
キュービクルの納期は今どの様になっているか!
2026年4月から変圧器へ第三次トップランナー基準が適用され、従来品の受注は2025年内に多くが停止、2026年以降は新基準品のみ使用となる。一方、古いキュービクルに含まれる低濃度PCBは2027年3月末までに処分が必須で、更新需要が急増。これらが重なる2026~2027年は製造キャパ逼迫でキュービクルの納期遅延が懸念される。事業者は早期の設備調査、PCB分析、設置スペース確認、設計・発注の前倒しが必須で、複数メーカーとの連携や補助金活用がリスク回避の鍵となる。
キュービクルの納期は今どの様になっているか!
はじめに:なぜ「今、キュービクルの納期」が注目されるのか
近年、ビルや工場などで使われる高圧受変電設備、いわゆる「キュービクル」に関して、供給タイミングや入れ替え時期に関してこれまで以上に注目が集まっています。その背景には大きく、以下の2つの制度および法令期限があります。
第三次トップランナー基準の導入 — 2026年4月以降に変圧器の省エネ(エネルギー効率)基準が強化される。
低濃度PCB機器の処分期限 — PCB含有の古い受変電設備は、2027年3月31日までに処分または処分委託契約を締結する必要がある。
これらの制度変更や期限が近づいているため、キュービクルの更新・設置計画やその納期確保が、事業者にとって大きな課題となっているのです。
本コラムでは、まずこれらの制度・法令の概要を整理し、そのうえで 「現在(2025年末時点)のキュービクル納期状況」 と、 「2026年4月以降に想定される納期・供給の変化」 を展望します。
キー制度/法令の整理
第三次トップランナー基準とは
「トップランナー制度」は、家電や機器などの省エネ化を促進する仕組みで、省エネ法(エネルギーの使用の合理化等に関する法律)に基づきます。機器のうち省エネ効果が大きいものを「特定機器」と指定し、その中で最もエネルギー効率が高い「トップランナー」を基準値とし、メーカー全体の平均がその基準を上回らないよう義務付けるものです。
変圧器(トランス)は、この特定機器のひとつです。これまでは「トップランナー変圧器 2014」という第二次基準が適用されてきましたが、2023年10月27日に「第三次判断基準」が公示され、2026年度(令和8年度)から適用されることとなりました。
新基準の主なポイントは以下の通りです:
エネルギー消費効率の目標値を「区分ごとの加重平均」で義務化。
標準仕様の油入変圧器、モールド変圧器ともに対象(従来と変わらず)
新基準では、平均で 約 14.2% のエネルギー効率改善が求められる。
これに伴い、変圧器メーカーは 2026年4月以降、現行品(トップランナー2014)を出荷できなくなり、すべて新基準品 (“2026トップランナー変圧器”) に切り替える必要があります。 JEMA 一般社団法人 日本電機工業会+1
多くのメーカーがすでに新基準対応品を発表しており、たとえば富士電機や日立産機システム、東芝などが 2025年夏から順次販売を始めています。
PCB特別措置法と低濃度PCBの処分期限
一方、もうひとつの大きな制度的課題が PCB(ポリ塩化ビフェニル) です。かつて変圧器やコンデンサの絶縁油として広く使われた PCB は、環境や健康への影響が問題となり、1974年までに製造・使用が原則禁止されました。 経済産業省+1
その後、2001年に制定された「PCB特別措置法」によって、既存の PCB 含有機器については廃棄・無害化処理が義務付けられました。低濃度(絶縁油中PCB 0.5mg/kg を超えるもの)は、令和9年(2027年)3月31日 を処分期限とする制限があります。 環境省ポリシー+2環境省ポリシー+2
したがって、古いキュービクル(とくに1990年代以前に製造されたもの)が低濃度PCBを含んでいた場合、2027年3月末までの処分または処分委託契約の締結が必要です。これを怠ると、法律違反となるリスクがあります。
現状(2025年末時点)のキュービクル納期と供給状況
受注・出荷停止のタイミング
多くの変圧器/キュービクルメーカーは、新基準への移行に向けて準備を進めており、次のようなスケジュール感で動いています。
受注停止:多くのメーカーが 2025年7月末ごろ をもって、従来品(トップランナー 2014)の受注を終了。
出荷終了:従来品を搭載したキュービクルは 2026年3月31日 までの納品が最終とされる。
つまり、2026年4月以降に新たにキュービクルを導入・設置する場合は、原則として新基準対応の「2026 トップランナー対応キュービクル」を使うことになります。
このスケジュールのため、現在(2025年末)の時点から逆算して発注しないと、2026年以降は納期が大幅に遅れる、あるいは価格高騰や設置スペースの再検討が必要になる可能性があります。
なぜ「今、発注」が多いのか
現在、多くの現場で「駆け込み発注」が起きています。その背景には主に以下の理由があります。
新基準対応品のサイズ・重量増、筐体の変更
新しい「2026 トップランナー変圧器」は、従来品よりも本体の寸法や重量が増加する傾向にあります。これにより、キュービクル本体の箱型筐体の設計が変わり、盤面数(箱の数)が増える、あるいは基礎の延長や補強が必要になるケースが多いようです。設置スペースの確保や既設構造との整合性の問題
特に屋内キュービクルや屋上設置型では、既設の設備スペースや屋上の重量制限、基礎構造などの制約があり、新型の筐体が収まらない可能性があります。これは設置計画を根底から見直す必要性を生じ、建物の躯体からの設計が必要となります。受注停止・生産キャパシティの問題
今では100%の会社で受注が締め切られており、新基準対応品への切替えと同時に供給量のひっ迫が起きています。これにより、納期が見えにくくなっています。特に、変圧器を含む大型設備は納期が後ろ倒しになる懸念が報告されています。 2025年11月現在では小・中型キュービクルの納期は7か月~12か月とされています。低濃度PCB対応の駆け込み
さらに、PCB問題を抱えるキュービクルでは、2027年3月末の処分期限が迫っており、低濃度PCB含有の可能性がある古いキュービクルの更新・置き換えをいまのうちに済ませようという動きがあります。これも発注が集中する一因です。
その結果、2025年–2026年にかけて、キュービクルの受注および出荷が混雑し、納期が長期化する状況が各所で顕著化しています。
2026年4月以降の展望:何が起こるか
では、2026年4月以降、状況はどうなりそうでしょうか。
新規のキュービクル設置は「新基準+混雑」へ
2026年4月以降、トップランナー第三次基準への完全移行。メーカーは現行品の出荷ができないため、新たにキュービクルを導入するユーザーはすべて新基準対応のキュービクルを選ぶことになります。
しかし、変圧器の設計・製造・試験能力には限界があり、多くのメーカーで製造枠がひっ迫する可能性があります。実際、業界団体の検討会でも、「 2026〜2028年に納期が逼迫し、一部の需要に対応できない可能性がある」 との懸念が出されています。 経済産業省+1
特に、カスタム仕様、大容量、騒音対策や地震対策、耐塩害仕様など、標準仕様から逸脱した特注タイプでは、納期がさらに先送りされる可能性が高いと見られます。
つまり、2026年4月以降は「新基準対応キュービクルしか選べないが、納期は長め。発注は早めに」が基本となるでしょう。
PCB 期限切れへの対応と置き換え需要のピーク
2027年3月末の 低濃度PCB処分期限が差し迫る中、古いキュービクルを使っているビルや工場では、更新・置き換えの必要性が強まります。
この更新需要と、トップランナー新基準への切り替えによる供給混雑が重なれば、2026〜2027年にかけてキュービクル交換のピークが訪れる可能性があります。事実、経産省の検討会でも「このピーク期に対応できない製造キャパでは不足が起きる」「納期遅延で電力供給が止まるリスク」について言及があります。 経済産業省
また、設置場所や既存インフラの制約から、新品キュービクルが収まらない、搬入できないといったトラブルの可能性も無視できません。
現在管理して頂いている主任技術者様が既設キュービクルの更新をされない場合は管理業務を辞退すると言われているケースもあり、オーナーとしてはキュービクルの更新を急がれている事も要因です。
結果として、2027年3月を期限とするPCB問題の「駆け込み更新」と、第三次トップランナー切替に伴う「供給ひっ迫」が同時進行するわけで、まさに “キュービクルの納期が最もタイトになる期間” と言えるでしょう。
事業者(ビルオーナー、工場、施設管理者)が取るべき対応
このような状況に直面している事業者(ビルオーナー、工場管理者、電気設備管理者など)は、今のうちから緊急かつ戦略的に以下のような対応を検討すべきです:
早めの設備調査・PCB分析
古いキュービクルを使っている場合、まずは絶縁油の採油・PCB分析を早急に実施。低濃度PCBの有無を確認し、処分が必要かどうかを判断する。万が一残っていた場合でも、2027年3月末までには処分委託契約を締結。 環境省ポリシー+1発注/更新計画の前倒し
新設あるいは更新の予定がある場合は、少なくとも 2025年中(できれば年内)に見積もりと仕様確定を済ませ、受注停止に巻き込まれないよう発注を前倒し。特にカスタム仕様が必要な場合は早めに動くこと。設置スペースの確認と設計見直し
新基準の変圧器はサイズ・重量が増すため、既存のキュービクル場所への収まりや搬入経路、基礎の強度などを今一度チェック。場合によっては、電気室の増設、屋上改修、基礎補強など大がかりな施工が必要になる可能性がある。複数メーカー・業者との早期連携
変圧器メーカー、キュービクル販売元、施工会社、電気保安協会など複数の関係者との連携が不可欠。早めにスケジュール調整を行い、納期・設置日の確定を抑える。
まとめ:なぜ「今こそ動かなければならない」のか
制度の切り替え(第三次トップランナー基準)は避けられず、2026年4月以降はすべて新基準対応キュービクルしか選べない。
PCBの最終処分期限(2027年3月末)は法的な義務。期限を過ぎれば違法保管となる。
これらが重なることで、2026〜2027年はキュービクルの更新・設置需要の最も大きなピークになる可能性。しかも、製造キャパも限られるため、 納期遅延、価格高騰、設置トラブル といったリスクが高まる。
したがって、現時点から 調査 → 設計 → 発注 → 更新 の流れを前倒しで進めることが、むしろ安全でありコストリスクも抑える最善策なのです。
これからキュービクルを導入したり更新を計画している事業者にとって、「ゆっくり考えてから注文すればいいや」というアプローチは、むしろ 最も危険 であると言えます。今のうちに行動を起こすことが、トラブルを避け、かつコストや安全性を確保するための鍵です。

前田 恭宏
前田です
