
電気の心臓部「キュービクル」を蝕む塩害、その鉄壁の防衛策を徹底解説。
沿岸部のキュービクル運用において、最大の敵は「塩害」です。対策の要点は以下の3点に集約されます。 まず、海岸線からの距離(1〜2km)に応じ、標準・耐塩・ステンレス等の適切な函体仕様を選定すること。次に、内部の熱を逃がすための通気口が弱点となるため、耐塩フィルター等の軽減策を講じ「100%の遮断は不可能」という前提で備えること。最後に、台風後の水洗いや塗装補修など、徹底した維持管理が寿命を左右します。環境に合わせた最適な防衛策を施し、電気設備の安全を死守しましょう。
潮風の脅威から設備を守り抜け!電気の心臓部「キュービクル」を蝕む塩害、その鉄壁の防衛策を徹底解説。
1. 【境界線】「海から何キロ?」が運命を分ける
塩害対策を考える上で、まず最初に確認すべきは「設置場所が海からどれだけ離れているか」という物理的な距離です。
一般的に、塩害の影響を受ける範囲は**「海岸線から5km以内」**とされていますが、対策のグレードを判断する境界線はより厳しく設定されます。
地域別・距離別の区分目安
多くのメーカーや設計基準では、以下のような区分で仕様を決定します。
区分 | 海岸からの距離(目安) | 状況のイメージ |
一般地 | 2km(または5km)以上 | 塩分の影響がほとんどない地域。 |
塩害地域 | 500m ~ 2km 程度 | 潮風の影響を受けやすく、金属の腐食が進みやすい。 |
重塩害地域 | 500m 以内 | 波しぶきが直接かかる、または常に強い潮風にさらされる。 |
POINT
日本海側や沖縄など、季節風が強い地域では「5km離れていても重塩害並みの対策が必要」とされるケースもあります。まずはハザードマップや過去の近隣設備の腐食状況を確認することが不可欠です。
2. 【函体の防御術】塗装と材質で「鉄」を守り抜く
キュービクルの外箱(函体)は、内部の精密機器を守る最初の砦です。ここが腐食して穴が空けば、内部への塩分侵入を許すことになります。対策は主に「塗装の厚み」と「素材の変更」の2段構えです。
塗装スペックの4段階
標準仕様(一般地向け)
通常のメラミン焼付塗装など。塩害のない内陸部用です。
耐塩塗装(S仕様)
塗膜を厚くし、下地処理を強化。海岸から1km〜2km程度の地域で標準的に採用されます。
重耐塩塗装(DS仕様)
さらに塗り重ね回数を増やし、ピンホール(小さな穴)を徹底排除。波しぶきが想定される過酷な環境用です。
ステンレス(SUS)仕様
塗装ではなく、材質そのものを錆びにくいステンレス(SUS304やSUS316)に変更します。最強の対策ですが、コストも跳ね上がります。
3. 【内部のジレンマ】100%の遮断はなぜ不可能なのか?
「外箱をステンレスにして密閉すれば完璧では?」と考えるかもしれません。しかし、ここには電気設備特有の**「熱問題」**という大きな壁が立ちはだかります。
呼吸を止めるわけにはいかない
キュービクル内部のトランス(変圧器)は、稼働中に熱を発します。この熱がこもると、機器の寿命が縮まったり、最悪の場合は焼損したりします。
そのため、キュービクルには必ず「通気口(ガラリ)」や「換気扇」が必要となり、**「外気を取り込む=塩分を含んだ空気が入る」**という矛盾を抱えることになるのです。
これが、内部の塩害対策が「100%完璧」にはならない理由です。
4. 【攻めの軽減策】侵入を遅らせ、被害を最小化する
100%が無理であっても、知恵を絞ることで「90%」まで防ぐことは可能です。現場で活用される具体的な軽減策を紹介します。
① 耐塩フィルターとガラリの工夫
通気口に**「耐塩フィルター」**を装着します。これは空気を通しながら塩分粒子をキャッチする特殊な不織布です。
メリット: 内部への塩分侵入を劇的に減らせる。
注意点: フィルターが詰まると内部温度が上昇するため、定期的な清掃・交換が必須です。
② 内部機器のコーティング
万が一、塩分が侵入しても電気的なショートを起こさないよう、内部のブスバー(導体)や端子部に絶縁キャップを被せたり、基板に防湿・耐塩コーティングを施したりします。
③ 空調管理(エアコンの導入)
非常に重要な設備の場合、ガラリによる自然換気を廃止し、**「密閉+空調機(エアコン)」**という構成を取ることがあります。外気を直接入れずに冷却するため、最も効果的な塩害対策となります。
5. 【長期運用の肝】メンテナンスこそが最大の対策
どれだけ高級な重耐塩塗装を施しても、経年劣化は避けられません。塩害地域におけるメンテナンスのポイントは以下の通りです。
「水洗い」の励行
台風の後や定期点検時に、函体に付着した塩分を真水で洗い流すだけで、塗装の寿命は驚くほど延びます。
微細な傷の見逃し厳禁
ボルトの頭や扉のヒンジなど、塗装が剥げやすい箇所から錆は始まります。見つけ次第、タッチアップペイントで補修することが鉄則です。
パッキンのチェック
扉のゴムパッキンが劣化すると、そこから雨水と一緒に塩分が入り込みます。「弾力があるか」の確認を怠らないでください。
まとめ:環境に応じた「最適解」を選び抜く
キュービクルの塩害対策は、単にお金をかければ良いというものではありません。
設置場所の環境(距離・風向き)を正しく評価する
予算と維持管理の手間(フィルター清掃など)のバランスを考える
「いつかは腐食する」という前提で、早期発見・早期補修の体制を作る
これらの要素を組み合わせることで、過酷な沿岸部でも安定した電力供給を維持することが可能になります。あなたの現場に最適な「防護壁」を築きましょう。
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前田 恭宏
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