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非常用発電機の騒音・防音・吸音対策|騒音規制の基準と効果的な防音施工法

非常用発電機の騒音・防音・吸音対策|騒音規制の基準と効果的な防音施工法

2026年9月10日

ビルや工場、病院などで災害時の電力確保に欠かせない非常用発電機。 しかし、いざ稼働(試運転・緊急時)させた際に発生する「激しい騒音」や「建物を揺らす振動」は、近隣住民や施設利用者とのトラブル要因になりかねません。 非常用発電機は、冷却や排気のために「空気の通り道」を完全に塞ぐことができません。そのため、適切な防音対策を行うには、排熱・通気性能を維持しながら、音と振動を抑える高度な防音・吸音設計が必要となります。 本記事では、非常用発電機から発生する騒音の原因、関係する法律や数値基準、具体的な「遮音・吸音・防振」の対策手法について詳しく解説します。

非常用発電機の騒音原因と音の伝わり方

効果的な防音対策を行うためには、まず「どのような音が」「どう伝わっているのか」を把握することが重要です。

非常用発電機の音は、伝わった経路によって大きく「空気伝搬音」と「固体伝搬音」の2つに分類されます。

1. 空気伝搬音(空気を伝わって届く音)

空気伝搬音とは、大気を媒体にして直接耳に届く音です。

  • 排気音(エンジン排気): 最も大きな音源であり、爆発的な低周波音を含みます。

  • 吸気・冷却風音: ラジエーターファンが外気を吸い込み、排気する際に生じる風切り音です。

  • 機械作動音: エンジン本体のピストン運動や発電機内部の摩擦から生じる機械音です。

2. 固体伝搬音(建物・構造体を伝わる振動)

固体伝搬音とは、エンジン駆動時の激しい振動が発電機の台座から床、柱、壁へと伝わり、離れた室内の空気を振動させて発生する音(こもり音・重低音)です。

特にビルの屋上や室内に設置する場合、建物全体に不快な低周波音を響かせる原因となります。

知っておくべき「騒音規制法」とデシベル(dB)の目安

非常用発電機を設置・運用する際は、各自治体が定める騒音規制法および振動規制法の基準値をクリアしなければなりません。

騒音レベルの目安

一般的な非常用ディ−ゼル発電機の騒音値は、対策なしの状態(直近)で約100dB〜110dBに達します。

これは「電車が通るときのガード下」や「自動車のクラクション」に匹敵する音量です。

敷地境界線での規制基準値

騒音規制法では、敷地境界線での音量がエリアごとに以下のように定められています(自治体によって要件が異なる場合があります)。

地域の分類

昼間(目安)

夜間(目安)

該当する主な施設

第1種区域

45〜50 dB

40〜45 dB

閑静な住宅街、病院、学校周辺

第2種区域

50〜55 dB

45〜50 dB

主に住宅が立ち並ぶ地域

第3種区域

60〜65 dB

50〜55 dB

商業地域、準工業地域

第4種区域

65〜70 dB

55〜60 dB

工業地域

日常的な定期点検・負荷試験はもちろんのこと、近隣からの苦情を防ぐには、騒音レベルを日常環境の許容範囲内(およそ50〜60dB前後)まで減衰させる防音設計が求められます。

3つの観点から見る「騒音・防音・吸音」対策

非常用発電機の防音施工では、「遮音」「吸音」「防振」の3つを組み合わせて対策を行います。

1. 遮音対策(音を外に漏らさない)

遮音とは、音を物理的な壁で跳ね返し、外へ漏れるのを防ぐ手法です。

  • 防音パッケージ・防音エンクロージャーの採用

    屋外設置の場合、鋼板と遮音シートで構成された「防音型パッケージ」で発電機全体を包み込みます。これだけで約15〜25dBの減音効果が期待できます。

  • 防音室(専用電気室)の施工

    室内設置の場合は、部屋の壁を厚いコンクリートや遮音パネル構造にし、出入口には密閉性の高い「防音ドア(サイレンサードア)」を取り付けます。

2. 吸音対策(音を吸収して跳ね返りを抑える)

吸音とは、音のエネルギーを熱エネルギーに変換し、反射音(反響音)を抑える手法です。

  • 吸音材の施工(ロックウール・グラスウール)

    防音室内やパッケージの内部に、繊維系吸音材(ロックウールやグラスウール等)を貼り付けます。室内で音が反射して増幅する「こもり音」を抑制します。

  • 防音ルーバー(サイレンサーフード)の設置

    非常用発電機は大量の空気を取り込み、排熱する必要があります。開口部を塞ぐことができないため、空気の通り道に「吸音材を挟んだブレード(防音ルーバー)」を配置し、風を通しながら音だけを吸音・遮音します。

  • 高減音型マフラー(サイレンサー)

    エンジンの排気管には、消音構造を持った高機能サイレンサー(スプリッターサイレンサー等)を装着し、最も大きな排気音をピンポイントで抑えます。

3. 防振対策(振動が建物を伝わるのを防ぐ)

振動による固体伝搬音を防ぐためには、発電機と建物を物理的に切り離す「絶縁」が必要です。

  • 防振ゴム・スプリング防振架台

    発電機の足元に防振ゴムや高集塵スプリング架台を設置し、床へ伝わる振動を吸収します。

  • フレキシブルジョイント(可撓管)

    排気管や燃料配管、配線ダクトなどの接続部に柔軟性のあるフレキシブルジョイントを使用します。配管を通じて建物の壁や天井に振動が伝わるのを防ぎます。

設置場所に応じた防音設計の注意点

非常用発電機の設置場所によって、注力すべき防音ポイントは異なります。

屋外・敷地内に設置する場合

  • 風向と近隣への配慮: 排気口や冷却風の吹き出し口を隣家やオフィスビルに向けない配置計画が必要です。

  • 雨水・耐候対策: 吸音材が水を含むと吸音性能が著しく低下するため、防水性・耐候性を備えたフードやルーバーを使用します。

屋上・中階層に設置する場合

  • 低周波振動の防止: ビル上層部への設置は、直下階への振動・騒音被害が発生しやすくなります。スプリング架台の採用など、厳密な防振計算が不可欠です。

  • 重量制限との兼ね合い: 防音パネルや遮音壁を増やしすぎると耐荷重を超過するリスクがあるため、軽量かつ高スペックな吸音材を選定します。

屋内(地下・専用室)に設置する場合

  • 換気・排熱計算の徹底: 室内が密閉されるため、防音ルーバーを設けて十分な吸排気量を確保しないと、エンジンが熱発進(オーバーヒート)して停止する危険があります。

  • 室内反響の抑制: 壁面全面に吸音施工を施し、室内騒音レベル自体を下げる必要があります。

まとめ:性能確保と防音対策の両立が鍵

非常用発電機の防音対策は、単に音を閉じ込めれば良いというものではありません。

万が一の停電時に発電機が正常に作動できるよう、「十分な吸排気・冷却性能の維持」と「法的基準を満たす遮音・吸音・防振性能」の双方を高い次元で両立させることが極めて重要です。

設置場所の周辺環境、法令の要件、建物構造に応じた最適な防音設計を行うためにも、計画段階から専門の防音エンジニアや設備業者に相談し、適切なアプローチを選択しましょう。


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