
照明器具の「ルーメン・カンデラ・ルクス・ケルビン」の話
照明器具を選ぶ際は、「ルーメン(光の量)」「カンデラ(光の強さ)」「ルクス(照らされた明るさ)」「ケルビン(光の色温度)」の4つの単位を理解することが大切です。ルーメンは明るさの総量、カンデラは光の集中度、ルクスは作業面の明るさ、ケルビンは空間の雰囲気に関係します。用途や部屋に応じて適切な明るさ・色温度を選ぶことで、快適で機能的な照明環境を実現できます。
照明器具を選ぶ前に知っておきたい「ルーメン・カンデラ・ルクス・ケルビン」の話
照明器具を買い替えるときや、新しく部屋を照らすライトを選ぶとき、「明るさはどのくらい必要?」「暖かい色がいい?それとも白っぽいほうがいい?」と迷うことはありませんか?
その判断基準となるのが、「ルーメン(lm)」「カンデラ(cd)」「ルクス(lx)」「ケルビン(K)」といった、光に関する単位です。これらを正しく理解することで、自分の空間に最適な照明器具を選ぶことができます。
本コラムでは、これらの単位の意味や違い、そして照明選びへの活用方法について、わかりやすく解説します。
1. まずはそれぞれの用語の意味を知ろう
1-1. ルーメン(lm)=「光の量」を示す単位
ルーメン(lumen)は、照明器具が全体としてどれだけの光を出しているかを示す単位です。簡単にいえば、明るさの総量。電球パッケージにも「〇〇lm」と記載されていることが多く、「明るいか暗いか」を大まかに判断する指標となります。
例えば:
450lm前後:白熱電球40W相当の明るさ
800lm前後:白熱電球60W相当
1600lm前後:白熱電球100W相当
ただし、ルーメンは「全方向」に出ている光の量を表すため、光が拡散しているのか、一方向に集中しているのかまではわかりません。そこで次に登場するのが「カンデラ」です。
1-2. カンデラ(cd)=「光の強さ(指向性)」を示す単位
カンデラ(candela)は、ある特定の方向に対して、どれくらいの強さで光が出ているかを表す単位です。スポットライトのように一方向を強く照らす照明の場合、ルーメンよりもカンデラの数値が重要になることがあります。
例えば、同じ1000ルーメンの光を全方向に出す電球と、狭い範囲に集中させて出すライトでは、照らされた対象の明るさは全く異なります。カンデラが高ければ、「光が鋭く集中している」と考えて良いでしょう。
このように、ルーメンは総量、カンデラは指向性の強さという違いを覚えておくと便利です。
1-3. ルクス(lx)=「実際に照らされた面の明るさ」を示す単位
ルクス(lux)は、「ある場所がどれだけ明るく照らされているか」を示す単位です。つまり、ルーメンやカンデラは「光源側の性能」を示すのに対し、ルクスは受け手側の明るさを示しています。
たとえば、机の上で勉強や読書をするためには「500ルクス」程度の明るさが推奨されています。料理をするキッチンでは「750ルクス」以上、くつろぐリビングでは「200ルクス」前後で十分なことが多いです。
ルクスは「光源からの距離」によって大きく変化します。遠くにあるライトは、いくらルーメンやカンデラが高くても、照らされる場所のルクスは低くなるのです。
1-4. ケルビン(K)=「光の色(色温度)」を示す単位
ケルビン(Kelvin)は、光の「色合い(色温度)」を表す単位です。数値が低いほど暖色系(赤みがかったオレンジや黄色)、高いほど寒色系(白っぽく青みがかった光)になります。
約2700K:電球色(暖かいオレンジ系)
約3500K:温白色(やや暖かみのある白)
約5000K:昼白色(自然光に近い白)
約6500K:昼光色(青白い光)
照明の色温度は、空間の雰囲気や作業効率、リラックス度に大きく影響します。たとえば、寝室では暖色系の2700Kが落ち着くとされ、オフィスや作業場では5000~6500Kの白色光が集中力を高める効果があると言われています。
2. 照明器具選びのポイント:どの数値に注目すべき?
ここまでの説明を踏まえ、照明器具を選ぶ際のポイントを、用途別に整理してみましょう。
2-1. リビング・寝室など「くつろぎ空間」
おすすめの色温度(ケルビン): 2700K〜3000K(電球色)
必要な明るさ(ルクス): 100〜300ルクス程度
照明タイプ: 拡散光(シーリングライトやフロアライト)
注目すべき単位: ルーメン(空間全体の明るさ)、ケルビン(リラックス効果)
柔らかい光で心身をリラックスさせるのが目的なので、カンデラ(指向性)よりもルーメンとケルビンが重要です。
2-2. ダイニング・キッチン
おすすめの色温度: 3000K〜4000K(温白色)
必要な明るさ: 300〜750ルクス
照明タイプ: ペンダントライト、ダウンライト
注目単位: ルーメン、ルクス、ケルビン
料理中や食事中の視認性を高めるために、ある程度の明るさ(ルーメンとルクス)と、自然に見える色合い(ケルビン)が重要です。
2-3. 勉強部屋・オフィス
おすすめの色温度: 5000K〜6500K(昼白色〜昼光色)
必要な明るさ: 500〜1000ルクス
照明タイプ: デスクライト、スタンドライト(指向性のあるもの)
注目単位: カンデラ、ルクス、ケルビン
集中力を高め、文字や細かい作業を見やすくするために、光の指向性(カンデラ)と実際の明るさ(ルクス)、色温度(ケルビン)がカギになります。
2-4. 廊下・階段・トイレなど
おすすめの色温度: 3000K前後
必要な明るさ: 100〜200ルクス程度
照明タイプ: ダウンライト、人感センサー付き照明
注目単位: ルーメン、ルクス
安全性が第一なので、必要最低限の明るさと、目が痛くならない色温度がポイントです。
3. LED時代の照明選びと単位の重要性
従来の白熱電球や蛍光灯では、消費電力(W=ワット)を目安に「だいたいこのくらいの明るさ」と判断していました。たとえば、「60W=そこそこ明るい」「100W=かなり明るい」といった具合です。
しかし、LED照明の登場により、この考え方は大きく変わりました。LEDは少ない電力でも高い明るさを得ることができるため、ワット数では明るさを正しく判断できないのです。
たとえば、同じ800ルーメンの明るさを出す照明器具でも、製品によって消費電力は7Wのものもあれば10Wのものもあります。この違いは光の効率(=lm/W、ルーメンパーワット)に現れます。
したがって、LED照明を選ぶ際には、消費電力よりも「ルーメン(光の量)」や「ケルビン(光の色)」といった単位を重視することが重要です。
4. 実際の製品スペックでの確認ポイント
照明器具のパッケージや製品情報には、多くの場合、以下のような数値が記載されています。
項目 | 単位 | 意味 | 目安 |
明るさ | ルーメン(lm) | 光の総量 | 800lm程度で60W相当 |
光の色 | ケルビン(K) | 光の色合い(色温度) | 2700K〜6500K程度 |
照射範囲の明るさ | ルクス(lx) | 実際に照らされる場所の明るさ | 作業時500lx以上推奨 |
光の方向性 | カンデラ(cd) | 一方向への光の強さ | スポットライトなどで重要 |
消費電力 | ワット(W) | 電気使用量 | 少ないほど省エネ |
特に照明選び初心者の方は、ルーメンとケルビンだけでも意識しておくだけで、かなり失敗しにくくなります。
5. 応用編:空間全体の明るさを計算してみよう
ルーメン数だけでは、自分の部屋全体に必要な明るさがどのくらいなのか、ピンと来ないこともあるでしょう。そこで「部屋の広さ × 必要ルクス = 必要ルーメン」という簡易計算式を使って、空間全体に必要な光量を見積もる方法をご紹介します。
例:6畳のリビングに必要な光の量
6畳はおおよそ10㎡です。リビングには一般的に200~300ルクス程度が推奨されているため、
10㎡ × 300lx = 3,000ルーメン
となり、3,000lm前後の照明を選ぶと十分な明るさになります。これは、800lmのLED電球であれば約4個分に相当します。
同じように、自分の部屋の広さや用途に応じて必要なルーメン数を計算してみると、照明選びが格段にしやすくなります。
6. 照明の「演色性(CRI)」もチェックポイント
ここまで紹介してきた単位とは別に、「演色性(えんしょくせい)」という項目も知っておくと便利です。これは、照明が物の色をどれだけ自然に見せられるかを示すもので、**CRI(Color Rendering Index)**という数値で表されます。
CRI 100:太陽光と同等の自然な色再現性
CRI 80以上:日常生活に問題ないレベル
CRI 90以上:より高い色再現性(メイクや美術鑑賞などに最適)
食品の色やインテリアの見栄えが重要な場所では、CRIの高い照明を選ぶと満足度が上がります。
7. まとめ:照明器具選びで後悔しないための5つのチェック項目
最後に、照明器具を選ぶときに確認すべきポイントを5つにまとめます。
ルーメン(lm): 明るさの総量をチェック。部屋の広さ×目的で必要なlm数を計算。
カンデラ(cd): 光を集中的に当てたい場合(スポットライトなど)に重要。
ルクス(lx): 実際に照らされる面の明るさ。作業内容によって必要な明るさは変わる。
ケルビン(K): 部屋の雰囲気や用途に応じて、暖かい光〜白くシャープな光まで選択。
CRI(演色性): 色の見え方が重要な場所ではCRI80〜90以上のものを選ぶ。
これらを意識して照明器具を選ぶことで、見た目の美しさだけでなく、快適性や効率性、安全性までもが向上します。
おわりに:光の質が暮らしの質を決める
照明は、単なる「明るくする道具」ではありません。光の強さや色、広がり方ひとつで、私たちの感情、集中力、行動までもが左右されます。
「この部屋でどう過ごしたいか?」という視点から、ルーメン・カンデラ・ルクス・ケルビンといった指標を上手に使いこなせば、ただ明るいだけでなく、心地よさを生む照明選びが可能になります。
LED全盛の今こそ、光について少しだけ深く知って、あなたの暮らしにぴったりの「光環境」を見つけてみてください。

前田 恭宏
練習