
キュービクルの色は決まっているのか
キュービクルの函体色は見た目だけでなく、安全性・耐久性・景観配慮を踏まえて決められている。標準色はライトベージュ(マンセル5Y7/1)とクリーム(2.5Y9/1)の2色で、周囲と調和しやすく、汚れや温度上昇を抑える実用性がある。特注色もマンセル値や日塗工色番号などの色記号指定があれば対応可能だが、コストや納期、将来の増設時の再現性に注意が必要である。また沿岸部では塩害対策が重要となり、耐塩塗装や重耐塩塗装など環境に応じた仕様選定が、設備の長寿命化と安全確保につながる。
なぜキュービクルの色は決まっているのか
――函体色に込められた「安全・環境・美観」の思想
はじめに:キュービクルの色は「見た目」だけではない
高圧受電設備として欠かすことのできないキュービクル式高圧受電設備(以下、キュービクル)。
設計段階では容量や機器構成、設置場所に注目が集まりがちですが、意外と見落とされやすいのが函体(外箱)の色です。
「どれも同じような薄い色」「なぜこの色なのか」と思われる方も多いでしょう。しかし、キュービクルの函体色には、長年の実績と合理性、そして安全性への配慮が詰め込まれています。本コラムでは、標準色として採用されている色の理由から、特注色の考え方、さらに塩害地域向けの特殊塗装まで、具体例を交えながら詳しく解説していきます。
1. キュービクル函体の標準色とは
■ 基本となる2色
キュービクルの函体色には、業界で広く採用されている2つの標準色があります。
ライトベージュ(マンセル値:5Y7/1)
クリーム(マンセル値:2.5Y9/1)
これらはいずれもマンセル表色系で定義された色で、メーカーや製作会社が異なっても、色味のばらつきを抑えられる共通言語として機能しています。
2. なぜライトベージュとクリームなのか
■ 景観への配慮
キュービクルは、工場やビルの屋外、商業施設、学校、病院、集合住宅など、人目に触れる場所に設置されるケースが少なくありません。
ライトベージュやクリームは、周囲の建築物や外構、自然環境と調和しやすく、威圧感を与えにくい色として評価されてきました。
■ 汚れが目立ちにくい実用性
真っ白では雨だれや排気ガスの汚れが目立ち、濃色では色あせが顕著になります。
ライトベージュ・クリームは、汚れ・色あせのバランスが良く、長期間美観を保ちやすいという実務的なメリットがあります。
■ 温度上昇を抑える効果
濃い色は太陽光を吸収しやすく、函体内部の温度上昇につながります。
淡色系であるこれらの色は、直射日光による熱影響を抑制し、内部機器の安定動作に寄与します。
3. マンセル値指定の重要性
マンセル表色系は、「色相(Hue)」「明度(Value)」「彩度(Chroma)」で色を数値化する方式です。
例えば、
5Y7/1
2.5Y9/1
といった指定があることで、「見た目が似ているが実は違う色」といったトラブルを防ぐことができます。
特にキュービクルは、増設・更新・隣接設置が発生しやすい設備です。
マンセル値を基準にしておけば、後年設置する設備とも色調を揃えやすく、統一感ある設備環境を維持できます。
4. 特注色への対応について
■ 色記号指定があれば対応可能
標準色が基本ではありますが、近年は特注色対応のニーズも増えています。
例えば、
建築デザインに合わせた色
企業カラーに近づけたい
周囲が黒・濃色系の建物である
といったケースです。
この場合、
マンセル値指定
日塗工色番号
RALカラー指定
など、明確な色記号があれば対応可能となることが一般的です。
■ 特注色の注意点
一方で、特注色には以下の点を理解しておく必要があります。
塗装工程が変わるためコストが上昇する
納期が標準品より長くなる可能性がある
将来の増設時に同色再現が難しい場合がある
そのため、「本当に特注色が必要か」「標準色で問題ないか」を、設計段階で十分に検討することが重要です。
5. 公共施設・景観条例との関係
自治体によっては、景観条例や設置基準により、
色調の制限
明度・彩度の上限
が定められている場合があります。
ライトベージュやクリームは、こうした条例にも適合しやすい色であり、結果として標準色として定着してきた背景があります。
6. 【別枠】塩害地域向け塗装の重要性
■ 塩害が与える影響
沿岸部や海風の影響を受ける地域では、空気中に含まれる塩分が函体表面に付着し、
鋼板の腐食
塗膜の早期劣化
を引き起こします。これを放置すると、函体寿命の短縮や安全性低下につながります。
7. 耐塩塗装・重耐塩塗装とは
■ 耐塩塗装
一般的な屋外仕様よりも、
下地処理を強化
防錆性能の高い塗料を使用
することで、塩害への耐久性を高めた仕様です。
準沿岸地域や、比較的塩分濃度が低いエリアで採用されます。
■ 重耐塩塗装
より厳しい環境向けに、
溶融亜鉛めっき
厚膜エポキシ塗装
フッ素系・重防食塗料
などを組み合わせた仕様です。
海岸線に近い工場・港湾施設・離島などで多く採用されます。
8. 塩害対策塗装を選ぶ際のポイント
設置場所が海から何kmか
海風の影響を受けるか
周囲の建物や遮蔽物の有無
これらを総合的に判断し、過不足のない仕様選定が重要です。
過剰仕様はコスト増に、軽すぎる仕様は早期劣化につながります。
おわりに:色は設備思想を映す鏡
キュービクルの函体色は、単なる「見た目」ではなく、
安全性
耐久性
景観配慮
維持管理
といった多くの要素を考慮した結果として定められています。
標準色であるライトベージュ(5Y7/1)やクリーム(2.5Y9/1)は、その最適解の一つです。
設計者・施主・施工者が色の意味を理解した上で選定することが、長く安心して使える電気設備につながると言えるでしょう。

前田 恭宏
前田です
