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病院が非常用発電機の設置前に知っておくべきことは?基礎知識をわかりやすく解説

病院が非常用発電機の設置前に知っておくべきことは?基礎知識をわかりやすく解説

2026年6月9日

近年、日本各地で発生する自然災害や電力不足のリスクを受け、病院やクリニックにおける「BCP(事業継続計画)」の策定と、それに伴う非常用発電機の設置・リニューアルが急務となっています。 しかし、病院の非常用電源は、一般的なオフィスビルや商業店舗の電気設備とは比較にならないほど複雑で、厳格な法規制やJIS規格が絡み合っています。 知識不足のまま導入を進めてしまうと、「いざという時に医療機器が動かない」「検査をクリアできない」といった致命的なトラブルに発展しかねません。 そこで本記事では、病院が非常用発電機を設置する前に必ず押さえておくべき基礎知識、関係する法律、失敗しない機種の選び方をわかりやすく解説します。

1. 病院の非常用電源に関わる「3つの法律」と運転時間の基準

病院に非常用発電機を導入する際、まずクリアしなければならないのが「消防法」「建築基準法」「医療法」という3つの異なる法律です。それぞれ目的が異なるため、要求される容量や連続運転時間に違いがあります。

① 消防法(消火活動のための電源)

  • 主な対象: スプリンクラー、屋内消火栓、排煙設備など

  • 求められる運転時間: 最低60分間の連続運転

② 建築基準法(避難のための電源)

  • 主な対象: 非常用照明、非常用エレベーターなど

  • 求められる運転時間: 最低30分間の連続運転(特定建築物は60分)

③ 医療法(診療継続のための電源)

  • 主な対象: 医療機器、電子カルテ、病棟機能の維持

  • 求められる運転時間:

    • 一般病院: 最低10時間以上の電力を維持できる燃料備蓄

    • 災害拠点病院・救命救急センター: 概ね3日間(72時間)の診療を継続できる燃料備蓄

設備担当者のチェックポイント 一般店舗やオフィスであれば消防法・建築基準法の「30分〜60分」で事足りますが、病院の場合は医療法に基づき**「最低10時間〜72時間」の稼働**を見据えた、大容量の燃料タンク(オイルタンク)の設置設計が必要になります。

2. 医療機器を守るための「電源の分類(JIS T 1022)」

病院内のコンセントは、停電時にどれだけ早く電力を復旧させるかによって、JIS規格(JIS T 1022)で厳格に分類されています。

どの設備・どのコンセントに発電機を繋ぐかの配線計画に直結する重要な知識です。

  • ① 一般非常電源(40秒以内起動)

    • 対象設備: 手術室の一般照明、病棟廊下の照明、給水ポンプ、エレベーターなど。

    • 特徴: 停電から40秒以内に自動的に電力が供給されるシステムです。通常の非常用発電機で対応します。

  • ② 特別非常電源(10秒以内起動)

    • 対象設備: 人工呼吸器、集中治療室(ICU)の監視モニター、透析装置など。

    • 特徴: 生命維持に直結する機器のため、10秒以内の立ち上がりが義務付けられています。「高速起動型」の発電機を選定する必要があります。

  • ③ 瞬時特別非常電源(0.1秒以内起動)

    • 対象設備: 手術中の生命維持装置、電子カルテ用サーバー、データセンターなど。

    • 特徴: 一瞬の停電(瞬停)も許されない超重要設備です。発電機単体では0.1秒で起動できないため、必ず「UPS(無停電電源装置)」を中間に挟み、発電機が稼働するまでの数分間をバッテリーで繋ぐ設計にします。

3. ディーゼル vs ガスタービン!病院に最適なのはどっち?

病院用として採用される非常用発電機は、主に「ディーゼル駆動」と「ガスタービン駆動」の2種類に分かれます。敷地環境や予算に合わせて最適なタイプを選定します。

A. ディーゼル発電機(国内の主流)

軽油やA重油を燃料とする、実績の多いタイプです。

  • メリット: 起動が早い(10〜40秒で安定)、燃費が良く燃料タンクをコンパクトに抑えられる、本体価格やメンテ費用が比較的安価。

  • デメリット: 運転時の騒音と振動が非常に大きい。排気ガスに黒煙が含まれやすいため、病棟の窓や近隣住民への配慮(防音壁や消音器の設置)が必要。

B. ガスタービン発電機

灯油やA重油、ガスを燃料とし、ジェットエンジンのような仕組みで発電します。

  • メリット: 振動や騒音が極めて少ないため、屋上や病棟近くにも設置しやすい。排気ガスがクリーン。大容量の電力を安定して出力できる。

  • デメリット: 起動に時間がかかる(40秒〜1分程度)。燃費が悪いため、72時間運転を目指す場合は非常に巨大な燃料タンクが必要になる。

4. 設置リフォーム前に確認すべき「3つの落とし穴」

落とし穴①:燃料の「補給ルート」まで考慮されているか?

敷地面積や消防法上の制限(危険物取扱の指定数量)により、院内に24時間分しか燃料を備蓄できないケースもあります。

その場合、「災害時にタンクローリーが通行できるか」「激甚災害時でも優先的に燃料を届けてもらえる『災害時優先供給協定』を燃料業者と結んでいるか」までをセットで計画しなければ、BCP対策として不十分とみなされます。

落とし穴②:維持管理(ランニングコスト)の予算化

非常用発電機は、設置して終わりではありません。法律で以下の点検が義務付けられています。

  • 毎月の自主点検(試運転)

  • 年1回の法定点検(消防法に基づく「負荷試験」または「内部観察」) また、始動用バッテリー(数年ごとに交換)やエンジンオイル、冷却水などの消耗品交換費用も毎年発生します。10〜20年のスパンで見維持管理コストをシミュレーションしておきましょう。

落とし穴③:補助金・助成金の申請タイミング

国や自治体(厚生労働省など)からは、病院の災害対策を支援するための補助金(例:災害拠点病院等施設整備費補助金など)が定期的に公募されています。

これらは「必ず着工(発注)前」に申請して採択を受ける必要があるため、電気施工業者と早い段階からスケジュールを合わせて計画を進めることが重要です。

まとめ:自院の「守るべき医療」から逆算した設備計画を

病院における非常用発電機の設置・リニューアルは、単なる電気工事ではなく、「災害時にどの医療行為を、何日間維持するか」という病院の経営方針(BCP)そのものです。

まずは現在の契約電力や、停電時にも絶対に止められない医療機器の洗い出しから始めてみましょう。

早期に相談し、適切な容量計算(負荷計算)を行うことが、安心・安全な病院リフォームへの第一歩となります。


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