
『迫る!低濃度PCB処理期限』
かつて「夢の化学物質」とされたPCBは、現在その毒性から法令による早急な処分が義務付けられています。特に、変圧器やコンデンサー等に含まれる「低濃度PCB廃棄物」の処分期限は、令和9年(2027年)3月31日と目前に迫っています。 期限を過ぎると事実上処分ができなくなる恐れがあるため、古い電気機器をお持ちの事業者は、早急に銘板を確認し、分析・届出を行う必要があります。
情報コラム:『迫る!低濃度PCB処理期限』
はじめに
かつて、その優れた電気絶縁性や不燃性から「夢の化学物質」と謳われ、日本の高度経済成長を支えた物質がありました。それがPCB(ポリ塩化ビフェニル)です 。しかし、その後の科学的知見の蓄積により、PCBは極めて毒性が強く、自然界で分解されにくい「負の遺産」であることが明らかとなりました 。現在、日本国内ではPCB廃棄物の完全処理を目指し、法律に基づいた厳しい処分期限が設定されています 。特に、見落とされがちな「低濃度PCB廃棄物」の処分期限が令和9年(2027年)3月31日に迫っています 。本コラムでは、事業者の皆様が今すぐ取り組むべき調査と処分のステップについて、詳しく解説します。
1. PCBとは何か?なぜ処分が必要なのか
PCB(Poly Chlorinated Biphenyl:ポリ塩化ビフェニル)は、人工的に合成された、主に油状の化学物質です 。
特徴: 水に溶けにくく、沸点が高い、熱で分解しにくい、不燃性、電気絶縁性が高いといった化学的に安定な性質を持ちます 。
用途: かつては変圧器やコンデンサーの絶縁油、熱交換器の熱媒体、ノンカーボン紙など、多岐にわたる用途で使用されていました 。
しかし、1968年に発生した「カネミ油症事件」を契機に、その健康被害が深刻な社会問題となりました 。PCBは脂肪に溶けやすく、慢性的に摂取すると体内に蓄積し、吹き出物、色素沈着、全身倦怠感、しびれ、食欲不振など多岐にわたる症状を引き起こします 。このため、日本では1972年以降、製造・輸入が禁止されています 。
2. 「低濃度PCB廃棄物」とは
PCB廃棄物には、PCBが主成分として使用された「高濃度PCB廃棄物」と、製造過程での混入や絶縁油の入れ替えによって微量のPCBが含まれてしまった「低濃度PCB廃棄物」の2種類があります 。
定義: PCB濃度が0.5mg/kg(ppm)を超え、5,000mg/kg以下のものが低濃度PCBに該当します 。
汚染の原因: 国内メーカーが平成2年(1990年)頃までに製造した電気機器の絶縁油には、意図せずPCBが混入している可能性があります 。
3. 迫りくる処分期限:令和9年3月31日
低濃度PCB廃棄物の処分期限は、令和9年(2027年)3月31日までと定められています 。 この期限までに、調査、分析、届出、そして実際の無害化処理をすべて完了させる必要があります 。期限を過ぎると法令違反となるだけでなく、処理施設の受け入れが終了し、事実上処分ができなくなるリスクがあります 。
4. あなたの施設は大丈夫?調査対象となる電気機器
「うちは関係ない」と思い込んでいませんか?低濃度PCBは、以下のような身近な設備に潜んでいる可能性があります 。
自家用電気工作物(高圧受電設備など)
ビルや工場で6,600V以上の電気を受電している場合、キュービクル(金属製の箱)の中に設置された以下の機器が対象です 。
変圧器(トランス)
電力用コンデンサー
計器用変成器、リアクトル、放電コイル、電圧調整器、整流器、開閉器、遮断器、中性点抵抗器、避雷器、OFケーブル
非自家用電気工作物(低圧機器)
一般家庭や小規模店舗でも、以下のような古い設備に低圧コンデンサーが内蔵されている場合があります 。
X線発生装置、X線検査装置
電気溶接機(側面や内部に取り付けられたコンデンサー)
エレベーター、エスカレーターの昇降機駆動装置
揚水ポンプ、乾燥機、業務用冷凍機、コンプレッサー、分電盤
5. 判別方法:銘板を確認しましょう
まずは、機器に貼られている「銘板(めいばん)」を確認し、製造年を確認してください 。
変圧器等(絶縁油採取可能機器): 平成5年(1993年)以前に製造されたものは、PCB汚染の可能性があります 。
※富士電機製の一部機器については、平成6年までに出荷されたものに汚染の可能性が残るとされています 。
コンデンサー(絶縁油封じ切り機器): 平成2年(1990年)以前に製造されたものは、PCB汚染の可能性があります 。
※ニチコン製、および東芝製の高圧コンデンサーは、平成3年以降のものでもPCB汚染の報告や可能性があるため、注意が必要です 。
注意: 使用中の機器の銘板を確認する際は、感電の危険があるため、必ず保守点検を行っている電気主任技術者や電気工事業者に依頼してください 。
6. 調査から処分までの手順
有無の確認: 銘板情報から製造年を確認します 。
PCB濃度の測定(分析):
変圧器などの油が抜ける機器は、絶縁油を採取して分析機関で測定します 。
コンデンサーなどの封じ切り機器は、使用中は分析できないため、製造年で判断し、廃止後に分析するか、低濃度PCB廃棄物とみなして処分します 。
届出:
PCB含有が判明した場合、使用中の機器は産業保安監督部へ、廃止後の廃棄物は各自治体へ届出が必要です 。
適正保管: 処分するまでは、特別管理産業廃棄物管理責任者を置き、飛散・流出防止措置を講じた場所で保管しなければなりません 。
処分委託: 環境大臣の認定を受けた無害化処理事業者、または自治体長の許可を受けた業者に委託します 。
7. 支援制度の活用
令和7年(2025年)4月1日から、中小企業や個人事業主を対象とした新たな助成制度が開始される予定です 。高額になりがちな処理費用の負担を軽減するため、積極的に活用を検討してください 。
【結びに代えて】
「まだあと1年半以上ある」と考えるのは危険です。調査から分析、そして処理業者の予約・運搬調整には、予想以上に時間がかかります 。処分期限直前には処理施設が混み合い、期限内の処分が困難になることも予想されます。身近なところに潜むPCBという「負の遺産」を次世代に残さないために、今すぐ施設内の点検と専門家への相談を始めてください 。
お問い合わせ・ご相談窓口
小川電機株式会社 担当:前田(1級電気施工管理技士) フリーダイヤル:0120-855-086 受付時間:平日 9:00〜17:00
前田 恭宏
前田です
