
なぜ高圧コンデンサー容量は三相トランスの1/3なのか?
「高圧コンデンサー容量は三相トランスの1/3」とよく言われますが、その根拠を正しく説明できる人は意外と多くありません。なぜ1/3なのか、なぜ単相トランス容量は含めないのか――これらはキュービクル設計・更新の現場で必ず出てくる本質的な疑問です。本コラムでは、力率改善の考え方を軸に、経験則として定着した1/3の意味、三相負荷が基準となる理由、単相負荷を除外する実務的背景までを整理し、数字に振り回されない正しい理解を解説します。
なぜ高圧コンデンサー容量は三相トランスの1/3なのか?
― 現場で必ず出てくる“素朴だけど本質的な疑問”に答えます ―
はじめに:よく聞かれるけれど、意外と正しく説明できない疑問
キュービクル設備の打合せや更新工事の場で、
次のような質問を受けたことはないでしょうか。
「高圧コンデンサーの容量って、なぜトランス容量の1/3なの?」
「単相トランスが入っているのに、なぜ計算に含めないの?」
「1/3って決まり?それとも目安?」
この疑問は、高圧受電設備を扱うすべての人が一度はつまずくポイントです。
本コラムでは、電力会社・設計・施工・保守の視点を交えながら、
この疑問に“理屈で”答えていきます。
Q1:そもそも高圧コンデンサーは何のために入れるの?
A:目的は「力率改善」、つまり“無駄な電気の流れ”を減らすためです。
高圧コンデンサー(進相コンデンサー)の役割は、
遅れがちな力率を改善し、無効電力を補償することです。
三相誘導電動機や変圧器などの負荷は、
有効電力(仕事をする電気)
無効電力(磁界を作るために行き来する電気)
の両方を消費します。
このうち、無効電力が多いと、電流だけが増えて設備に負担がかかるため、
電力会社は力率が悪い需要家に対して割増料金を課します。
そこで登場するのが高圧コンデンサーです。
Q2:なぜ「三相トランス容量の1/3」が目安と言われるの?
A:三相負荷の無効電力特性から導かれた“実務上の近似値”だからです。
ここが今回の核心です。
結論から言うと、
「三相トランス容量の1/3」は法令でも絶対値でもありません。
しかし、長年の実務経験から導き出された、非常に合理的な目安なのです。
なぜ1/3なのか?
一般的な三相負荷(電動機中心)の力率は、
改善前:0.7~0.8
改善後目標:0.95以上
とされます。
この差を無効電力(kvar)換算すると、
トランス容量(kVA) × 約30~35%
を補償すれば、ほぼ適正な力率になるケースが多いのです。
そのため、
三相トランス容量 × 1/3 ≒ 必要なコンデンサー容量
という考え方が定着しました。
Q3:では「1/3」は必ず守らないといけないの?
A:いいえ。負荷内容によっては過不足が生じます。
例えば、
電動機がほとんど稼働しない設備
インバータ負荷が多い設備
夜間停止が多い工場
このような場合、
単純に1/3を入れると 進みすぎ(過補償) になることもあります。
過補償になると、
電圧上昇
機器誤動作
電力会社からの指摘
といった別の問題が発生します。
つまり、
1/3はあくまで「スタートライン」であり、万能解ではありません。
Q4:ではなぜ「単相トランス容量」は計算に含めないの?
A:単相負荷は、力率改善の対象になりにくいからです。
これも非常によくある疑問です。
単相トランスの主な用途は?
照明
コンセント
制御電源
小容量機器
これらの多くは、
力率が比較的良い
無効電力が小さい
コンデンサーで補償しても効果が薄い
という特徴を持っています。
そのため、
高圧コンデンサーで補償すべき無効電力の主成分は、三相負荷側
と考えるのが実務的なのです。
Q5:単相トランスが大容量の場合はどうする?
A:その場合は「例外」として再検討が必要です。
例えば、
単相電炉
大容量単相ヒーター
特殊設備
このようなケースでは、
単相側でも無効電力が無視できない場合があります。
その場合は、
低圧側での力率測定
高圧・低圧分離補償
自動力率調整装置の導入
など、設計段階での個別検討が必須になります。
Q6:実際の設計ではどう判断すればいいの?
A:以下の3点を押さえると失敗しません。
三相トランス容量を基準に考える
1/3は目安として使い、絶対視しない
将来負荷(増設・更新)を見据える
特に重要なのは、
「今ちょうどいい」ではなく「数年後も困らない」容量設定です。
Q7:自動進相と固定進相、どちらが良い?
A:現在は自動進相が基本です。
負荷変動のある設備では、
固定進相 → 過補償リスク大
自動進相 → 常に適正力率を維持
となるため、
段切替式の自動進相装置が主流です。
まとめ:1/3という数字に振り回されないために
最後に、今回の疑問を整理します。
高圧コンデンサー容量=三相トランス容量の1/3
→ 経験則として有効だが絶対ではない単相トランス容量を含めない理由
→ 無効電力への寄与が小さいため本当に大切なのは
→ 設備の負荷実態を理解すること
キュービクル設計は、
「数字を当てはめる作業」ではなく
**“電気の流れを想像する仕事”**です。
この疑問を正しく理解することで、
より安全で、無駄のない設備設計につながるはずです。
前田 恭宏
前田です
