
ビルや工場の電気設備を運用する上で、欠かすことのできない「高圧ケーブル」。高圧受電設備(キュービクル等)の新設・改修時や、経年劣化による更新作業において、「E-EタイプとE-Tタイプのどちらを選ぶべきか?」とお悩みの方も多いのではないでしょうか。 仕様の選定ミスは、施工性の悪化だけでなく、将来的な停電事故(水トリー現象など)のリスクにもつながります。 本記事では、高圧ケーブルの基本知識から「E-E」「E-T」構造の違い、適切な選定基準、そして事故を未然に防ぐための更新時期・点検ポイントまで分かりやすく解説します。
一般的に民間ビルや工場などで広く使われている高圧ケーブルは、「6000V 架橋ポリエチレン絶縁ビニルシースケーブル(CVケーブル)」です。
高圧ケーブルは、単に導体を絶縁体で覆っているだけでなく、電界(電気の力場)を均一にして絶緑破壊を防ぐために、以下のような多層構造になっています。
導体(銅・アルミ):電気を流す中心部
内部半導電層:導体表面の電界を平滑化する層
絶縁体(架橋ポリエチレン):高い絶縁性能を持つ中心層
外部半導電層:絶縁体表面の電界を均一にし、シールド(遮蔽層)へ電界を逃がす層
遮蔽銅テープ(シールド):漏れ電流の検知や地絡事故時の保護用
シース(外装被覆):外部からの衝撃や水分を防ぐ保護外被
この構造のうち、「内部半導電層」「絶縁体」「外部半導電層」の3層をどのように製造しているかによって、「E-Eタイプ」と「E-Tタイプ」に分かれます。
ケーブル名に付く「E」はExtruded(押出式)、「T」はTape(テープ式)を意味しています。
内部半導電層・絶縁体・外部半導電層の3つの層を、押出成形によって同時に一体化して製造するタイプです。
構造の特徴:3層間に隙間(ボイド)や突起ができにくく、非常に高い密着性を誇ります。
メリット:耐水トリー性(水分による絶縁劣化を防ぐ性能)に極めて優れており、水気のある環境でも長寿命です。
デメリット:外部半導電層が固く密着しているため、端部を剥ぎ取る「端末処理作業」に専用の治具(ストリッパー等)や熟練の技術が必要です。
内部半導電層と絶縁体を同時押し出しし、その外側の外部半導電層には半導電性テープを巻き付けるタイプです。
構造の特徴:外部半導電層がテープ構造のため、簡単に剥がすことができます。
メリット:端末処理が非常に容易で、施工時間を短縮できます。現場施工の手間を減らせるためコストメリットがあります。
デメリット:E-Eタイプに比べると、浸水環境下での水トリー耐性がやや劣ります。
どちらのタイプを採用すべきかは、「敷設環境(水分・湿気)」と「現場の重要度」によって決まります。
地下配線・屋外管路・ハンドホール内(常に雨水や湧水にさらされる場所)
電力会社線・鉄道・インフラ施設(高信頼性が要求され、停電事故が許されない場所)
河川近くや海沿い、湿度の高い工場内
完全な屋内配線(ピット内や乾燥したパイプシャフト等)
民間ビルの一般的な屋内キュービクル間配線
施工性を重視し、工期短縮や工費削減を図りたい場合
💡 ポイント 現在のトレンドとして、水気による劣化事故を防ぐ観点から、屋外や地中配線が含まれる場合はE-Eタイプ(さらには防水層を追加したE-E/水密型など)を選択するのが推奨されています。
高圧ケーブルは見た目に大きな変化がなくても、経年劣化が進みます。適切な時期に更新(交換)を行わないと、「波及事故(自社の停電だけでなく近隣一帯を巻き込む大規模停電)」を引き起こし、多額の損害賠償が発生するリスクがあります。
日本電線工業会(JCW)等の基準において、高圧CVケーブルの推奨更新時期は以下の通り定められています。
水気のある環境(屋外・地中管路等):約15年〜20年
乾燥した屋内環境:約20年〜25年
※特に設置から20年以上経過しているE-Tタイプや、水没実績のあるハンドホール内のケーブルは、一刻も早い精密診断・更新検討が必要です。
高圧ケーブルの事故を未然に防ぐためには、定期的な「自主点検」と法的な「法定点検(年次点検等)」が欠かせません。
絶縁抵抗測定(メガー測定) 日常点検で行われる基本的な測定です。著しく抵抗値が低下している場合は、速やかな更新が必要です。
直流漏れ電流試験 高圧ケーブルの劣化(水トリーなど)を詳細に検知するための精密診断です。直流高電圧を印加し、漏れ電流の挙動を観測して静電容量や劣化度合いを診断します。
外観点検 端末処理部からの油漏れや変形、シース(外被)の割れ、水没の有無を目視確認します。
高圧ケーブルの「E-Eタイプ」と「E-Tタイプ」は、それぞれの特徴(耐水性・施工性)を理解して適切な場所に使用することが重要です。
湿気や水気のある場所、重要設備 ➔ E-Eタイプ
乾燥した屋内、施工性を重視する場所 ➔ E-Tタイプ
また、ケーブルの寿命は15〜20年程度です。「設置してから20年以上経過している」「過去に浸水したことがある」といった場合は、波及事故を起こす前に電気主任技術者や電気工事会社へ相談し、更新計画を立てることをおすすめします。
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