
工場設備やポンプ、送風機、コンプレッサーなどの動力設備には欠かせない保護機器の一つが「サーマルリレー(熱動継電器)」です。電気工事や制御盤製作に携わる方であれば一度は目にしたことがあるでしょう。 しかし、「サーマルリレーは何のために付いているのか」「ブレーカーとの違いは何か」「本当に必要なのか」と疑問に思う方も少なくありません。 本記事では、サーマルリレーの仕組みや役割、必要性、選定方法まで詳しく解説します。
サーマルリレーは、モーターに過大な電流(過負荷)が流れた際に回路を遮断し、モーターを焼損や故障から守る重要な保護機器です。正式には「熱動継電器(Thermal Overload Relay)」と呼ばれています。
多くはバイメタル方式(熱膨張率の異なる金属を貼り合わせた部品)が採用されています。
モーターに電流が流れると内部ヒーターが発熱し、バイメタルが変形。
変形が一定値を超えると接点が動作し、電磁接触器をオフにしてモーターを停止。
モーターに電流が流れる
サーマルリレー内部のヒーターが発熱
バイメタルが加熱・変形
設定値以上で接点動作
電磁接触器オフ
モーター停止
過負荷による温度上昇を電流値から間接的に判断し、防護する仕組みです。
モーター焼損防止
負荷の異物詰まりや過積載などによるモーター焼損を防ぎます。
設備損害の防止
モーター故障による修理や交換など、多大な設備損害を未然に防ぎます。
異常負荷の早期発見
頻繁なリレー動作は、軸受摩耗・ベルト張力異常・ファン詰まり・ポンプ閉塞など、設備側の異常発見に役立ちます。
機器 | 主な保護目的 | 作動タイミング |
|---|---|---|
サーマルリレー | 過負荷・長時間過電流・拘束状態 | ある程度の時間継続した場合に作動 |
配線用遮断器(ブレーカー) | 短絡(ショート)・地絡・大電流事故 | 瞬時に作動 |
ブレーカーでは過負荷運転によるモーター焼損を防ぐことはできないため、両者を併用することが必要です。
ポンプ(給水・排水等)
送風機(空調・換気設備)
コンプレッサー
コンベア
工作機械
これらは過負荷が発生しやすいため、サーマルリレーによる保護が一般的です。
三相モーターで一相だけ断線した場合(二相通電)、残りの線に過大な電流が流れます。最近のサーマルリレーは欠相保護機能付きが多く、モーターの焼損リスクを大幅に低減できます。
モーター出力と定格電流値を確認
対応するサーマルリレーの設定範囲品を選定
モーター銘板記載の定格電流に設定
設定例:
モーター定格電流 5.8A → サーマルリレー設定値 5.8〜6.0A
過度な高設定は保護不十分、逆に低すぎると正常動作でもトリップしやすくなります。
必ずメーカー推奨値に従いましょう。
方式 | メリット | デメリット |
|---|---|---|
バイメタル式 | 安価/構造が単純/信頼性高 | 周囲温度の影響/設定精度が低い |
電子式 | 高精度/データ管理/多機能 | 価格が高い/電子回路必須 |
高精度やインバーター制御設備には電子式の採用も増えています。
設定電流値
接点の状態
焼損や変色の有無
動作試験
配線の緩み
制御盤内は振動・温度変化の影響を受けやすいため、定期点検で設備トラブルを未然に防ぎましょう。
サーマルリレーは「モーターと設備を守る最後の砦」となる重要な保護機器です。
適切な選定と設定・点検を行うことで、長寿命化とコスト削減、突発停止のリスク低減につながります。
モーター設備の安全運用にはサーマルリレーの役割と必要性の正しい理解、そして適切な運用が不可欠です。
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