
ビルや工場のBCP(事業継続計画)対策や消防法遵守のために欠かせない「非常用発電機」。 いざ導入しようと考えた際、「敷地に余裕がないけれど、屋上に設置することはできるのだろうか?」という疑問を持つビルオーナー様や管理担当者様は少なくありません。 結論から言うと、非常用発電機を屋上に設置することは可能です。 しかし、地上に設置する場合とは異なる特有の注意点や、クリアすべき法規制が存在します。 本記事では、非常用発電機を屋上に設置するメリット・デメリット、設置までの具体的な流れ、そして必ず押さえておくべき注意点を分かりやすく解説します。
敷地面積に限りのある都市部のビルなどでは、非常用発電機を屋上に設置するケースが多々あります。
地上にスペースがなくても、デッドスペースになりがちな屋上を有効活用できるため、非常に合理的な選択肢と言えます。
ただし、どんなビルでも今すぐ置けるわけではありません。重量やスペース、法律の条件をクリアする必要があります。
屋上設置には特有の強みがある反面、あらかじめ知っておくべきリスクもあります。
敷地の有効活用: 駐車スペースや緑地を削る必要がありません。
水害(浸水)リスクの回避: 近年多発するゲリラ豪雨や洪水で地上や地下が冠水しても、屋上であれば発電機が水没せず、確実に機能します。
排気・騒音トラブルの軽減: 発電機の稼働音や排気ガスが、地上の歩行者や隣接する建物に直接届きにくくなります。
設置・メンテナンスコストの上昇: 重機(クレーン車)による吊り上げが必要なため、工事費が高くなります。
耐荷重の制限: 発電機は非常に重いため、建物の構造(床の耐荷重)によっては補強工事が必要です。
メンテナンスの手間: 点検時に部品や燃料を運ぶ動線の確保が必要です。
重要な注意点を4つ解説します。
非常用発電機は、本体だけでなく燃料(軽油や重油)も含めると、数トン〜十数トンもの重量になります。
既存の建物に設置する場合、屋上の床がその重さに耐えられるか、事前に構造計算(建築士による確認)を行う必要があります。
場合によっては、重量を分散させるための基礎架台の設置や、建物の補強工事が必要です。
設置にあたっては、以下の法律をクリアしなければなりません。
建築基準法(高さ制限・斜線制限): 屋上に設備を設けることで、建物の最高高さが法定の制限を超えてしまわないか確認が必要です。
消防法: 燃料の保管量(危険物)に応じた「防火壁の設置」や「隣地境界線からの離隔距離」が定められています。
騒音規制法: 屋上は音が響きやすいため、近隣トラブルを防ぐための防音パッケージ(キュービクル)の選定が必須です。
屋上への搬入には大型クレーン車を使用します。
そのため、「ビルの前面道路にクレーン車を停められるか」「上空に電線などの障害物がないか」といった道路状況の確認が不可欠です。道路を一時的に占有する場合は、警察への道路使用許可申請も必要になります。
非常用発電機を動かすためには定期的な燃料補給、そして災害時の継続的な補給が必要です。
「屋上のタンクまでどうやって燃料を運ぶか」を想定しておかなければなりません。
地上から配管を立ち上げてポンプで吸い上げる方式や、エレベーターで運ぶ方式など、事前に補給ルートを計画する必要があります。
問い合わせから運用開始まで、一般的な設置の流れは以下の通りです。
▼ 【ステップ1】現地調査・ヒアリング
▼ 【ステップ2】構造計算・法規チェック
▼ 【ステップ3】設計・お見積り
▼ 【ステップ4】各種申請(消防署・電力会社・役所など)
▼ 【ステップ5】搬入・据付工事(クレーン作業)
▼ 【ステップ6】配線・配管工事
▼ 【ステップ7】試運転・検査・引き渡し
現地調査: 設置場所のスペース、クレーンの作業環境、電気室からの配線ルートなどをプロが調査します。
設計・申請: 構造計算を行い、消防署などへ必要な届出を行います。申請には数週間〜数ヶ月かかる場合があります。
工事・引き渡し: 周辺への安全配慮を徹底した上でクレーン搬入を行い、据付・配線工事を実施。最後に試運転をして完了です。
非常用発電機の屋上設置は、「敷地を圧迫しない」「水害に強い」という非常に大きなメリットがあります。
その反面、重量や法律、搬入経路など、地上設置よりもクリアすべきハードルが多いのも事実です。
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