
銅からアルミへ:次世代のスタンダード「アルミ導体ケーブル」徹底解説
アルミ導体ケーブルは、銅の価格高騰や建設業界の人手不足を背景に、次世代の標準として注目されています。最大のメリットは「軽さ」にあり、銅に比べ質量が約30〜50%軽減されるため、施工効率が劇的に向上しコスト削減も可能です。導電率を補うため導体は太くなりますが、柔軟性が高く取り回しも容易です。かつて懸念された接続部の腐食や発熱も、専用端子や抗酸化剤の技術進化により克服されました。現在はメガソーラーや再開発ビル等で導入が進んでおり、合理的なインフラ整備に欠かせない選択肢となっています。
銅からアルミへ:次世代のスタンダード「アルミ導体ケーブル」徹底解説
近年、建設業界や電気設備業界で急速に注目を集めているのが**「アルミ導体ケーブル」**です。これまで日本の電力用ケーブル(CVケーブルなど)は「銅」が主流でしたが、コスト高騰や施工の効率化が求められる中で、アルミニウムを採用する動きが加速しています。
本コラムでは、住電日立ケーブルや古河電気工業といった国内トップメーカーの資料を参考に、アルミ導体ケーブルのメリット、技術的特徴、そして導入時の留意点について詳しく解説します。
1. なぜ今、アルミなのか? 背景にある2つの課題
長年、導電率に優れる「銅」が愛用されてきましたが、現在2つの大きな課題に直面しています。
価格の不安定化と高騰: 銅は国際相場の変動が激しく、供給リスクも懸念されています。対してアルミニウムは資源量が豊富で、価格が比較的安定しており、銅の約3分の1程度のコストで調達可能です。
労働力不足と施工負担: 日本の建設現場では高齢化と人手不足が深刻です。重い銅ケーブルの延線作業は作業員への負担が大きく、軽量化が強く求められていました。
2. アルミ導体ケーブルの主なメリット
アルミ導体ケーブル(一般的にAL-CVケーブルなどと呼ばれます)を採用することで、以下のような劇的な改善が見込めます。
① 圧倒的な「軽さ」
アルミニウムの比重は銅の約3分の1です。同じ許容電流を確保するためにアルミ導体を太くしたとしても、ケーブル全体の質量は銅ケーブルと比較して約30〜50%も軽量化されます。
施工性の向上: 軽い力で引っ張れるため、延線作業の人数を減らせます。
物流コストの削減: 運搬効率が上がり、トラックの積載重量制限にも余裕が生まれます。
② コストパフォーマンス
導体材料自体の価格差に加え、施工現場での人件費削減、さらには支持構造物(ラックなど)の簡素化により、プロジェクト全体のトータルコスト(TCO)を抑制できます。
③ 優れた柔軟性
アルミは銅よりもヤング率(弾性係数)が低いため、ケーブルが柔らかく、曲げ半径が小さい場所での取り回しがスムーズになります。特に狭い電気室やピット内での配線作業で威力を発揮します。
3. 技術的特性:銅との違いを正しく理解する
アルミを採用する際、単に「銅をアルミに置き換える」だけでは不十分です。物理的特性の違いを理解しておく必要があります。
特性 | 銅 (Cu) | アルミニウム (Al) | 備考 |
導電率 | 100% (基準) | 約61% | アルミの方が電気を通しにくい |
比重 | 8.89 | 2.70 | アルミは圧倒的に軽い |
許容電流 | 高い | 中程度 | 同じ電流を流すにはアルミを太くする必要がある |
熱膨張係数 | 小さい | 大きい | 接続部の温度変化に注意が必要 |
「導体サイズの選定」がポイント
アルミは銅に比べて電気抵抗が高いため、同じ電流を流すためには**銅よりも1〜2サイズ大きな断面積(スクエア数)**を選択するのが一般的です。例えば、銅の60sqを代替する場合、アルミでは100sqを選択するといった具合です。サイズを上げても重量はアルミの方が軽いため、メリットは損なわれません。
4. 接続技術の進化:アルミ専用端子の重要性
アルミケーブル導入において、最も重要なのが**「接続部」**です。かつてアルミケーブルが普及しきれなかった原因は、接続の不備による発熱トラブルにありました。しかし、現在はメーカー各社が専用の接続部材を開発し、信頼性が確立されています。
酸化被膜の克服
アルミニウムは空気中で瞬時に強固な絶縁性の「酸化被膜」を形成します。これを放置して接続すると接触不良の原因になります。
対策: アルミ専用端子には、あらかじめ内部に**抗酸化剤(コンパウンド)**が塗布されており、接続時に被膜を突き破って安定した通電を確保します。
電食(異種金属接触腐食)の防止
アルミと銅を直接触れさせると、湿気によって腐食が発生します。
対策: 銅製ブスバー(配電盤側)とアルミ端子を繋ぐ際は、スズメッキ処理を施した専用端子や、バイメタル接続材を使用することで電食を防止します。
クリープ特性への対応
アルミは応力によって変形しやすい(クリープ)性質があります。
対策: ボルト締結の際は、一定のトルクで管理し、スプリングワッシャーなどを用いて適切な面圧を維持する工夫がなされています。
5. 導入事例と今後の展望
現在、アルミ導体ケーブルは以下のような場所で積極的に採用されています。
大規模太陽光発電所(メガソーラー): 広大な敷地を走る長距離配線において、軽量化とコストダウンの効果が極めて大きいため、事実上の標準となっています。
データセンター・工場: 大容量の電力を必要とする施設において、幹線ケーブルの軽量化は建物構造への負担軽減にもつながります。
再開発ビル: 都市部の高層ビル建設において、縦引き配線の作業効率化を目的に採用が進んでいます。
住電日立ケーブルや古河電工の製品ラインナップには、低圧から高圧まで幅広いサイズが揃っており、これまでの「特殊なもの」という立ち位置から「合理的な選択肢」へと変化しています。
6. まとめ:持続可能な建設現場のために
アルミ導体ケーブルの採用は、単なる材料置換ではありません。それは、**「物流の効率化」「現場作業者の負担軽減」「コスト構造の改革」**を同時に実現するソリューションです。
銅の特性に慣れ親しんだ現場では、当初はサイズの大型化や専用工具への戸惑いがあるかもしれません。しかし、メーカーが提供する確実な施工マニュアルと専用部材を活用すれば、その不安は解消されます。
これからの日本のインフラ整備において、アルミ導体ケーブルは欠かせないパートナーとなるでしょう。
前田 恭宏
前田です
