンジンの出力が上がれば、燃料消費量(軽油やA重油等)も増加します。消防法に基づき「定格負荷で指定時間(例:1時間〜2時間以上)連続運転できる燃料量」を保持する必要があるため、既存の燃料サービスタンクや燃料配管の容量・仕様見直しが求められる場合もあります。
4. 課題解決のためのアプローチ:どう対応すべきか?
算定基準が厳格化されたからといって、無条件に極大化した発電機を導入しなければならないとは限りません。技術的な工夫や見直しによって、本体容量の増大を最小限に抑える(あるいは既存スペースに収める)アプローチが存在します。
アプローチ1:負荷機器の「同時始動」を見直す(逐次投入の検討)
159号通知においても、「2以上の消防用設備等が同時に始動した場合において、逐次5秒以内に消防用設備等に電力を供給できる装置(タイマー制御等)を設けた場合」や、「種別・組み合わせにより同時始動があり得ない場合(例:二酸化炭素消火設備と排煙設備)」については、同時投入時の出力としなくてよいという規定が明記されています。
自動火災報知設備や制御盤側で始動タイミングを数秒ずらす「逐次投入(シーケンス制御)」を導入・設計し直すことで、瞬時始動容量(RG)を抑え、発電機本体の必要容量をワンランク下げられる可能性があります。
アプローチ2:最新の制御技術・高効率発電機の採用
発電機メーカー各社は、NEGA C201に対応しつつもコンパクト化を図ったモデルや、始動時の電圧降下を抑える高機能励磁方式を採用した発電機を開発しています。また、内発協が提供する「自家発電設備の出力算定ソフトウェア」を活用し、緻密なシミュレーションを行うことで、安全性を確保しながら最も無駄のない最適な型式を選定することが可能です。
アプローチ3:現地調査に基づく「分割搬入」や「現地組み立て」の検討
どうしても容量アップが避けられず搬入経路が狭い場合は、発電機ユニットを工場で分割できる構造とし、現場の搬入路を通した後に室内で組み立て・据付を行う「分割搬入工法」などを検討します。
5. まとめ:非常用発電機の更新は「早めの現場調査とプロによる最適計算」が鍵
今回の消防予第159号の発令および100号通知の廃止は、単なる法令の条文変更にとどまらず、ビル・施設の設備更新計画全体に大きな影響を及ぼします。
従来の計算方法で算定された既存の発電機容量は、新基準(NEGA C201等)では不適合(容量不足)と判定されるリスクがある。
容量アップに伴い、「室内に入らない」「搬入できない」「吸排気ダクトが足らない」といった建築・設備上の問題が連鎖的に発生する。
安易な判断で更新計画を進めると、工事直前で莫大な追加費用やスケジュール遅延が発生する恐れがある。
建物の安全を守り、無駄な工事コストを抑えるためには、「現行の負荷設備に対して、新基準(159号通知・NEGA C201)を適用した場合にどのくらいの容量が必要になるのか」を早い段階で正確に試算・把握しておくことが極めて重要です。
このような複雑な出力計算、消防本部との協議、既存建物の搬入ルート・寸法確認、吸排気設備の増強診断については、専門的な知識と豊富な現場実績を持つ電気設備のプロフェッショナルへ相談されることを強くお勧めいたします。
非常用自家発電設備の更新・出力算定のご相談は「小川電機」へ!
「自社の発電機は新基準でどれくらいのサイズになるのだろう?」
「電気室のスペースが狭く、更新できるか不安だ」
「搬入経路や吸排気ダクトの診断を含めて、総合的にアドバイスしてほしい」
このようなお悩みやご不明点をお持ちのビルオーナー様、管理会社様、設計事務所様は、ぜひ小川電機株式会社の「電気設備ドットコムチーム」にご相談ください。
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