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キュービクルの函体に損傷が発生した場合

キュービクルの函体に損傷が発生した場合

25/12/19 08:53

キュービクルは函体・内部機器・構造が一体で設計された設備のため、原則として「函体のみの更新」は不可能である。函体損傷時は更新検討が基本だが、屋根や扉がボルト構造の場合など、条件次第で部分交換や補修が可能な例もある。ただし放置すれば雨水侵入や絶縁劣化、事故リスクが高まり、結果的に費用増につながる。内部機器への影響、設置年数、将来計画を踏まえ、専門業者と電気主任技術者の判断で最適な対応を選ぶことが重要である。

キュービクルの函体に損傷が発生した場合の正しい対処法

―「函体のみ更新したい」は可能なのか?現実的な判断基準と選択肢―

キュービクル式高圧受電設備(以下、キュービクル)は、屋外設置が多い設備であるがゆえに、経年劣化や自然災害、外的衝撃によって「函体(外箱)」が損傷するケースが少なくない。
具体的には、腐食による穴あき、扉の歪み、屋根部からの雨水侵入、フォークリフトなどによる接触事故などが代表例である。

このような状況に直面した際、管理者やオーナーからよく出てくる要望が
「中の機器は問題ないので、函体だけ更新できないか」
という相談である。

しかし結論から述べると、原則としてキュービクルの函体のみを丸ごと更新することは不可能である。
本コラムでは、その理由を明確にしたうえで、例外的に可能な対応策や、現実的な判断ポイントについて詳しく解説する。

1.なぜ「函体のみの更新」は基本的に不可能なのか

キュービクルは単なる箱ではない。
函体・内部機器・母線構造・固定構造が一体として設計・製作された電気設備である。

特に以下の点が、函体単独更新を困難にしている。

(1)内部機器は函体に固定された状態で組み上げられている

高圧受電設備内部には、

  • 高圧受電盤

  • 高圧遮断器

  • 変圧器

  • 低圧配電盤

などが配置されているが、これらは函体に直接ボルト固定、または溶接されたフレーム構造に組み込まれている。
函体だけを取り外すという行為は、中身をすべて一度解体することと同義であり、実質的には「キュービクル更新」と同レベルの作業となる。

(2)耐震・耐候・安全基準を満たせなくなる

キュービクルは製造時点で、

  • 耐震基準

  • 防水・防塵性能

  • 感電・短絡防止構造

を満たすよう設計されている。
函体のみを別途製作・交換した場合、メーカー保証や設計基準の担保ができないため、施工業者・メーカーともに対応不可となるケースがほとんどである。

(3)メーカーが函体単体を供給していない

多くのキュービクルメーカーでは、
函体単体での製作・販売を行っていない
理由は、現場ごとに寸法・構造が異なり、既設機器との整合性を保証できないためである。

2.例外的に可能な「部分的な函体補修・交換」

では、函体に損傷が発生した場合、すべて更新するしかないのかというと、必ずしもそうではない
函体の構造や損傷範囲によっては、部分的な対応が可能なケースも存在する。

(1)屋根部のみ交換可能なタイプ

比較的多いのが、屋根部がボルト固定構造になっているキュービクルである。
このタイプでは、

  • 屋根の腐食

  • 塗装剥離による雨水侵入

  • 積雪・落下物による変形

といった損傷に対し、屋根パネルのみを製作・交換できる場合がある。

ただし条件として、

  • 同一メーカーであること

  • 既設寸法データが残っていること

  • 内部機器に影響が出ていないこと

が前提となる。

(2)扉面(前面・側面扉)の交換

次に多いのが、扉のみの交換や補修である。
扉は可動部であるため、以下のようなケースでは対応可能なことがある。

  • 錆による腐食

  • 歪みによる開閉不良

  • 鍵部破損

この場合、扉パネルを新規製作し、蝶番やロック部を交換することで、安全性を回復できる。
ただし、これも全ての機種で可能ではなく、溶接一体構造の場合は不可となる。

(3)局所的な板金補修・補強

軽微な腐食や小規模な穴あきであれば、

  • 板金補修

  • 防錆処理

  • 再塗装

によって延命措置を取ることも可能である。
ただし、これはあくまで応急・延命対策であり、長期的な安全性を保証するものではない。

3.函体損傷時に取るべき現実的な判断手順

函体に損傷が見つかった場合、以下の流れで判断することが重要である。

  1. 内部機器への影響有無を確認
     → 雨水侵入・錆・絶縁劣化があれば更新検討

  2. メーカー・型式の特定
     → 部分対応可否の判断材料

  3. 部分交換が可能か専門業者に確認

  4. 不可の場合は更新計画を立案

無理に函体のみ更新を試みることは、
安全性低下・保安不備・法令リスクにつながる可能性がある。

4.函体損傷は「更新検討のサイン」

キュービクルの函体は、内部機器を守る「最後の防壁」である。
その函体に明確な損傷が発生しているということは、設備全体が更新時期に近づいているサインとも言える。

  • 函体丸ごとの更新 → 原則不可

  • 屋根・扉など部分対応 → 構造次第で可能

  • 無理な延命 → リスク増大

正しい判断を行うためにも、電気主任技術者やキュービクル専門業者への早期相談が重要である。
安全性・コスト・将来計画を総合的に見据え、最適な対応を選択していきたい。

5.法令・保安面から見た「函体損傷」の位置づけ

キュービクルの函体損傷は、単なる外観不良ではなく、電気事業法および保安規程の観点からも無視できない問題である。

高圧受電設備は、

  • 感電防止

  • 火災防止

  • 電気事故防止

を目的として、**「充電部分が容易に露出しない構造」**であることが求められている。
函体に穴あきや大きな腐食がある場合、たとえ内部機器が正常に動作していたとしても、保安上不適切な状態と判断される可能性が高い。

特に次のようなケースでは、
電気主任技術者から是正指示・改善勧告が出ることもある。

  • 雨水侵入の痕跡がある

  • 扉が確実に施錠できない

  • 小動物侵入の恐れがある

  • 接地不良や錆による導通不良が疑われる

「中が問題ないから大丈夫」という判断は、
保安管理上は通用しない点を認識しておく必要がある。

6.函体損傷を放置した場合に起こり得るリスク

函体の損傷を長期間放置した場合、次のような二次被害が発生する恐れがある。

・内部機器の絶縁劣化

雨水・湿気の侵入により、

  • 高圧機器の絶縁抵抗低下

  • トラッキング現象

  • 地絡事故

などにつながる可能性がある。

・突発停電・事故リスク

腐食が進行すると、

  • 母線支持部の劣化

  • ボルト緩み

  • 遮断器動作不良

といった突発的な停電事故を招く要因となる。

・結果的に更新費用が増大

初期段階で屋根・扉補修で済んだものが、
放置により内部機器更新まで必要となり、
結果的に大幅なコスト増になるケースは非常に多い。

7.費用面の考え方:部分対応と更新の分岐点

現場でよく比較検討されるのが、
「部分補修で延命するか」「更新に踏み切るか」である。

あくまで目安ではあるが、

  • 屋根・扉のみの交換・補修
     → 数十万円~

  • 板金補修+防錆塗装
     → 十数万円~

  • キュービクル更新
     → 数百万円規模

となるケースが一般的である。

ただし、設置後20年以上経過しているキュービクルの場合、
仮に函体補修が可能であっても、
数年以内に内部機器更新が必要になる可能性が高い

そのため、

  • 今後の使用年数

  • 建物の将来計画

  • 受電容量の見直し有無

を踏まえ、トータルコストで判断する視点が重要となる。

8.まとめ補足:函体だけに注目しない判断を

キュービクルの函体損傷は、
「函体だけの問題」に見えがちだが、
実際には設備全体の健全性を見直すきっかけとなる事象である。

  • 函体単独更新は原則不可

  • 一部構造なら部分対応の余地あり

  • 放置はリスクとコスト増につながる

だからこそ、
**「出来るか出来ないか」ではなく、
「今、何が最善か」**という視点で判断することが重要である。

専門業者による現地確認と、
電気主任技術者の意見を踏まえた対応こそが、
安全・安心・合理的なキュービクル管理につながる。

Admin
前田 恭宏
前田です

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