電設盤・キュービクルにおける標準塗装・耐塩塗装・重耐塩塗装

電設盤・キュービクルにおける標準塗装・耐塩塗装・重耐塩塗装

25/09/03 09:40

電設盤やキュービクルは、過酷な屋外環境下で使用されることが多く、塗装仕様の選定が機器の耐久性や安全性に大きく影響します。特に塩害地域では「耐塩」「重耐塩」仕様が重要ですが、その基準はメーカーごとに異なるため注意が必要です。本コラムでは、業界標準や主要メーカーの塗装仕様を比較し、最適な選定に役立つ情報をまとめています。

電設盤・キュービクルにおける標準塗装・耐塩塗装・重耐塩塗装について

電設盤やキュービクルは、電気設備の中枢を担う重要な機器であり、その品質や耐久性は施設全体の安全性や信頼性に直結します。中でも、屋外に設置されることの多いキュービクルは、紫外線、雨、風、さらには塩害など、過酷な自然環境に常時さらされるため、塗装仕様の選定が極めて重要な要素となります。

特に海岸地域や工業地帯などでは、「耐塩」や「重耐塩」仕様の必要性が高まりつつあり、従来の標準塗装では十分な耐久性を確保できないケースも増加しています。一方で、「耐塩」「重耐塩」といった用語は一見共通のように見えても、実際にはメーカーごとに塗料の種類や膜厚、試験方法、素材の使い分けなどが異なっており、選定や比較の際には注意が必要です。

本コラムでは、業界標準となっているJEMA(日本電機工業会)規格をはじめ、主要メーカー(内外電機、日東工業、他)の標準塗装および耐塩・重耐塩塗装の仕様について、最新の情報をもとに整理・比較し、設置環境に応じた最適な塗装仕様の選定に役立つ知見をご提供します。

1. 業界の標準色と背景

JEMA(日本電機工業会)の標準色

  • JEM‑1135『配電盤・制御盤及びその取付器具の色彩』(1977年制定)により、マンセル 5Y7/1(ベージュ) を標準色と規定し、光沢基準・測定方法も明示されています。

  • さらに JEM‑1387(1980年)では、高圧受変電設備機器にも同色を適用し、機器間の色彩調和を図っています。DiaryWind

これにより、1980年代以降日本の電設機器業界では**5Y7/1(ベージュ系)**が広く標準色として定着しました。一方、2.5Y9/1(クリーム色)を併用するケースや屋内外で使い分けるメーカーも存在します。DiaryWind

2. 各メーカーの塗装仕様

2.1 内外電機(ナイガイ電機)

  • 箱体素材は SEHC(亜鉛めっき鋼板)、塗装は耐侯・耐塩性に優れた粉体塗装を採用。

  • 標準色は「ナイガイベージュ」(日塗工 P25‑70B、マンセル5Y7/1)。指定色や耐塩/重耐塩塗装への対応も可能としています。内外電機

2.2 日東工業

  • 受電設備(キュービクル)の標準シリーズでも ライトベージュ(LB色=5Y7/1) を採用。同色の指定(マンセル5Y7/1、日塗工 G25‑70B)を明記しています。ManualZilla

2.3 その他メーカー

  • 曙(EOキュービクル)でも、「耐侯・耐塩性に優れた粉体塗装」で、標準色ベージュ(5Y7/1)を採用し、指定色にも対応しています。manualzz.com

3. 塗装基準:環境別区分と試験方法

3.1 分電盤標準化協議会の分類

設置環境に応じた塗装仕様の分類として、以下が挙げられます:

3.2 試験基準と寿命目安

分電盤標準化協議会資料による分類基準では、試験時間で仕様を区別しています:

環境

特性

試験内容

標準(屋内)

シンプルな環境

耐塩水噴霧試験120時間(5サイクル)

耐塩(屋外・海岸から300 m~1 km)

やや塩害あり

耐塩水噴霧試験240時間(10サイクル)または500時間(20回)

重耐塩(海岸から300 m以内)

塩害厳しい

耐塩水噴霧試験1,000時間(40サイクル)

耐酸/耐アルカリ

酸性またはアルカリ性ガス環境

5 % H₂SO₄(または Na₂CO₃/NaOH)浸漬120時間(耐酸/耐アルカリ)川村工芸

4. 各メーカーによる重耐塩仕様の事例

4.1 設計・製作.COM(マエショウ)

  • 重耐塩仕様は海岸から300 m以内の屋外設置を対象とし、ZAM(耐食性高めの鋼板)や SUS304 などの素材を使用。

  • 塗料はフッ素樹脂系(溶剤塗装)、ポリエステル樹脂系(粉体塗装)を採用。塗装膜厚は素材や外内面で調整されており、明確な数値は個別相談としています。屋外盤 設計・製作.COM

4.2 一般対応・注意点

「重耐塩」という名称でも、実際の仕様はメーカーごとに異なります。素材選定(ZAMやステンレスなど)、塗料選定、膜厚、施工方法(粉体 vs 溶剤塗装)など、企業ごとの独自基準が多いため、詳細は都度確認が必要です。

5. 総括とガイドラインの方向性

5.1 標準仕様(屋内・一般環境)

  • JEMA規格による5Y7/1ベージュ色が業界標準として確立。

  • 多くのメーカー(内外電機、日東工業、曙など)が粉体塗装+ベージュ色を採用し、指定色対応も可能としています。

5.2 耐塩・重耐塩の選定目安

  • 耐塩仕様:海岸から300 m~1 km程度の屋外環境 → 耐塩水噴霧試験240~500時間。

  • 重耐塩仕様:海岸から300 m以内の過酷な環境 → 耐塩水噴霧試験1,000時間。

5.3 メーカーごとの差異

  • メーカーにより、素材(ZAM/SUS304等)・塗料(フッ素系/ポリエステル粉体)・塗装方法(粉体/溶剤)・膜厚などが異なるため、カスタマイズ要件の具体的提示が重要です。

  • また、耐酸や耐アルカリ仕様も選択肢としてあるが、対応するメーカーや試験基準は限られます。

6. (参考)関連業界基準・補足情報

  • キャビネット工業会日本配電制御システム工業会(JSIA‑T1020)JIS K‑5981(合成樹脂粉体塗膜) などが塗装技術指針や基準を提供。硬度、付着性、耐候性など、多角的な評価視点があります。ガオの筐体設計 設計の勘所

  • セラム(エンバイロ・ビジョン社)のような高耐食・高耐久塗料(例:ZC‑500など)では、耐塩水噴霧試験で 10,000~20,000時間という高耐久性を持つ製品例も存在します。ただし、キュービクルメーカーがこれらを標準的に採用しているケースは限定的です。エンバイロ・ビジョン株式会社 |

7. まとめ(4000字に迫る内容として整理)

  1. 標準色(5Y7/1ベージュ) は、JEMAの規格と複数メーカーの標準仕様により確立。指定色対応も一般的。

  2. 塗装種別は、屋内/屋外/耐塩/重耐塩/耐酸/耐アルカリの6分類があり、使用環境に合わせて選ぶことが推奨されます。

  3. 耐塩・重耐塩仕様の判断基準としては、主に塩水噴霧試験時間(240~1,000時間)が目安。

  4. 具体的な仕様についてはメーカーごとに独自仕様が多く、ZAM・SUS素材・塗料系統・膜厚・施工法などが異なるため、個別相談が必要。

  5. 補足として、標準化団体(キャビネット工業会/JSIA/JIS) が提供する技術ガイドラインも参照すべき重要な情報源です。

Admin
前田 恭宏
練習

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