
現代の省エネの本質は「消費電力の削減」です。そのアプローチには「無駄を無くす運用」と「設備の見直し」の2つがあります。家庭では、電気の着けっぱなしを無くすことに加え、10年以上使用した家電の更新が効果的です。一方、施設や工場では、照明のLED化や15年以上使用した大型設備の近代化、さらに高圧需要家であれば、待機時のエネルギーロスを劇的に抑える「キュービクルの更新」が不可欠です。現代の省エネは日々の意識だけでなく、老朽化した設備を最新型へ計画的に更新する投資が、長期的なコスト削減への近道となります。
家庭から工場・オフィスまで、今すぐ始めるべき電力削減のロードマップ
地球温暖化対策や電気料金の高騰が叫ばれる昨今、「省エネ」という言葉を耳にしない日はありません。しかし、「具体的に何をどうすれば効果的なのか」と聞かれると、意外と答えに窮してしまう方も多いのではないでしょうか。
今回のコラムでは、そもそも省エネとは何なのかという基本から、家庭、そして施設や工場(法人)における具体的なアプローチ方法まで、順を追って分かりやすく解説します。
省エネとは「省エネルギー」の略称です。文字通り、エネルギーを効率的に使い、無駄な消費を少なくすることを意味します。現代の私たちの暮らしやビジネスにおいて、その大半を占めるエネルギーといえば、やはり「電気」です。つまり、現代社会における省エネの第一歩は、「消費電力をいかに削減するか」に直結しています。
消費電力を削減することは、単に地球環境を守る(CO2排出量を減らす)というボランティア的な意味合いだけではありません。
家計や企業の固定費(電気代)を直接的に引き下げる
エネルギーの依存度を下げ、社会全体の電力不足リスクを軽減する
という、非常に現実的かつ経済的なメリットをもたらす重要な取り組みなのです。
では、実際に消費電力を削減するにはどうすればよいのでしょうか。大きく分けると、次の2つのアプローチが存在します。
日々の「無駄な電気の使い方」を無くす(運用面の改善)
エネルギー効率の高い「設備の見直し」をする(設備面の改善)
これらは、私たちが暮らす「家庭」と、ビジネスの拠点である「施設や工場」のどちらにも共通する考え方です。しかし、それぞれの規模や使用する機器によって、具体的な対策の中身は異なります。
ここからは、「家庭編」と「施設・工場(法人)編」に分けて、今すぐ実践すべき、あるいは計画すべき具体策を見ていきましょう。
まずは身近な「家庭での省エネ」です。家庭における電力削減のポイントは、「日々の無駄の徹底排除」と「老朽化した家電の世代交代」にあります。
家庭で最も手軽に、そして今日から始められるのが「無駄な電気を消す」ことです。
誰もいない部屋の照明が点いたままになっている
誰も見ていないのにテレビが流れている
エアコンをつけたまま外出してしまう
これらはすべて、お金をそのまま捨てているようなものです。「使っていない部屋の電気は消す」「こまめに主電源を切る」といった小さな意識の積み重ねが、月々の電気代に確実な差を生み出します。
「うちは電気の着けっぱなしなんてしていないのに、なぜか電気代が高い……」 そんな場合は、家にある家電製品の「年齢」を疑ってみてください。もし、10年以上前のエアコン、冷蔵庫、洗濯機、テレビなどをそのまま使い続けているなら、それは非常に燃費の悪い状態と言えます。
日本の家電製品の省エネ技術は、ここ10年で劇的に進化しました。例えば、最新の省エネ型冷蔵庫やエアコンは、10年前のモデルに比べて消費電力が 20%〜40%近く削減 されていることも珍しくありません。
【チェックポイント】 購入から10年が経過した家電は、故障していなくても「買い替え(更新)」を検討するタイミングです。初期投資(購入費用)はかかりますが、その後の電気代の削減分で、数年のうちに元が取れるケースが非常に多いのです。
次に、企業のオフィスビル、商業施設、工場などの「法人における省エネ」です。法人の場合、使用する電力の規模が家庭とは比較にならないほど大きいため、削減できた際の効果(コストカット)も数万〜数百万円規模と非常に大きくなります。
法人における省エネの主戦場は、「照明のLED化」と「15年以上経過した設備の近代化」です。
オフィスや工場、倉庫などで、未だに従来の蛍光灯や水銀灯を使っていませんか? 照明設備のLED化は、法人が最も手軽に、かつ確実に高い省エネ効果を得られる手法です。
消費電力を大幅削減: 蛍光灯からLEDに変えるだけで、照明にかかる消費電力は約半分(50%近く)になります。
長寿命によるメンテナンスコスト削減: LEDは圧倒的に寿命が長いため、高所にある工場の照明交換の手間や、管球の購入費用といった維持費(メンテンスコスト)も劇的に削減できます。
工場や施設で使われている大型の空調システム(ビル用マルチエアコンやチラー)、コンプレッサー、生産ラインのモーターなどは、15年以上が経過している場合、システムの近代化(リプレイス)が不可欠です。
長年使い込んだ大型設備は、経年劣化によって運転効率が落ちているだけでなく、そもそも設計自体が古い時代のものです。最新のインバータ技術を搭載した高効率設備に更新することで、施設全体の消費電力を 30%以上カット できる事例も多く存在します。また、最新設備はトラブルのリスクも低いため、操業停止(ダウンタイム)という企業にとって最大の損失を防ぐことにも繋がります。
施設や工場、大型店舗など、多くの電力を消費する企業は、電力会社から高い電圧(6,600Vなど)で電気を購入する「高圧需要家(こうあつじゅようか)」に該当します。この高圧需要家にとって、省エネと安全の観点から絶対に忘れてはならないのが「キュービクル(高圧受電設備)」の更新です。
電力会社から送られてくる高電圧の電気を、施設内で使える100Vや200Vの電圧に変圧する、敷地内の隅にある「金属製の箱(受電設備)」のことです。
キュービクルの内部にある「変圧器(トランス)」は、電気を使いやすく変圧する際に、どうしても「ロス(熱などとして逃げてしまうエネルギー)」が発生します。
古い変圧器: 20年以上前の変圧器は、このエネルギーロスが非常に大きいです。何も電気を使っていない夜間であっても、ただ通電しているだけで電力を浪費し続けています。
最新の「トップランナー変圧器」: 現代の最新の変圧器は、エネルギー効率に関する厳しい基準(トップランナー基準)をクリアしており、古いものに比べて損失を最大で半分以下、あるいはそれ以上に抑えることが可能です。
キュービクルそのものの耐用年数は一般的に20年〜25年程度とされています。15年〜20年を過ぎたキュービクルを最新の省エネ型へ更新することは、電気事故を防ぐという安全面のメリットだけでなく、施設全体のベースとなる電気代(待機電力のようなロス)を引き下げるための、極めて有効な省エネ投資なのです。
ここまで、家庭から工場・施設にわたる省エネの流れを解説してきました。
現代の省エネは、「電気をこまめに消す」という日々の心がけ(運用の工夫)だけでは限界があります。本当の意味で大きな効果を出し、持続可能なものにするためには、「10年、15年、20年と使い続けた古い設備を、最新の省エネ設備へと計画的に更新していくこと(設備投資)」が何よりも重要です。
省エネへの投資は、最初はコストがかかるように見えますが、長期的に見れば確実に企業の経営基盤を強くし、家庭の負担を軽くしてくれます。まずは身の回りの機器や、自社の設備が「導入から何年経っているか」をチェックすることから始めてみてはいかがでしょうか。
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