第一種電気工事士・第一級電気工事施工管理技士・第三種電気主任技術者の違い

第一種電気工事士・第一級電気工事施工管理技士・第三種電気主任技術者の違い

25/09/19 16:34

キュービクル設置・保安管理において、第一種電気工事士は実際の配線や機器設置作業を担当し、第一級電気工事施工管理技士は工事全体の工程・安全・品質を管理します。電験三種(第三種電気主任技術者)は設置後の保安管理や法定点検を担い、法令上の責任者です。各資格は役割が異なり、連携することで安全で効率的な工事と運用が可能となります。プロジェクトの規模や内容に応じた資格者の配置が重要です。

高圧受電設備のキュービクルからの視点で第一種電気工事士・第一級電気工事施工管理技士・第三種電気主任技術者の違いまとめ!

前提:キュービクルと関連法令/保安管理の基本

まず、キュービクルとは何か/キュービクル設置と保安管理で関係する法令・責任体制を簡単に整理します。

  • キュービクルとは、高圧受電設備(または受変電設備)の一形態であり、ビル・工場などで電力会社から高圧で電気を受けて、それを変圧したり分配したりする設備。自家用電気工作物になることが多い。

  • キュービクルの設置工事、新設・変更時には「電気工作物設置届」などの手続が必要。保安規程を定め、電気主任技術者(または電気管理技術者)が保安管理を行う必要あり。月次・年次点検など、保守・点検義務あり。

  • 保安管理とは、電気事業法・施行規則等に基づき、電気設備を安全に継続して運用するための監督・維持・点検・運転等を含む業務。責任者として作業する者に適切な資格が要求される。

このような背景のもとで、上記三つの資格の立ち位置を見ていきます。

各資格の概要

まず、「第一種電気工事士」「第一級電気工事施工管理技士」「第三種電気主任技術者(電験3種)」それぞれの資格の基本的な性質・業務範囲をまとめます。

資格

主な目的・役割

試験対象/要件

主な業務範囲

第一種電気工事士

電気工事士法に基づき、電気工作物の工事に直接従事できる技術者。特に高圧・自家用電気工作物(一定規模条件下)で工事を行える能力を持つ。

筆記+技能試験合格、及び一定の実務経験(試験合格後、実務経験3年以上など)

電気工事全般(配線、変圧器・開閉器等の設置・接続工事)、キュービクル設置工事のうち、電線・機器の接続・器具設置等、実作業を行う部分。工事作業者。法令で定める範囲の工事を行う。

第一級電気工事施工管理技士

建設業法に基づき、工事の施工管理(工程管理・品質管理・安全管理・原価管理 etc.)を行う技術者。大規模工事などで監理技術者として現場を指揮する。

学歴+実務経験(例:高校卒業後11年以上、大学卒業後5年以上等。設置要件あり) 試験は「第一次検定(学科)」「第二次検定(実地)」で構成される。

キュービクル設置工事を含む、電気工事プロジェクト全体の管理。設計図・仕様の確認、工程計画、安全衛生・品質・コストの管理、現場監督、施工者との調整など。直接手を動かす工事作業よりも監理・指導・管理が中心。

第三種電気主任技術者(電験三種)

電気設備(発電・変電・送電を含む)を運用・保安管理する責任を負う技術者。電気設備の監督・維持管理、保安規程・点検・試験などを扱う。

電気理論・電力・機械・法規の四科目を一定の条件で合格。電験三種の試験合格が要件。実務経験は資格取得そのものには必ずしも不要。

キュービクルの保安管理業務全般。月次・年次点検、異常発見時の対応・試験。電気主任技術者として、設備運用の安全を確保する役割。新設・変更時の検査・試験の立会、法令遵守・報告義務、保安規程の遵守など。

キュービクル設置工事の現場での役割・必要性比較

次に「キュービクルの設置工事(新設・変更)」という場面で、これらの資格がどう関わるかを比較します。

作業/管理内容

第一種電気工事士でできること

第一級電気工事施工管理技士でできること

電験三種でできること

機器・装置の設置、配線・ケーブルの敷設、開閉器・変圧器などの接続

直接作業できる。内部結線・器具取り付けなどの工事部分を担う。キュービクル内部の設備設置等。法令で第一種電気工事士しかできない領域(自家用電気工作物等一定規模のもの)も担当可能。

管理者として監督・指導。設計図・仕様・安全基準が守られているか確認。施工計画を立案。施工業者を選定・統制。工事進捗を管理。

通常は工事作業そのものを行わない。試験や検査、保安責任者として工事が法令に適合しているか確認する立場。例えば竣工試験での耐圧試験・絶縁試験など、工事後の検査に関与できる。

設置場所選定、基礎工事,通路・足場・安全設備などの確保

工事士も作業に関与するが、これらの設計や仕様決定は施工管理技士が中心となることが多い。

安全通路・足場・設置スペース・基礎寸法・防火・防雨・防塵・遮音など仕様をレビューし、発注者・設計者と協議。設置条件・法令規制のチェック。

電験三種の保有者として、これら設置環境が保安上適切か監査・点検・使用後の維持管理時に問題ないか検討できる。

設置工事での安全管理・品質管理・工程管理

工事士として自ら安全手順を守り、品質を確保する(配線の固定、結線の確実性・絶縁保護など)。

全体の安全計画・品質基準の策定と遵守状況の監督。工程の遅れ・資材の不良・施工ミスなどの是正。建設業法上の監理技術者の義務。

保安責任者として、設置後あるいは設置途中での試験・点検計画・保安設備の仕様が保安規程に適合しているかなど、技術的・法令的な監視。

書類・手続き(設置届、官庁検査、電力会社との契約 etc.)

工事業者として、設置届や工事報告、現場検査時の補助書類作成などに関わることがあるが、決定的責任を持つことは少ない。

主体的に設置届・検査申請・図面・仕様書を整備し、完成検査時に監理者として責任を持つ。発注者代理としての役割を持つこともある。

電気主任技術者として、保安上必要な書類・試験の立会・保安規程の届出・報告義務を担う。設置後の保安管理に関する規程整備の責任。

保安管理の場面での役割比較

設置後、設備が運用状態にあるとき、保安管理(点検・異常対応・維持保守等)の場面で各資格がどのように関わるかを整理します。

保安管理活動

第一種電気工事士の関与

第一級施工管理技士の関与

電験三種の関与

月次点検・簡易点検

第一種電気工事士なら簡易点検の作業(外観の点検、接地線・表示灯などのチェック、軽度の修繕等)を実施可能。ただし感電・高電圧部分は慎重さが求められる。

保安体制が適切かを管理する。月次点検が確実に行われるように指示・チェック。日常維持のスケジュール管理などの責任を持つ。

電気主任技術者として、月次・年次点検の計画・内容の妥当性を監視し、保安規程に適合しているかを確認する。

年次点検・試験(絶縁抵抗測定・耐圧試験・リレー試験 etc.)

技術力があれば一部作業参加可能(技能をもとに絶縁測定器・接地抵抗測定などを操作することも)。ただし試験実施の許可・主体は電気主任技術者や保安責任者。

監理・調整者として、年次点検の停止時間や試験手順、施工業者・保安法人等との調整を行う。品質と安全性の確保を重視。

主体的責任者として、試験項目、試験データの確認、異常時の対応指示等を行う。法律で定められた保安規程を遵守し、必要に応じて是正措置を取る。

故障・異常発生時の対応

第一種電気工事士は、異常箇所の修理・器具交換など現場作業を直接行える。危険を伴う高電圧部分・遮断器等の操作には経験・安全対策が重要。

異常発生時の体制構築・手順・応急復旧の指揮・安全確認などを管理する立場。発注者との調整や報命義務を遂行。

異常の根本原因診断・法令に照らした安全性の判断・保安責任の遂行。修復・再発防止策の設計・監視が主。

維持保守と更新・改修

工事士として保守更新工事(機器交換・配線更新など)を実施できる。

改修プロジェクトの全体を管理できる(設計変更・機器選定・工期・コスト管理など)。

更新・改修が保安規程・技術基準を満たすよう監督。変更届出・検査の立会。保安機能を維持するための仕様判断など。

各資格のメリット・限界(キュービクル視点で)

第一種電気工事士

メリット

  • キュービクル設置工事の実作業を担える(ケーブル敷設、機器接続、器具取付など)。工事現場での即戦力。

  • 幅広い電気工作物を扱える(自家用電気工作物の一定規模まで)ので、キュービクル規模でも対応可能な仕事が多い。

  • 工事業者として、施工品質を保つための知識と技能を持っている。

限界

  • 監理・管理責任(工程管理・コスト管理・安全計画等)を全面的に負うには範囲外なことが多い。

  • 保安管理責任者としての法令上の責務(試験立会・保安規程の策定・設備運用監視等)を全て果たせるわけではない。

  • 設備運用後の保安監督・異常対応・法令遵守の管理判断や責任は、通常は電気主任技術者が担う。

第一級電気工事施工管理技士

メリット

  • キュービクルの設置プロジェクトを総括する管理者としての能力。大規模・複雑な設置工事を監理できる。

  • 発注者・設計者・施工者・保安監督機関等との折衝・調整を行える。安全・品質・工程・コストを統合的に管理できる。

  • 書類・検査・仕様・設計・施工監督の視点を持てるので、設置後の保安管理における問題予防に強い。

限界

  • 実際の電気工事(手を動かす作業)には関与しないか、少ないことが多く、その分技能的な深さは工事士の方が強い場合がある。

  • 法令上の保安責任、特に電気主任技術者としての役割(点検・試験・運用)、法令遵守の最終判断責任は持たない。施工管理技士の資格だけでは保安責任者として認められない。

電験三種(第三種電気主任技術者)

メリット

  • キュービクルを含む電気工作物の保安管理責任者としての資格。法令上の責任を持てる立場。点検・試験・保安規程の整備・運用等で重要な役割。

  • 高圧設備の安全基準・運用技術・電力理論・法規など幅広い知識をもつため、設置工事後の保安性・安全性を確保する監査・判断能力がある。

限界

  • 設置工事の実施工(機器取り付け、ケーブル敷設など物理的な作業)には通常関与しない。技能実務というよりは監督・管理型。

  • 施工管理(コスト・工程・品質指示など)の専門性や現場進捗管理能力は、施工管理技士の方が強い。

  • 保守・運用時は強いが、設計仕様・施工仕様の詳細な施工技術・作業法の一部に関しては、現場経験と工事士との協働が必要。

具体的な使い分けケース

いくつかの典型ケースで、どの資格が必要/有効かを考えてみます。

ケース

どの資格が最低必要/望ましいか

補足

キュービクルを新設する:受電契約・設置届・発注者として仕様決定・機器選定・設計・施工を発注する

電験三種(保安責任者)+施工管理技士(監理技術者)+工事士(施工担当) の組み合わせがベスト

発注者側や設計側にも電験三種の知識があると、保安リスクを減らせる。

キュービクル設置工事の現場監督として工程・安全・品質を統制する

第一級電気工事施工管理技士

工事士だけでは管理・監督体制に不安が残る。

装置の接続・配線・機器据付などの実作業を行う

第一種電気工事士

業務の範囲を満たす技能保持者が必要。

設置後・運用中に点検(年次・月次)・絶縁測定・耐圧試験・異常時の対策を行う

電験三種を持つ電気主任技術者が主体。工事士は助手的/補助的に作業可。施工管理技士は管理監督者。

保安法令を守るために電験三種の選任が法律上義務。工事士・施工管理技士の資格だけでは選任責任を果たせない。

設置後に大きな修繕または改修を行う

施工管理技士が改修プロジェクトを総括し、第一種電気工事士が実作業、電験三種が保安監督・試験の監督担当

役割分担が明確であれば効率良くかつ安全に行える。

法令・責任構造

  • 電気事業法および施行規則により、「電気工作物」の設置・運用について保安責任者(電気主任技術者)の選任が義務。特に高圧受電設備(キュービクルなど)はこれに当たる。設置者・使用者には保安規程の作成・届出義務。

  • 電気工事士法により、電気工事(設置・変更・修繕など)は有資格者(第一種・第二種電気工事士など)でなければ従事できない。特定規模・電圧のものについて第一種電気工事士の資格が要件になる。

  • 建設業法などで、工事現場で一定規模以上の電気工事を発注・施工する場合には、主任技術者・監理技術者の資格要件がある。施工管理技士がその資格要件を満たす。

総合的比較とおすすめの組み合わせ

キュービクルの設置工事および保安管理を安全かつ効率よく行いたい場合に、上記資格のどれをどのように備えるのがよいか、組み合わせとしての視点を以下に示します。

  • 最低ラインとしては、設置工事をする工事業者側に 第一種電気工事士 の技術者を置くこと。これがなければ、法令に基づく多くの工事項目を合法に実施できない。

  • 保安管理を適切に実施するためには、電験三種 を持つ電気主任技術者(または外部委託契約を結んだ保安法人)が選任されることが不可欠。月次・年次点検、試験・検査、法令届出などを責任をもって行う者が必要。

  • 大規模または公共・商業施設などでキュービクル設置を含む電気工事プロジェクトを請け負うなら、 第一級電気工事施工管理技士 を監理技術者として配置することが望ましい。これにより、施工計画・安全・品質・コスト管理等を適切に行いやすくなる。

  • 資格を一人で複数持つことで、工事・施工管理・保安管理の連携がスムーズになる。例えば、第一種電気工事士+電験三種を持っていれば、実作業・保安責任・試験立会まで幅広く対応可能。施工管理技士が加わることでプロジェクト全体の統制力が高まる。

難易度・取得までの道のり

各資格がどれくらい努力を要するかの目安を、キュービクル設置/保安管理を念頭にして示します。

  • 第一種電気工事士
    筆記・技能試験をパスする必要があり、技能試験では実際に器具結線・配線などを時間制限下でこなすことが求められる。さらに、免状取得には実務経験3年以上を要する。試験内容には高圧部分なども含まれるので、専門知識をしっかり学習する必要。

  • 第一級電気工事施工管理技士
    学歴・実務経験要件が比較的重い。第一次検定(学科)と第二次検定(実地)に合格する必要。施工管理法、安全管理、原価管理など、工事者・管理者としての幅広い知識が要求される。試験範囲が広く、過去問題などの対策時間が必要。

  • 電験三種
    理論・電力・機械・法規の四科目で、比較的高度な電気理論や電力系統・電磁気・機械などの知識が問われる。筆記のみ(技能試験なし)が特徴。科目合格制度があるため、複数年かけて合格を積み重ねる人が多い。保安管理責任者としての責務があるため、合格すること自体に社会的評価が高いが、勉強量・範囲は大きい。

結論:どの資格がどの場面で鍵となるか

キュービクルの設置工事・保安管理においては、以下が重要なポイントです。

  1. 法令遵守:電気工事士法・電気事業法・建設業法など、設備の設置・運用・保安点検に関する法令を満たすこと。適切な資格者を選任すること。

  2. 責任分担の明確化:設置工事・施工管理・保安管理という三つのフェーズで「誰が何を責任持つか」を明確にしておく。これにより事故や不具合の発生リスクを低減できる。

  3. 資格の重複と連携:例えば、施工管理技士がプロジェクトを監理しつつ、電験三種が保安管理を行い、第一種電気工事士が実施工を担当するような役割分担が理想。単独ではフォローしきれない部分が出てくる。

  4. 維持・点検の継続性:設置後の保安管理は、月次・年次の点検・試験が法律で義務。これを怠ると設備の信頼性低下や事故リスクの増大、法令違反・罰則の可能性あり。

  5. プロジェクトの規模・用途による最適構成:小規模施設であれば、第一種電気工事士+電験三種で十分なこともあるが、大規模施設・公共案件・商業施設などでは施工管理技士の配置がほぼ不可欠。

資格における参考資料

第一種電気工事士 

   一般財団法人電気技術者試験センター 

   https://www.shiken.or.jp/construction/first/

第一級電気工事施工管理技士 

   一般財団法人建設業振興基金

   https://www.fcip-shiken.jp/den1/

第三種電気主任技術者 

   一般財団法人電気技術者試験センター 

   https://www.shiken.or.jp/chief/third/

 

Admin
前田 恭宏
練習

質問投稿
このページの内容はいかがだったでしょうか?
ログイン

パスワードを忘れた方

アカウントを作成するだけで、すぐに見積依頼が可能です。アカウントをお持ちのお客様には、表示金額よりお得な金額が提示されることも多いです。是非サインアップの上、当サイトをご利用ください。
初めて DENZAI-ZeuS | 電材ゼウス をご利用ですか?