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なぜ高圧コンデンサー容量は三相トランスの1/3なのか?

なぜ高圧コンデンサー容量は三相トランスの1/3なのか?

26/01/20 07:42

「高圧コンデンサー容量は三相トランスの1/3」とよく言われますが、その根拠を正しく説明できる人は意外と多くありません。なぜ1/3なのか、なぜ単相トランス容量は含めないのか――これらはキュービクル設計・更新の現場で必ず出てくる本質的な疑問です。本コラムでは、力率改善の考え方を軸に、経験則として定着した1/3の意味、三相負荷が基準となる理由、単相負荷を除外する実務的背景までを整理し、数字に振り回されない正しい理解を解説します。

なぜ高圧コンデンサー容量は三相トランスの1/3なのか?

― 現場で必ず出てくる“素朴だけど本質的な疑問”に答えます ―

はじめに:よく聞かれるけれど、意外と正しく説明できない疑問

キュービクル設備の打合せや更新工事の場で、
次のような質問を受けたことはないでしょうか。

  • 「高圧コンデンサーの容量って、なぜトランス容量の1/3なの?」

  • 「単相トランスが入っているのに、なぜ計算に含めないの?」

  • 「1/3って決まり?それとも目安?」

この疑問は、高圧受電設備を扱うすべての人が一度はつまずくポイントです。
本コラムでは、電力会社・設計・施工・保守の視点を交えながら、
この疑問に“理屈で”答えていきます。

Q1:そもそも高圧コンデンサーは何のために入れるの?

A:目的は「力率改善」、つまり“無駄な電気の流れ”を減らすためです。

高圧コンデンサー(進相コンデンサー)の役割は、
遅れがちな力率を改善し、無効電力を補償することです。

三相誘導電動機や変圧器などの負荷は、

  • 有効電力(仕事をする電気)

  • 無効電力(磁界を作るために行き来する電気)

の両方を消費します。

このうち、無効電力が多いと、電流だけが増えて設備に負担がかかるため、
電力会社は力率が悪い需要家に対して割増料金を課します。

そこで登場するのが高圧コンデンサーです。

Q2:なぜ「三相トランス容量の1/3」が目安と言われるの?

A:三相負荷の無効電力特性から導かれた“実務上の近似値”だからです。

ここが今回の核心です。

結論から言うと、
「三相トランス容量の1/3」は法令でも絶対値でもありません。
しかし、長年の実務経験から導き出された、非常に合理的な目安なのです。

なぜ1/3なのか?

一般的な三相負荷(電動機中心)の力率は、

  • 改善前:0.7~0.8

  • 改善後目標:0.95以上

とされます。

この差を無効電力(kvar)換算すると、

  • トランス容量(kVA) × 約30~35%

を補償すれば、ほぼ適正な力率になるケースが多いのです。

そのため、

三相トランス容量 × 1/3 ≒ 必要なコンデンサー容量

という考え方が定着しました。

Q3:では「1/3」は必ず守らないといけないの?

A:いいえ。負荷内容によっては過不足が生じます。

例えば、

  • 電動機がほとんど稼働しない設備

  • インバータ負荷が多い設備

  • 夜間停止が多い工場

このような場合、
単純に1/3を入れると 進みすぎ(過補償) になることもあります。

過補償になると、

  • 電圧上昇

  • 機器誤動作

  • 電力会社からの指摘

といった別の問題が発生します。

つまり、
1/3はあくまで「スタートライン」であり、万能解ではありません。

Q4:ではなぜ「単相トランス容量」は計算に含めないの?

A:単相負荷は、力率改善の対象になりにくいからです。

これも非常によくある疑問です。

単相トランスの主な用途は?

  • 照明

  • コンセント

  • 制御電源

  • 小容量機器

これらの多くは、

  • 力率が比較的良い

  • 無効電力が小さい

  • コンデンサーで補償しても効果が薄い

という特徴を持っています。

そのため、
高圧コンデンサーで補償すべき無効電力の主成分は、三相負荷側
と考えるのが実務的なのです。

Q5:単相トランスが大容量の場合はどうする?

A:その場合は「例外」として再検討が必要です。

例えば、

  • 単相電炉

  • 大容量単相ヒーター

  • 特殊設備

このようなケースでは、
単相側でも無効電力が無視できない場合があります。

その場合は、

  • 低圧側での力率測定

  • 高圧・低圧分離補償

  • 自動力率調整装置の導入

など、設計段階での個別検討が必須になります。

Q6:実際の設計ではどう判断すればいいの?

A:以下の3点を押さえると失敗しません。

  1. 三相トランス容量を基準に考える

  2. 1/3は目安として使い、絶対視しない

  3. 将来負荷(増設・更新)を見据える

特に重要なのは、
「今ちょうどいい」ではなく「数年後も困らない」容量設定です。

Q7:自動進相と固定進相、どちらが良い?

A:現在は自動進相が基本です。

負荷変動のある設備では、

  • 固定進相 → 過補償リスク大

  • 自動進相 → 常に適正力率を維持

となるため、
段切替式の自動進相装置が主流です。

まとめ:1/3という数字に振り回されないために

最後に、今回の疑問を整理します。

  • 高圧コンデンサー容量=三相トランス容量の1/3
     → 経験則として有効だが絶対ではない

  • 単相トランス容量を含めない理由
     → 無効電力への寄与が小さいため

  • 本当に大切なのは
     → 設備の負荷実態を理解すること

キュービクル設計は、
「数字を当てはめる作業」ではなく
**“電気の流れを想像する仕事”**です。

この疑問を正しく理解することで、
より安全で、無駄のない設備設計につながるはずです。

Profile picture of 前田 恭宏
前田 恭宏
前田です

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