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キュービクル耐震基準の数値と真実

キュービクル耐震基準の数値と真実

26/01/16 08:36

キュービクルは地震時に電力供給を守る重要設備であり、耐震性が事業継続と人命安全を左右する。専用の法定数値基準はないが、2014年改訂の指針を基に、耐震クラスS(設計用標準震度1.5~2.0、震度6強~7想定)、A(同1.0)、B(同0.6~1.0)に分類されている。標準仕様はクラスAが多いが、屋上や高層階では揺れが増幅するため、より高い耐震性能が必要となる場合がある。基礎・アンカー固定や内部機器の耐震対策が不可欠で、既設設備もBCPの観点から耐震性能の再確認と対策が求められる。

■ はじめに:キュービクルは「地震後にこそ真価を問われる設備」

日本において、地震は避けられない自然災害です。大地震が発生した際、建物の倒壊や火災と並んで社会に大きな影響を与えるのが電力供給の停止です。病院、工場、商業施設、オフィスビルなど、電気が止まれば機能しない施設は数え切れません。

その電力供給の起点となるのが、**キュービクル式高圧受電設備(以下、キュービクル)**です。平常時には目立たない存在ですが、地震時には「止めてはいけない設備」として、極めて重要な役割を担います。

本コラムでは、キュービクルに求められる耐震基準を数値で示しながら、法令との関係、設計思想、設置場所ごとの注意点、既設設備の課題までを詳しく解説します。

■ キュービクルに「耐震基準」はあるのか

まず押さえておきたいのは、キュービクル専用の耐震数値を定めた法律は存在しないという点です。しかし実務上は、以下の基準・指針をもとに耐震設計が行われています。

  • 電気事業法

  • 電気設備技術基準・解釈

  • 建築基準法(建築設備としての考え方)

  • 日本電機工業会(JEMA)などの業界指針

  • 各メーカーの耐震設計指針

特に多くのメーカーでは、2014年改訂版の耐震設計指針を踏まえ、キュービクルを「耐震クラス」に分類して設計・製造しています。

■ 耐震基準の概要(クラスと設計用標準震度)

現在、キュービクルの耐震性能は、主に以下の3つの耐震クラスで整理されるのが一般的です。

● 耐震クラスS(高耐震)

  • 主な設置場所:
     地階、1階、重要施設(病院・防災拠点など)

  • 設計用標準震度:
     1.5~2.0 程度

  • 想定地震規模:
     震度6強~7クラスの大規模地震

このクラスは、地震後も機能継続が強く求められる設備向けです。基礎固定、内部機器固定ともに非常に厳しい条件で設計されます。


● 耐震クラスA(標準耐震)

  • 主な設置場所:
     中間階(2階~数階程度)

  • 設計用標準震度:
     1.0 程度

  • 想定地震規模:
     震度6弱~6強相当

現在、市場に出回っている標準的なキュービクルの多くがこのクラスに該当します。一般的な業務用建物では、このクラスが基本仕様となっています。


● 耐震クラスB(軽耐震)

  • 主な設置場所:
     上層階、屋上、塔屋

  • 設計用標準震度:
     0.6~1.0 程度

建物の揺れが増幅されやすい高所では、設備重量や建物条件によってこのクラスが選定されることがあります。ただし、用途によっては耐震性能不足となるケースもあるため注意が必要です。


※補足
標準仕様のキュービクルは、**設計用標準震度1.0程度(耐震クラスA)**で設計されていることが多く、
屋上・高層階・重要施設では、特注で耐震性能を引き上げる必要がある場合があります。

■ なぜ設置場所で耐震クラスが変わるのか

耐震設計で重要なのは、「地震の大きさ」だけではありません。建物のどこに設置されるかによって、設備にかかる揺れは大きく変わります。

  • 地階・1階:
     地盤に近く、揺れは比較的抑えられる

  • 中間階:
     揺れが増幅し始める

  • 上層階・屋上:
     建物の振り子現象により、揺れが大きくなる

つまり、同じ震度6の地震でも、屋上に設置されたキュービクルの方が厳しい条件にさらされるのです。そのため、設置階に応じた耐震クラスの選定が不可欠となります。

■ 電気事業法が求める「耐震性」の本質

キュービクルは電気事業法上の「電気工作物」に該当し、電気設備技術基準に適合する必要があります。

技術基準では、次の考え方が基本です。

  • 地震などの外力により、
     ・感電
     ・火災
     ・機能障害
     を起こさないこと

つまり、「倒れない」「動かない」「壊れない」ことが前提条件です。数値が明記されていなくても、地震で転倒・破損すれば不適合と判断される可能性があります。

■ 建築基準法との関係──建築設備としての責任

キュービクルは多くの場合、建築設備として建築基準法の考え方も適用されます。

  • 地震時に転倒・移動しないこと

  • 避難・安全確保の妨げにならないこと

  • 建物構造に悪影響を与えないこと

特に屋上設置の場合は、

  • 鉄筋コンクリート基礎の強度

  • アンカーボルトの本数・径

  • 転倒モーメント計算

などが厳しく確認されます。

■ 実務で行われる耐震対策の具体例

● 基礎・アンカー固定

  • 設計用標準震度に応じたアンカー本数

  • 高力ボルトの使用

  • コンクリート強度の確保

古い設備では、アンカーが少ない、または無いケースも見受けられます。


● 内部機器の耐震固定

  • 変圧器の滑動・転倒防止金具

  • 母線支持材の強化

  • 機器同士の干渉防止設計

外箱だけ耐震でも、内部が動けば意味がありません。


● 扉・函体の耐震性

  • 扉ロック機構の強化

  • 地震時に開放しない構造

  • 函体変形による内部接触防止

■ 既設キュービクルは「現在の耐震要求」を満たしているか

築20年以上の建物に設置されたキュービクルは、現行指針以前の考え方で設計されていることが少なくありません。

  • 設計用標準震度の想定が低い

  • 耐震クラスの概念がない

  • 基礎や固定が簡易的

法的に即違反でなくとも、地震時のリスクは高い状態です。耐震補強や更新は、BCP(事業継続計画)の観点からも重要になっています。

■ 耐震基準は「保険」ではなく「企業姿勢」

キュービクルの耐震性能向上にはコストがかかります。しかし、

  • 地震後の長期停電

  • 生産停止・営業停止

  • 信頼低下

これらの損失を考えれば、耐震対策は費用ではなく投資です。

■ おわりに:数値で考えることが、命と事業を守る

キュービクルの耐震基準は、見えにくく、語られにくい分野です。しかし、
**耐震クラス・設計用標準震度という「数値」**で考えることで、初めてリスクが可視化されます。

その設備は、

  • どの耐震クラスか

  • どの震度を想定しているのか

  • 設置場所に適しているのか

今一度、確認することが、未来への最大の備えとなります。

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前田 恭宏
前田です

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