
「毎月のキュービクル維持費が高い」「設備の更新時期が近づいており、数百万円の費用がかかる」とお悩みの事業者様も多いのではないでしょうか。 電気使用量が以前よりも減っている場合、高圧受電契約から低圧受電契約へ変更(低圧化)し、キュービクルを廃止することで大幅なコスト削減につながるケースがあります。 本記事では、高圧から低圧へ変更する際のメリット・デメリット、切り替えの判断基準、具体的な工事の流れまでをわかりやすく解説します。
電気の契約形態には、大きく分けて「高圧受電」と「低圧受電」の2種類が存在します。
高圧受電(50kW以上〜): 電力会社から6,600Vの高圧電気を一括で購入し、敷地内に設置したキュービクル(受変電設備)で100V/200Vに変圧して使用する形態。
低圧受電(50kW未満): 電力会社の電柱に設置された変圧器で100V/200Vに落とされた電気を直接引き込んで使用する形態。
電気の使用量が一定以下の施設であれば、わざわざ自家用の受変電設備を持たず、低圧受電へ切り替える(=低圧化)という選択肢があります。
高圧契約を解除し、低圧契約へ切り替えることには、以下のような運用面・財務面の大きなメリットが存在します。
高圧受電を行う施設は、電気事業法により「電気主任技術者」の選任および定期的な保安点検(月次・年次点検)が義務付けられています。
低圧化することでこれらの法的な義務がなくなり、年間数十万円(規模によっては100万円以上)の委託管理費用を削減できます。
キュービクル内部の機器(トランス、高圧遮断器、ケーブルなど)は15年〜20年程度で寿命を迎えます。
部分交換でも数十万円、全体交換となれば数百万円〜1,000万円以上の費用が発生します。低圧化してキュービクルを撤去すれば、将来的な設備投資リスクをゼロにできます。
自家用電気工作物であるキュービクルで事故が発生した場合、自社内だけでなく周辺地域を一斉に停電させてしまう「波及事故」のリスクが常に伴います。
低圧化すれば電気設備の管理責任が電力会社側へ移るため、安全管理上の大きなプレッシャーから解放されます。
屋外や屋上に設置されていたキュービクルを撤去することで、その跡地を駐車場、屋外資材置き場、あるいは店舗の拡張スペースなどとして有効活用できます。
メリットが大きい反面、低圧化には注意すべきコストや制約もあります。
高圧契約は「単価が安く設定されている」のに対し、低圧契約は「単価が高め」に設定されています。
基本料金や従量料金の単価が上がるため、電気の使用量が多い施設では、低圧化によって毎月の電気代がかえって高くなってしまうリスクがあります。
低圧化を実行するには、既存キュービクルの撤去・処分のほか、電柱から低圧線を引き直す電工工事が必要です。
現場の状況(幹線ケーブルの太さや距離など)によりますが、数十万円〜数千万円規模の初期費用が発生します。
低圧契約に切り替える場合、原則として契約容量は50kW未満となります。
将来的に高出力の製造マシンや大型エアコンを増設したくなっても、契約容量オーバーで設置できなくなるおそれがあります。
比較項目 | 高圧受電(キュービクルあり) | 低圧受電(キュービクル撤去) |
電気単価(1kWh) | 安い | 高い |
点検・保安費用 | 毎月・毎年の点検コストが必要 | 不要(電力会社が管理) |
設備更新コスト | 15〜20年毎に数百万円 | 不要 |
契約容量上限 | 50kW以上の大容量に対応 | 50kW未満に限られる |
安全管理責任 | 自社で責任を負う(波及事故リスク) | 電力会社側へ移転 |
敷地スペース | キュービクルの設置場所が必要 | 省スペース化が可能 |
「自社は低圧化すべきかどうか」を判断する際のポイントは、現在の「年間電気使用量(kWh)」と「キュービクルの維持費」のバランスです。
工場の稼働を縮小し、電気使用量が大幅に減った施設
テナントが退去し、ビル全体の電力消費が減った不動産
契約電力は50kWを超えているが、実際の使用量は極めて少ない施設
キュービクルの耐用年数が迫っており、数百万円の更新見積もりが届いている施設
年間を通して電気を大量に使用する工場や店舗
急速急速充電器や大型エレベーターなど、瞬時に大電力を消費する設備がある施設
将来的に事業拡大や機械増設の予定がある施設
高圧から低圧への変更手続きは、以下のステップで進めます。
事前調査・試算: 直近1〜2年間の電気利用明細をもとに、低圧化による電気代の変化と維持費の削減額をシミュレーションします。
電力会社・施工業者への相談: 低圧引込工事が可能かどうかの現地調査と見積もりを取得します。
電力申請・契約変更: 電力会社へ高圧契約の解除と低圧契約の新規申し込みを行います。
切替工事・キュービクル撤去: 配線切り替え工事を行い、旧キュービクルを安全に搬出・処分します。
保安監督部への届出: 自家用電気工作物の廃止届を提出し、完了となります。
高圧から低圧への切り替え(低圧化)は、電気使用量が減った事業者にとって、固定費と将来リスクを同時に削減できる強力な手立てです。
しかし、電気の単価アップや撤去工事の初期費用が発生するため、「電気代の増額分」と「保安管理費・更新費用の削減分」をしっかりと比較・試算することが重要になります。キュービクルの点検時期や更新見積もりが届いたタイミングで、一度低圧化のシミュレーションを検討してみてはいかがでしょうか。
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