既設基礎を流用できる縞鋼板を活用したチャンネルベース

キュービクル改修は、もはやコンクリート基礎の時代ではありません。縞鋼板を用いたチャンネルベースなら、基礎工事不要・短工期・低コストを実現。屋上や狭小地でもスマートに設置可能で、再利用性も抜群。次世代の電設工事は、"スピード"と"柔軟性"が鍵です。
基礎工事不要!縞鋼板を活用したチャンネルベースでスマートにキュービクル改修を実現
はじめに
近年、老朽化した高圧受電設備(キュービクル)の改修が全国各地で進められています。特に商業施設や工場、マンションなど、日常の業務や生活に電力を供給する重要設備であるキュービクルのメンテナンスは、設備保全の要ともいえるでしょう。
しかし、キュービクルの更新や改修工事には、多くの場合、煩雑な基礎工事が伴います。従来はコンクリート基礎を打設し、十分な支持力と耐震性を確保するのが一般的でしたが、これにはコストや時間、さらには天候に左右される不確定要素が付きまといます。
こうした中、近年注目を集めているのが、「縞鋼板を用いたチャンネルベース」によるキュービクルの設置方法です。この新工法は、特に既設設備の改修現場や屋上施工など、物理的・時間的制約の大きい現場において、従来工法に代わる強力な選択肢となっています。
本コラムでは、実際の施工写真をもとに、この新しい施工スタイルの特徴やメリット、注意点について詳しくご紹介します。
チャンネルベースとは?
チャンネルベースとは、主に鋼材で作られた枠組みと縞鋼板(チェッカープレート)を組み合わせて構成される、簡易的かつ高耐久な機器設置基礎のことです。鉄製のチャンネル鋼で骨組みを作り、その上に滑り止め効果のある縞鋼板を敷くことで、安全性と耐荷重性を両立させています。
縞鋼板は、表面に凸凹の滑り止め加工が施されており、作業員の転倒リスクを軽減できるほか、排水性も確保されており、屋外使用にも適しています。
大型キュービクルの設置例
大型のキュービクルが屋上に設置されており、その下部に頑丈なチャンネルベースが敷かれています。金属製の床材は縞鋼板で構成されており、作業員が上を歩いても滑りにくい構造となっています。
また、ベース下にはケーブル導入用の開口が確保されており、電源系統の引き回しもスムーズに行えます。現場での柔軟な対応が求められる中、チャンネルベースの導入により、配線や接地の自由度も高まり、施工効率の大幅な向上が見込まれます。
基礎工事が不要となる理由と利点
縞鋼板を用いたチャンネルベースの最大の利点は、「従来のコンクリート基礎工事が不要である」という点です。
1. 高い支持力と荷重分散
鋼材は高い構造強度を持っており、キュービクルの重量を均等に分散可能です。設置面に適切なレベル調整と防振措置を施せば、コンクリート基礎と同等の安定性を確保することが可能です。
2. 短工期化とコスト削減
基礎打設にかかる時間とコストが大幅に削減されるため、改修工事全体の工程が短縮されます。とくに屋上や狭小スペースでの施工においては、工期短縮と重機不要という大きなメリットがあります。
3. 撤去・再利用が容易
鋼材で構成されているため、将来的な撤去や再利用も容易です。建物解体や設備更新時にも無駄な廃材を出さず、環境負荷を低減できます。
中小型キュービクルへの応用例
比較的小型のキュービクルが設置されていますが、こちらにも縞鋼板チャンネルベースが活用されています。
都市部の集合住宅や小規模施設では、基礎工事の制約が多く、こうした構造は非常に有効です。たとえば、建物屋上は構造上の制限が多く、打設作業や搬入作業が難航するケースもありますが、鋼製ベースであれば小分けで搬入し、現場で組み立てることで施工が完了します。
また、耐荷重を分散させつつ、設置全体をフラットに保てるため、保守点検や再工事の際にも優位性があります。
現場での施工ステップ
実際の現場では、以下のような流れでチャンネルベースが施工されます。
現地調査・寸法確認
設置面の傾き・凹凸・排水勾配などを事前にチェックし、ベース寸法と設計を確定。
鋼材の製作と搬入
工場でプレカット・溶接されたチャンネル鋼と縞鋼板を現場に搬入。
現場での組立と固定
フレームを組み立て、アンカー固定または防振ゴムなどでレベル調整。
キュービクルの据付
フォークリフトやクレーンで本体を設置。縞鋼板ベースの上に安全に配置。
ケーブル配線・結線作業
ケーブル導入部を利用して、盤内との接続を行う。
比較項目 | コンクリート基礎工事 | チャンネルベース(縞鋼板) |
工期 | 長い(乾燥養生必要) | 短い(即日施工可) |
重量 | 非常に重い | 軽量で搬入容易 |
再利用性 | 難しい | 可能 |
コスト | 高い | 中〜低 |
雨天施工 | 不可 | 条件付きで可能 |
設計柔軟性 | 制限多い | 高い |
注意点と対策
もちろん、チャンネルベースの導入にあたっては、いくつかの留意点も存在します。
防錆処理の徹底:鋼材を使用するため、長期間の屋外使用では腐食対策が不可欠です。亜鉛メッキや防錆塗装が標準対応。
水平・レベル調整の精度:設置面の不陸がある場合、ゴムスペーサーやモルタルで微調整が必要です。
耐震性能の検討:建築基準法や電気設備技術基準に準拠し、必要に応じてアンカーボルト等での固定を実施します。
今後の展望と活用提案
脱炭素・SDGsの流れの中で、設備工事においても「効率化」「省資源」「低環境負荷」が求められる時代となっています。
仮設機器の一時設置
屋上太陽光設備のパワコン設置
非常用発電機の架台利用
EV急速充電器のフレキシブル設置ベース
など、応用範囲は今後さらに広がっていくでしょう。
まとめ
縞鋼板を利用したチャンネルベースは、キュービクル改修における「基礎工事の簡略化」という大きな課題に対し、合理的かつ安全な解決策を提示するものです。
施工性、コスト、耐久性のすべてをバランスよく実現できるこの方式は、今後の設備工事のスタンダードになっていくと考えられます。特に、「限られた時間・限られたスペース・限られた予算」で工事を求められる現代の現場において、その真価が問われる場面は増えていくでしょう。
ぜひ、今後のキュービクル改修計画において、このスマートで柔軟な工法を選択肢の一つとして検討してみてください。

前田 恭宏
練習