
企業のコスト削減(固定費削減)において、必ずといっていいほど槍玉に挙がるのが「オフィスの電気代」です。 特に、中規模以上のビル、工場、商店などを運営している場合、電気代の仕組みを正しく理解しているか否かで、年間数十万〜数百万円もの差がつくことがあります。 そのカギを握るのが「デマンド契約(実量制契約)」という仕組みです。 本コラムでは、企業の総務・経理担当者や店舗オーナー向けに、デマンド契約の基礎知識から、基本料金が決定される仕組み、メリット・デメリット、そして具体的な電気代削減の具体策まで、分かりやすく解説します。
デマンド契約とは、おもに高圧受電(契約電力が50kW以上)のビル、工場、商業施設などで採用されている「過去1年間の最大使用電力(デマンド値)」を基準に、基本料金が決定される電気契約の方式のことです。
一般的な家庭用の電気契約であれば、「30アンペア」「60アンペア」のように、あらかじめ固定の契約容量を決め、それを超えないように電気を使います。
しかし、業務用などのデマンド契約では、あらかじめ固定された枠はありません。「実際の電気の使い方(実績)」によって、毎月の基本料金のベースが自動的に変動するのが大きな特徴です。
デマンド契約の仕組みを理解する上で、最も重要なキーワードが「最大デマンド(最大需要電力)」です。基本料金は、以下のステップで決定されます。
スマートメーター(デマンドメーター)が、毎日24時間、30分ごと(例:13:00〜13:30)の平均使用電力(kW)を常に計測・記録しています。
1ヶ月(検針期間)の中で、最も高い値を記録した30分間の平均電力量が、その月の「最大デマンド」となります。
ここが最大のポイントです。毎月の基本料金の計算に使われる「契約電力」は、「その月を含む過去12ヶ月間の中で、最も高かった最大デマンド値」が採用されます。
🚨 【注意】一瞬の油断が1年間響くリスク 例えば、8月の非常に暑い日の午後、エアコンと大型機械を同時にフル稼働させ、30分間だけ「150kW」という突出したデマンド値を記録してしまったとします。 すると、たとえ翌月の9月や冬場に電気を節約してデマンドを「80kW」に抑えたとしても、向こう12ヶ月間は「150kW」をベースにした高い基本料金を支払い続けなければなりません。
デマンド契約には、企業の経営・運営においてメリットとデメリットの双方が存在します。
デマンド契約の最大のメリットは、「ピーク時の電気使用量を抑えれば、基本料金を劇的に下げられる」という点です。
一律で高い契約電力を設定されるわけではないため、オフィスの省エネ対策や運用の工夫次第で、事業の固定費を合理的に削減できます。
電気の使い方を現場任せにしていると、ある1日、ある30分間の「うっかり」によって最大デマンドが更新され、1年間の電気代ベースが跳ね上がってしまいます。
そのため、常に電気の使用状況を監視・管理しなければならないという運用の手間(リスク)が発生します。
デマンド契約における電気代削減の本質は、使用する電気の総量を減らすこと(省エネ)だけでなく、「同じ時間帯に大量の電気を同時に使わないこと(ピークカット・ピークシフト)」にあります。
工場やオフィスで最もデマンドが上がりやすいのは、「始業直後(朝8:00〜9:00)」や「昼休み明け(13:00〜13:30)」です。
全ての空調を一斉につけない(フロアごとに15分ずつずらして起動する)
大型機械の暖気運転や稼働時間を、他の機器と重複しない時間帯に設定する
このように、電力を消費するタイミングを分散させるだけで、デマンドの突出を防ぐことができます。
人間の目だけで30分ごとの電力を監視するのは不可能です。そこで多くの企業が導入しているのが「デマンド監視装置」です。
ターゲットとする目標デマンド値をあらかじめ設定しておき、その値を超えそうになるとアラームで警告を発したり、自動的にエアコンの出力を制御(セーブ運転)したりして、強制的にピークをカットします。
現場の意識改革も欠かせません。
「夏の13:00〜14:00の間は、オフィスの照明を一部消灯する」
「不必要な場所の空調はこまめにオフにする」
こうしたルールを社内で徹底し、全員で「今、電気を使いすぎていないか」を意識できる環境を作ることが、長期的なコスト削減につながります。
デマンド契約は、一見すると「1回のピークで1年間料金が高くなる」という厳しいルールに思えますが、裏を返せば「自社の工夫次第でいくらでも基本料金をコントロールできる」という企業に有利な仕組みでもあります。
まずは自社の過去1年間の「電気料金明細」を確認し、どの月に最大のデマンドが発生しているかを把握することから始めてみましょう。ピークの原因を特定し、適切な対策を講じることで、オフィスの固定費は確実に最適化できます。
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